シンフォニー・レイ

シャオえる

第1話 憧れの街は、危険な街

「やっと、着いた!」

 人混みのなか、大声をあげ注目を浴びる女の子が一人いた。今日は日曜日。学校が休みの今日、思いきって憧れだった街へとやって来た

「やっぱり都会はスゴいなぁ……。噂通りだ……」

 高い建物や人の多い中、あたふたと一人歩き続け、見たこともない物や食べ物、あっちこっちと見て回っていく

「ねー、聞いた?また避難勧告出たらしいよ……」

「あぁ、またすぐ出るかもしれないらしいな……」

 隣でカップルが話している。ここ最近、原因不明の避難勧告が、よく世界中で流れていた

「避難勧告か……ここの避難場所は……」

 話し声を聞いて慌てて探し始める。キョロキョロと辺りを見渡しても、人だかりや周りの音で、探すどころか人波にのまれて、同じ場所を行ったり来たり。迷子になりかけた時、街中から、サイレンの音が鳴り響く


『緊急事態です。町の皆さんは、至急避難をお願いします』


「えっ?急に?」

 一瞬にして街に悲鳴と怒号があちらこちらと聞こえてくる。老若男女問わず騒ぎ、みんな何処かへ走り出す

「避難、避難場所……」

 大分遅れて、人々が走っていく場所へ一緒に向かう。バタバタと店が閉じ、人々も散らばり何処かへ逃げていく。一緒に走っていたとはいえ、初めての場所。避難場所を見つけられず、街中に一人残されてしまった


「どうしよう……」

 一人寂しさを紛らせようと、鼻唄を歌いながら静かになった街を歩いていく。だが、いくら探せど避難場所は見当たらない


「……いた。見つけた」

 鼻唄が微かに聞こえたのか、誰かがこちらを見ている。遠くから黒い服の女の子と、同じ服を着て髪を一つに纏めている女性が見ている

「待て、あれは一般人だ。目的とは違うぞ」

「……そんなの知らないよ。居る方が悪い」

 勝手に行こうとする女の子を止める女性。静かな街に、木々が揺れる音が後ろから聞こえてくる


「……なに?」

 避難勧告中にも関わらず、未だにのんびり街を歩いていた

。誰かがこちらへ向かってくる。ぶつかる。そう思った瞬間ギュッと目をつぶった

「あっぶないなぁ!大丈夫?」

 声が聞こえて恐る恐る目を開けると、さっきの子とは違う知らない女の子の腕の中。体は空に浮いている。何が起こったか分からない上に、落ちる怖さで表情が曇る

「……残念。外された」

 地上では悔しそうな様子の女の子が一人、こちらを見ていた。さっきまで側にあった木々数本が無惨に倒されている

「君、さっさと避難して!死にたいの?」

「でも、避難場所が……」

 空からゆっくり降りながら怒られ、避難をしろと言われても、場所が分からず、また辺りをキョロキョロと見渡してく


「……今がチャンス」

 相手にされず、ボーッと二人を見ていた女の子。隙ありとばかりに、またこちらへ向かってくる。立ち止まり、その場から避難場所を探していた二人。不意打ちに避けることが出来ず立ちすくむ。またぶつかる。そう思ったとき二人の前に、

「何している?隙を見せるなんて、死にたいの?」

 間一髪、味方だろうか髪の長い女性が攻撃を防いでいた

「……いえ、すみません」


「また、外された。むかつく」

 攻撃を避けられ苛立つ黒い服の女の子の隣に、先程攻撃を止めていた髪を纏めていた女性が駆けより、こちらを見て不敵に笑う

「来たか。この前は世話になったな。借りを倍にして返しに来たぞ」

「それは、いい迷惑な話だことで……」

 微笑み睨みあう四人。一人会話にはいれず、後退りをしながら、四人を交互に顔を見る

「……なにこれ?なに?」

「あなた、まだいたの?いいから早く……」 

 避難することなく、まだ後ろにいたのを叱る女性。助けてくれた女の子も避難場所を探して、キョロキョロ辺りを見渡す。黒い服の二人が、三人の様子をクスクスと笑い鼻唄まじりに、こちらへ向かってくる

「まぁ、素敵。私たちに隙を見せるなんて死にたいんでしょ?」

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