デバフ使いのストーカー(ただのお風呂好きが異世界最強外伝)【本編に合わせ不定期連載】

ひより那

第1話 『いわ や なぎ さ』

注:この作品は、本編『ただのお風呂好きが異世界最強』の外伝です。


 私は『伊和凪(いわなぎ) 沙耶(さや)』23歳。『岩谷 なぎさ』が大好きだ。


 なぎさ先輩は大学の友人と温泉旅行で事故に遭った。


 その事故で先輩たちは行方不明となり死体も見つかっていない。更には乗っていたバスさえも行方不明だ。

 

 なぎさ先輩との出会いは、同級生の古式と出かけたときに古式の従妹である竜崎先輩と駅前でバッタリ出会った時だ。


 なぎさ先輩との出会いは、竜崎先輩、里中先輩、聖先輩そしてなぎさ先輩とカラオケに行くところで古式と一緒に誘われたのがキッカケ。


 そこから大学でもなぎさ先輩やその他の先輩と遊ぶようになっていった。その中で運命を感じたのだ! この人と将来は結ばれる…… いや、結ばれなくてはならない運命を感じた。


 なぜかって…… 


 そ れ は


 名前が一緒だからだ。 『いわや なぎさ』 言葉を入れ替えると私の名前『いわなぎ さや』となる。更になぎさという名前を私の名前が包んでいるということは、人生においても包み込んであげなさいという神の啓示。これほど分かりやすい運命は無い!


 これ以上のぶっとい赤い糸はないのだ。この先なぎさ先輩と結ばれる運命以外ありえない。


 人は恋に落ちると、周りの事が見えなくなる。

 なぎさ先輩の家、なぎさ先輩の交友関係、なぎさ先輩の実家、なぎさ先輩のお気に入り、なぎさ先輩の趣味…これはお風呂なのは分かっている。 とにかくなぎさ先輩の事なら何でも知りたいのだ。


 なぎさ先輩は7時起床し電気を点ける。準備を済ませて8時に出発。職場までは30分。ほぼ定時上がりで週に2回ほど買い物に行っている。時折、友達と会ったり、お風呂屋に行ってみたり……

 そう、これはなぎさ先輩と私が結ばれるために日夜情報収集をしているのだ。


 私の友達である古式凛もなぎさ先輩の事を好きなのは明白だ。態度で分かる。 居合切りの達人である古式と喧嘩したらまず勝てない。


 しかし、私に負けない事が3つある。 1つは、大好きななぎさ先輩を知るための行動力と探求心。 2つ目は、なぎさ先輩と出会うまで良く行っていたキャンプ能力。 3つ目MMORPGだ。今はなぎさ先輩の情報収集でプレイしていないが、いかに相手の能力を下げて効率よく倒すか見極める力は、どんな強敵が出ても負け知らずだ。


 と、興奮して話が明後日の方に行ってしまったが、なぎさ先輩達が行方不明になった場所に何回も足を運び調査した。目撃者の話では、何かに吸い込まれるように消えていったという話だが、この世界にそんな異世界に飛ばされるだとか、パラレルワールドとか、神隠しだとかそんなはずはあるわけない。


 この辺りを重点的に日々探し回っている。


 手掛かりがあることを信じて。


 しかし、既に何回も往復し何回も調べたが結局手掛かりは見つかっていない。今日は、唯一探していない場所を探せるチャンスなのだ。


 この温泉街には、大きな湖がある。1年に1度だけ水位が下がり1時間だけ渡ることの出来る島がある。今日はここを重点的に探していく。


 予定通り、湖の水位が下がり島に渡る道が現れた。島の中には草木が茂り、奥にはなぜかぼやけて見える不思議な洞穴があった。

 その不思議な感覚が気になり洞穴に向かった。洞穴に入り奥へ進んでいくと、紫色の光が床から漏れている場所があった。


 光を発する床下の仕掛けが気になって、光の上を地団駄を踏むように踏みつけたが光り続けるばかりだった。


 そのうち沙耶は疲れて座り込んでしまった。


「ここにもなぎさ先輩の手掛かりがないか」


 そう呟やいたときにどこからともなく声が聞こえてきた


『……君は、なぎさの知り合いか? 彼を助けてあげてくれ』


 そう聞こえたと思うと紫の光が大きくなって沙耶を包み込んだ。


▽ ▽ ▽

 気づくと洞窟の中にいた。辺りを見回すと見たことない景色。


 立ち上がると、1枚の紙が空から舞い降りてきた。沙耶はそれをキャッチして読んだ。


『なぎさの知り合いよ。なぎさの助けになればと思い紫の力で召喚したが大丈夫だった。入れ替わりでなぎさは旅立ったので後は君のちからでなんとかしてくれ』


「なんだそれー! と、いうかここはどこだ」


「ん!?なぎさ先輩の助け…… ということは、この世界のどこかになぎさ先輩が居るという事だ! きっと見つけ出してやる」


 沙耶のストーカー力が試される瞬間であった。

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