薬莢(2)

 「最高点、三十七。こうなるよなあ。難しすぎるよ」スーツ姿の眼鏡が言った。

 「お前何点とれた?」スーツ姿の薄毛が言った。

 「二十三」スーツ姿の眼鏡。

 「あ、日本人失格」スーツ姿の薄毛。

 「お前は?」眼鏡。

 「二十六点」薄毛。

 「日本人合格おめでとうございます」眼鏡が笑った。

 「うっせ」薄毛も笑った。

 「ボーダー二十五にして、最高点三十七で、合格者が十三人……。さすがにそろそろ方法変えないと、ホントばれちゃうよ、これ。合格者少なすぎ。いや、逆か。満点多すぎ」眼鏡が嘆いた。

 「満点、何人?」薄毛が訊いた。

 「二十二人」眼鏡が答えた。

 「変態ども大喜び」薄毛は真顔。

 「一人いくらぐらいなんだろうな」眼鏡も真顔。

 「二千万とか?」薄毛が眼鏡を一瞥。

 「もうちょっと安くね? 後進国だよ?」眼鏡が薄毛を一瞥。

 「彼ら彼女らの希望に満ちた未来をぶち壊させて頂くんだから、そんなに安くしたら可哀想だ」薄毛が立ち上がる。

 「何様ですか」眼鏡が薄毛を見上げる。

 「これからお骨を二十二人分用意しなければならない大忙しの事務官様です」薄毛が眼鏡から離れていく。

 「どこ行くの?」眼鏡の目が薄毛を追う。

 「便所」

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