組立(2)
黒光りする重厚な机が縦列し、猫のように柔らかいカーペットが床一面に敷かれている会議室で、仕立ての良いスーツを着た男達が声を荒げている。
「少子対策法の裏知ってる奴の数なんてたかがしれてるだろ! 何してんだテメーは!」
「お前らに何億かけてると思ってんだ!」
「申し訳ありません」
末席で立っているヨコウラが頭を深く下げる。
「頭下げんじゃなくて、犯人連れて来い!」
「ヨコウラ」
上座に座っている国王が、落ち着いた声で話しかけた。
「はい」
「本当に見つからないのか?」
「はい」
「生誕祭までには見つかるか?」
「発見できない可能性が高いです」
ヨコウラを睨んでいた国王は、視線を下げると、眉間を親指の先で押し始める。
「……どうしようもないな」独り言のように国王が呟く。「生誕祭は予定通り行う。難民救済法も予定通り公布する」
「危険過ぎます! 何か起こったらどうするのですか!」
「何か起こらないようにするしかない。生誕祭も救済法も、どれだけの人間が関わっているか知っているはずだ。中止すれば、死ぬようなものだ」
国王の言葉に反論する人間は誰もいない。部屋の中が凍りついたように誰も動かない。そんな状況と裏腹に、仕立ての良いスーツを着た男たちの顔色は赤みを帯び、汗が滲んでいる。
「クーラーは……」
誰かが呟いた。
今は十月だよ。
ヨコウラは思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます