実際のコシウォン

 私が住んでいたコシウォンは、近所にオリニ大公園があり、地下鉄七号線の駅、オリニ大公園駅から歩いて五分くらいのところにありました。

 近所にダイソーやマクドナルドがあり、隣のビルにはセブンイレブンもある。

 公園駅のすぐそばにおいしいパン屋さんもあるし、コシウォンのまわりにはたくさん食堂もあります。

 コンビニまで車で十分かかる北海道のわが家とはちがい、大都会の中にありました。

 

 近代的なビルの三階以上にコシウォンという宿所があり、一階に小さなコンビニが、二階にネットカフェ、地下にカラオケボックスが入っています。

 三階と四階が女性専用で、五階が男性専用のフロアです。

 管理人室は三階にありますが、いつも無人でした。

  

 初めて足を踏み入れたとき、なんとなくですが、下水の臭いがしました。

 ただ、しばらく使ってない部屋は下水が上がってきてしまうので、入居当初は臭いがするけど、使っているうちにしなくなるそうです。

 それは最近日本のテレビ番組で知ったのですが、確かに気になったのは最初だけで、住んでいるうちに気にならなくなりました。

 私の鼻が慣れてしまったからなのかなと思ったのですが、ちゃんと理由があったのですね。


 小さいですが窓もあるので、換気もできますし、日光も入ってきます。

 トイレとシャワー室が別にあって共同で使うコシウォンもありますが、私が住んでいたところは各部屋にありました。

 でも窓もなく、すごくせまい!!!

 一畳くらいのスペースに洋式トイレとシャワーと小さな洗面台があるのですが、シャワーを使うと便器がずぶぬれです……

 なので私は便器がずぶぬれにならないように、しゃがんでシャワーを使っていました(笑)

 

 初めてシャワーを使ったときのことです。

 お湯が全然出ない!

 その日は水シャワーを浴びるしかなかったのですが、夜の九時になればオンドルがつくという話だったのに、暖かくなった気がしない……

 冷えた体に初春の冷えた部屋!

 凍死するかと思いました……

 壊れているのかなと思って管理人さんに見てもらったら、水をずっと出し続ければお湯になるとのこと。

 コツを教えてもらったのはいいのですが、水道代がもったいないなぁ(部屋代に込みなのですが)なんて考えてしまうくらい出し続けると、お湯になります。

 お湯が出たときは本当にうれしかったのですが、調節がむずかしく、熱すぎたりぬるすぎたりします。

 ホテルではそんなことはないのですが、コシウォンではたまにお湯がぬるいときもあります。

 ボイラーは新しくしたばかりだというので、住人達がたくさん使う時間帯だとお湯が出にくくなるのかもしれません。

  

 古い建物らしく、部屋をぐるっと見まわせば、壁紙はよれて、塗り合わせたところははがれかかっていました。

 机のへりはガサガサになっているし、やっぱり合板がよれています。

 テレビはブラウン管テレビでした!

 懐かしい!


 三畳か四畳くらいのところにベッドと机と小さな冷蔵庫と小さなクローゼットがありました。

 天井が低いので、クーラーが低い位置に取りつけてあったせいで、クローゼットの扉は全開できません。

 冷蔵庫はずっと使い続けると霜がついて食品が入らなくなるので、たまに霜取りをしましょう(笑)

 

 ベッドがひどかったです……

 マットがぺしゃんこなんでしょうか?

 背中にスプリングがあたって痛い!

 スプリングの形がわかるベッドに寝たのって、生まれて初めての経験です。

 マットレスを買ってベッドに敷いて寝ていたのですが、半年間ずっと痛かったです……

 椅子もクッション性がなくなっていてゴツゴツだし、半袖で机にむかうとガサガサの角で腕が傷つきます。


 コシウォンは壁が薄いので、ベッドに寝ていると隣の生活音が聞こえてきます。

 トイレ側の隣人の音はトイレを流す音とシャワーの音が聞こえます。

 ベッド側の隣人はテレビ音やスプーンの音まで聞こえてきます……

 こっちの生活音もつつぬけじゃないですか!

 ドアの開け閉めや足音やすべてにおいてこそこそしていました……

 ただ隣同士の壁は薄いのですが、上の住人の音はまったく聞こえませんでした。

 天井は低かったのですが、しっかりした構造だったのかもしれません。


 ベッド側の隣人は最初は韓国人だったのですが、普段はすごく静かなんですが、寝相が悪いらしく、夜中に壁をけります!

 一度隣からタンスでも倒したかのような爆音がして、飛び起きたことがありました。

 心臓がとまるかと思いました!

 その夜、管理人さんらしき声が聞こえてきました。

 たぶんなにかを壊してしまったか、古くて壊れてしまったかのどちらかで、管理人さんを呼んで修理してもらったのかもしれません。

 家具は作りつけだったので簡単には倒れないものだし、そもそも家具そのものが少ないし、いまだにお隣さんでどんな事故が起こったのか思いつくことができません(笑)

 

 私より後に入って、私より先に引っ越してしまったその人の後に、中国人らしき人が入居しました。

 その人のところには友達がきて、夜中まで騒ぐ騒ぐ!

 しかし住人もうんざりしたらしく、怒った声が聞こえてきて、それからは友達はこなくなりました。

 友達がこなくなっても、今度は深夜まで電話で話し声が聞こえます。

 コシウォンに住むかぎり安眠はできないのだと悟りました……

 

 韓国では水道の水をそのまま飲むとお腹を壊すかもしれないので、ウォータークーラーの水を飲みます。

 コシウォンの台所にはウォータークーラーが設置されていて、無料で使うことができます。

 食器を洗うときは水道水を使っていましたが、ラーメンのスープや生で食べる野菜や果物を洗うときはウォータークーラーの水を使っていました。

 

 湿気や臭いがこもらないようにするためなのか、冬でも台所の窓が開いていて、食器や調理用具が泥はねをあびたように汚れていました……

 この食器や調理道具を使うのはな……と思い、ダイソーで鍋と食器洗い用スポンジと水筒を買って、鍋から直接ラーメンを食べていました。

 何回も台所と部屋を行ききするのが面倒だったので、水筒にウォータークーラーのお湯や水を入れて飲んでいました。

 

 台所事情は各コシウォンによってちがうようです。

 管理人さんがいつもいて、毎日まめにご飯を炊いたり、ゴミをかたづけたりしてくれるところもあるそうです。

 冷蔵庫におかずが何種類も入っていて、食べていいところもあるそうです。

 私が住んでいたコシウォンは管理人さんの他に寮母さんみたいな人がいて、その人が台所を管理していたのですが、初めの頃は仕事をしてる感がまったくない人に見えたのですが、私が日本に帰る頃になると管理人も任せられていて、仕事人としての意識もしっかりしてきて、別人のように生き生きしてました。

 

 実をいうとコシウォンは住むところとしては、韓国人からもあまりよく思われていません。

 よく思ってなくても、一ヶ月から気軽に契約できるし、寄宿舎に入れなかった学生達にとっては便利な物件なのでしょう、学生らしい若い韓国人がたくさん住んでいました。

 台所があまり充実していなくても、近所には安くておいしい食堂があるし、学食もあるし、コンビニもたくさんあるし、出前も取れます。

 学生達にとってコシウォンには寝るためだけに帰ってくるところなのかもしれません。


 

 

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