青年編 第11話 ストレス発散

 よもぎ大学付属高等学校。校門付近。


 口撃を全面に受け、氷堂先輩が去った後、俺は蔵書庫にかなりの時間呆然と佇んでいた……


 その後、俺は放心した意識取り戻し、家に帰ろうと校門を出た時、再び彼女に対するイライラが噴き上がってきた。


 あぁぁぁ! なんかむしゃくしゃするぜ……俺は氷堂先輩に対してなにもしていない……それなのに、先輩は俺を本気で嫌っていた……なんだっていうんだよ……


 あぁぁぁ! ストレス溜まるぜ……

 どうしよう……これは発散しておかないとまずいな……


 ストレスは発散しておかないと……今後の活動に影響をもたらすからね……



「はぁ……こんなことになるくらいならともと遊んでいた方が断然良かったな……」


 智也の忠告は正しかった……彼女、氷堂時雨には関わるべきではない……

 彼女はあまりにも男子のことが嫌いすぎる……


 男子全員に対してあんな感じなのだろうか……

 それとも……俺だけなのだろうか……


 あぁぁぁ! 考えるだけでイライラする!

 クッソォ! ちょっと美人だからって調子に乗りやがって……

 俺の【魅了】を使って、彼女を俺のものにできたら……どんなけ面白くなることか……


 だが……


「親愛度5ってなんだよぉぉぉぉぉ!」


 俺の絶叫が少し赤みを浴びた空へと広がっていく。


 俺は今完全に冷静な状態にはいない……

 彼女の口撃を食らって、かなりのダメージを受けている……


 そんな俺には彼女の攻略の仕方なんて思いつかない……


「…………とりあえず、あそこに行くか」


 俺が校門を出て向かったのは……


 大人のお店……なんてことはなく、



 カキーン。

 

 カキーン。


 カキーン。


 俺が向かったのはバッティングセンター。

 


「はぁ……やっぱり、ストレスが溜まった時はバッティングセンターだよね」


 俺は自分の財布から千円札を取り出し、コインの自動販売機でコイン11枚と交換した。



「バッティングセンターも久しぶりに来たなぁ」


 俺はバッティングセンターにおいてあるバットを手に持ち、コインをスタートボタンに投入し、機械に赤いランプが光り出す。

 そして俺はネットに仕切られている場所にはいり、白線のバッターボックスに立つ。


 俺が最初に打つのは速度100キロの球だ。


 機械の腕が徐々に動きだし……


 ボン。


 といって、球を放出する。


 その出てきた球を俺はというと……



 スカッ。


 なんということでしょう……


 見事な空振りです。完全に空を切っています……


 そして、次の1球も機械から放出される。


 ボンッ。



 カスッ。



 少しだけ当たりました……

 完全なるファウルチップです……



 そして、次の一球はというと


 ボン。



 スカッ。



 なんということでしょう……

 


 これで三球三振になってしまいました……



「あぁぁぁぁ! なんでだよぉぉぉぉぉ! せっかく、ストレス発散に来たのに……めちゃくちゃストレス溜まるじゃねぇかよぉ!」



 もう……こうなったら……この手は使いたくなかったのだが……

 これ以上ストレスが溜まるのは我慢だ……


 

 師匠! お願いします!

 了解!



 機械からまた再び球が放出される……



 ボン。  


 

 カキーン!


 バン!



『ホームラン! ホームラン! です。

ホームランを打った方は景品がございますのでどうぞ受付まで!』



 と、室内にアナウンスが広がった。


 だが、俺の躍進はこんなもんじゃない……



 ボン。

 カキーン!

 バン!


 ボン。

 カキーン!

 バン!


 ボン。

 カキーン!

 バン!

 


 俺はたまったストレスを吐き出すように買ったコイン全てを使い、最初の3球以外全てをホームランと書かれた板へと打ち返した。


 室内放送も大変なことに……


 


『ホームラン! ホームラン! です。

ホームランを打った方は景品がございますのでどうぞ受付まで!』

『ホームラン! ホームラン! です。

ホームランを打った方は景品がございますのでどうぞ受付まで!』

『ホームラン! ホームラン! です。

ホームランを打った方は景品がございますのでどうぞ受付まで!』



 バッティングセンターの室内には、このアナウンスが連続で30分くらい流れていた。


 これによって、俺は1日で今月のホームランコンテストのランキング1位と輝いた。


「ふう……スッキリしたー! 持つべきものは師匠だよね!」




 と、俺は自分のバッティングを済ませ、出てきた汗を裾で拭っていたところ、こんな声が聞こえてきた。



「なによぉぉぉぉ! なんで当たんないのよぉぉぉ!


 テストの点が悪かったからってなんなのよぉぉ! 


 わたしだって頑張ったんだよぉぉぉ!」



 俺はテストがきっと赤点でストレスを抱え、バッティングセンターに来て空振りをしまくる女子生徒の叫び声がある方を見た。


 え!? あれって……



 俺はその人物を見て驚いた……



 そこにいたのは…………





 









 ナツ!?

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