第32話 洞窟にあった石碑

 クリクを誘い出した流れで俺は教えられた記憶を頼りに洞窟へと向かう。クリクに話すと、クリクはその場所を知っていた。


 生い茂るシダの葉に足を濡らされながら森の中を進むと、その洞窟に辿り着いた。クリクが腰から携帯ランプを取り出して奥へと進んでいく。俺はそれについて行った。


 元は自然に開いた横穴が至る所人の手で削られていた。そんなに奥深く続かず、直ぐに突き当たる。


 そこには何かで斬られた岩の断面なのか一枚の石碑が置かれていた。その横には、上部が丸い岩がある。


「丸い岩はサイホーンの墓だよ」と、クリクが言った。クリクがサイホーンに会ったのは先代のじいさんが憑依されてた時だとか。通りで語りたがらないわけだ。


 石碑には、日付と時間が書いてある。

 今日の日付だ。


「先代のじいさんからはこれは聞いていないな。竜王の牙もわずかになって、俺の代で終わらせたかったのかもな」


「魔剣を造っても良いような君主に出会える時代ばかりじゃなかったからね……でも、サイホーンは造りたいんだよ。今日を逃したらまた千年待つ事になるからね」


「そうか……」


 俺は遺された素材で思うがままアーネスに魔剣を造ってしまった。もう二度と作らないし俺の代で終わると思って、受け継がれた秘法も自分の狂おしい想いも全てを魔剣に封印するつもりで造ったんだ。浅はかだったのか先見だったのか今となっては分からない。


 結構凝った隠し戸に隠したつもりだったけど、あっさり(破壊されて)見つかって……相手が悪かった。


 結局、俺はアーネスに付き合わされて竜王の牙を取りに来た。アーネスを我が君主だと思っていたつもりじゃないのに、そのまんまになりそうでちょっと怖い。


 サイホーンの墓参りを済ませて、アーネス達の元に戻ろうとすると、一騒ぎ起きた後だった。


 俺たちを出し抜けて、ググランデ達が魔星の谷へ向かったという。クリクが「ほっとけば良いんじゃない? 」と言った。フェンリルよりも小さな魔物ですら敵わなかったのにと呆れた。


 ガーグルも同行しているというので、俺たちはアーネスと合流するなり魔星の谷へと走った。アーネスなりに、異母兄弟も心配しているようだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る