第57話

「あー、頭痛え……」


 オカは昨日の飲み会での酒がまだ残っているらしい。

 どうやら、昨日は相当遅くまで飲んだ様だ。


「今日からヒューズさんとパークさんも一緒に働くから楽しみだ」


 オカは電車を乗り継ぎパラノーマルに向かう。一時間程電車に揺られていたが、電車の微妙な振動ですら今のオカにはキツかったらしい。電車を降りると速攻でトイレに行き……


「ふぅ。だいぶスッキリしたな」


 トイレで一体何を出したのかオカは先程より随分と顔色が良くなりパラノーマルに向かった。


「おはようございます」


 事務所の扉を開くと、既に全員が着いていた様だ。


「オカ君おはよう」

「おう!」


 スーツに身を包んだヒューズとパークがそこに居た。


「二人共スーツなんですね」

「はは、どうだい似合うかな?」

「最高です!!」


 ヒューズの問いに応えたのはオカでは無く何故か近くで会話を聞いていたダルマであった。


「ヒュ、ヒューズさんは何でも似合いますね!」

「はは、ありがとう。ダルマ君もだいぶスーツに慣れたんじゃ無いか?」

「い、いえ。まだニートの時の感覚が抜け切って無いですね」

「ダルマは、まずその肉を脱いだ方がいいと思う……」

「う、うるさいぞ! そして突くな!」


(なんて、緩い会社なんだ……最高だな

!)


 オカは今のやり取りを見て、パラノーマルに入社して正解だと思った様だ。


「あら、オカ君も来たのね」

「社長、おはようございます!」

「ふふ、やめてやめて。普通に今まで通りにして」

「はは、オカ君その言い方いいね」

「おう! 俺も今度からプルさんの事を社長って呼ぼうかな」

「ヒューズ君もパーク君もやめてよね」


 そんなやり取りを朝からしていると、始業時間になる。


「それじゃ、皆んな今日もよろしくね」


 そう言うと、ヒューズとパークが自分達の机に着いて何やら作業を始めた。


「プルさん、俺達は何をすれば良いですか?」


 オカとフィブ、ダルマの三人はまだ勝手が分かっていないので何をしたら良いか分からない。


「オカ君達には依頼の内容とかを確認してもらいたいのよ」


 プルは三台のノートパソコンを持って来てオカ達に渡す。


「パクト事件の影響で依頼や情報がメールにバンバン来ているのよ」


 少し困った表情を浮かべたプル。


「依頼や情報のメールを見て明らかに嘘ぽいなら削除して構わないわ。本当そうなら、私か、ヒューズ君、パーク君に聞いてくれる?」

「「「分かりました」」」


 プルの指示の元早速三人は仕事に取り掛かった。


(どれくらい、メール来ているんだろ?)


 オカは初期設定を行い、メールを確認すると、そこには1000通以上溜まっていた。


「かなりメール来ているな……」

「そ、それ程俺達の会社が有名になったって事だろ?」

「これは骨が折れそう……」


 三人は一通一通メールの内容を確認し始める。


(なんか、全然関係無いメールばかりだな)


 メールの内容は様々であった。犬や猫の迷子探しや、不倫調査、電球交換から買い物代行まで色々なメールがある。


(おいおい、ウチの会社は何でも屋じゃ無いぞ……)


「ひ、ひでぇ……」

「うん。ダルマのお腹くらい酷い……」


 フィブの言葉にダルマのこめかみにシワが寄るが、なんとか心を落ち着かせてスルーする。


(やっぱり、ダルマは大人だな)


 フィブはと言うと、ダルマが怒りを抑えるのを見てニヤリと笑いパソコンに視線を戻した。


「プルさーん、これウチの会社と全然関係ない事ばかりですよー」

「そうなのよね……。だからどれが本当の依頼なのか精査するのが大変なのよ」


(これは、確かに俺達みたいな、まだ仕事に慣れてない者達に取っていい仕事かもな)


「オカ、もう音を上げたのか?」

「いえいえ、まだまだですよ!」

「その意気だ!」

「はは、分からない事があればいつでも聞いてくれて構わないからね」


 それからは、ヒューズとパークが時々様子を見に来ては、分からない事を丁寧に教えて貰うオカ達であった。

 その際にダルマだけは異様にやる気を出し、ヒューズに言われた事は一語一句聞き逃さない様にとメモを取っている。

 本来ならダルマの姿勢は正しい筈なのだが、オカとフィブに関しては全くメモを取らずに教えて貰った事をそのまま頭の中に詰め込んでいる様だ。


「お前らメモ取らないでいいのかよ?」

「俺、こういうの得意だから多分平気」

「私も……」


 言っていた通り、オカとフィブは特にミスする事も無く教えて貰った事をどんどん吸収していった。


「ク、クソ。よく分からない奴らめ」

「ダルマは真面目過ぎるんだよ」

「オカの言う通り。私達を見習うべき……」

「そ、それは遠慮しとく……」


 ダルマも特にミスなどはして無いが、オカ達の様にその場で覚えられる程器用では無いらしい。


 それからもオカ達は次々とメールを読み漁っては削除を繰り返していると、一通のメールに目が止まる。


(ん?)


 件名には、都市伝説についてです。とあり、オカはどうやら都市伝説部分が気になった様だ。


(ちゃんと、読んでみるか)


 この男、都市伝説関係で何度か痛い目に合っているのだが、懲りて無い様だ……

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