第46話

 オカとフィブは途中で仮眠を取りつつ、朝方に町に到着する。


「着いたわね、ダルマ君お疲れ様」


 労いの言葉を掛けてプルは外に出る。


「う……ん、もう着いたのかー?」

「お前ら、気持ち良さそうに寝やがってて!」

「ダルマ、お疲れ……」


 車が止まった事によりオカとフィブが起き出して車の外に出る。


「二人共おはよう」


 車のドアが開く音にプルが反応した。


「プルさん、ここの工場がそうですか?」


 オカ達の目の前には大きい工場が広がっていた。しかし都市伝説の話通り廃棄された工場があり、工場内からは何一つ機械音は聞こえず、それがまた不気味な雰囲気を出していた。


「そうね。二つある候補の一つ目ね」

「早速調べに行く……?」

「いえ、私もダルマ君も一度仮眠を取らないとキツイし夜に忍び込みましょうか」


 プルの言葉にダルマは深く何度も頷く。四人は再度車に乗り込み宿に向かう。


「おー、プルさん温泉ありますか?」

「肌スベスベになれるかも……」

「ふふ、そんないい所は止まれないけど、仮眠取ったら温泉入りに行きましょうか」


 オカとフィブは喜び、眠そうにしていたダルマもどこか嬉しそうだ。


 宿に到着した一同はチェックインを済まし男女一部屋ずつ部屋を取ったらしい。


「それじゃ、お昼に再度集合ね」

「分かりました」

「二人共、しっかりと仮眠を取るのよ?」


 そしてオカとダルマは部屋に向かった。


「オカ、お前車の免許取れよ」

「そうだなー。大学時代に取っとけば良かった」

「合宿なら一ヶ月で取れるけど、今は働いているから無理そうだな」

「だなー、お? ここだな」


 オカ達は部屋に入る。


「おー。なかなか広いし和室いいなー!」

「確かに、広いな」


 二人は荷物を置き、楽な格好に着替える。


「ダルマ、どうする?」

「俺は、眠いから速攻で寝る」


 そう言うと押し入れから布団を取り出してダルマは布団に入って直ぐに寝息を立て始める。


「よっぽど疲れてたんだな……」


 オカも、やる事が無かったのか少ししてから布団に入り寝る事にした。



 それから二人は時計の針が三時を指すまで仮眠を取り、アラーム音に起こされる。

 眠く、怠い身体を引き摺る様に布団から出て素早く準備を済ました二人はプル達と集合するべく部屋を出た。


「あー、眠い……」

「お前は車でも仮眠取ってただろ」

「今までの過ごし方からしたら、睡眠時間が足りねぇーよ」

「それには同感だな」


 オカ達の今までの生活からしたら、一般人に比べて十分な睡眠時間でも、オカ達には不十分の様だ。


「あ、来た。二人共遅い……」

「ふふ、二人共眠そうね」

「遅れてすみません」

「いえ、大丈夫よ。そしたらご飯食べに行きましょうか」


 ご飯と言う単語を聞いたダルマは眠そうだった顔がキリッとした表情に変わる。


「は、早く行きましょう」

「ええ」

「食いしん坊……」

「ダルマらしいな」


 四人は昼を食べる為に宿から出る。


「皆んな何食べたいかしら?」

「肉!」


 ダルマがいの一番に発言し、特に反対も無かった為、トンカツ屋に入りご飯を済ませた。


「美味かった……」


 フィブは自身のお腹をポンポン叩いて満足そうにしていた。


「あぁ、俺も満足だ」


 続いて、フィブの三倍程大きいお腹を持つダルマも自身のお腹をポンポン叩く。


(二人共食いすぎだろ……)


 ダルマは体格で食べそうなのは分かるがフィブも沢山食べていた。オカは小さな身体のどこに入っているのか不思議でしょうがない様だ。


「皆んな満足してくれた様ね」

「「「はい」」」

「そうしたら、少し早いかもしれないけど、温泉に行きましょうか」


 温泉の言葉にオカは喜ぶ。


(温泉いいよな。癒されるし)


 とても、オヤジ臭い思考だがオカは温泉が好きな様だ。

 四人はそれぞれ温泉でユックリと身体を休ませる。途中でフィブがのぼせるなどのハプニングがあったものの四人は夜になるまでマッタリと過ごした。


「さて、これから廃棄工場に忍び込む為に車で向かうけど、準備はいいかしら?」


 温泉を入り終わった後にゆっくりしていたら、すっかり暗くなっていた。


「オッケーです」

「懐中電灯も持った……」

「非常食も持ちました」


(ダルマ、まだ腹減っているのか?)


 三人はそれぞれ自分なりに準備して来たらしい。


「それじゃ、行きましょうか」


 車に乗り込み、プルの運転で朝行った工場に向かう。


「夜の誰も居ない工場ってなんかワクワクするよな」

「うん。楽しみ……」

「お前ら二人気楽だよな……」

「怖いの……?」


 ダルマに対してフィブが首を傾げる。


「こ、怖くねぇーよ」

「手、握ってあげようか……?」

「馬鹿にするな!」


(フィブってダルマを揶揄うの好きだよな)


「ふふ、三人共頼もしいわね。ダルマ君安心して、工場内で単独行動はさせないから」

「べ、別に怖く無いです」

「足震えている……」

「うるせぇ!」


 こうして、夜の車通りが少ない道をどんどん移動して、工場の近くに車を止めた。


「さて、別に難しい事なんて、何も無いけどここからは気を張って行くわよ」


(そうだよな。これは遊びじゃなくて仕事なんだ……)


 オカ達四人は廃棄工場に足を踏み入れた……

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