第34話

「はぁはぁ、マサオさんは?」


 オカ達は食堂を出て廊下を走っている。

 後ろを見るとオカ達から少し遅れてフィブとパークが居るのが見えたが、マサオさんの姿は見当たらない。


(よし、なんとか全員無事だな)


「オカ君、この写真を早く壊した方がいいんじゃないか?」

「確かに、そうですね」


 一同は走るの辞めて写真を壊そうと床に叩きつけるが壊れなかった。


「よし、ダルマ君こっちに来てくれ」

「は、はい!」


 大きな身体を動かしダルマが写真の前にやって来る。


「俺とオカ君が写真を持っているから、この上に座ってくれ」

「わかりました」


 オカとヒューズは少し屈みダルマが座りやすい位置まで写真を降ろすと、ダルマは勢いよく、写真の上に座る。


(おいおい……嘘だろ……)


 信じられない事に写真はダルマの体重を支え切ったのである。


「相当頑丈な作りだね……」

「どうしようかしら」

「お、俺が乗っても壊れないなら結構な力が必要だと思います」


 ダルマの言葉に一同はある一人に視線が集まる。


「……まぁ、俺しか無いよな」


 パークは片腕をマサオさんに刺された為今は止血の為に手で抑えている様だ。


「片腕は使えねぇーから、そこに写真を立てる様に持っててくれ」


 パークの指示によりオカとヒューズは写真を立たせた。


「ふぅ……」


 すると、写真の前に立っていたパークは腰を少し落とし一呼吸してから写真に向かって正拳突きを当てた……


「これゃ、ダメだな……」


(パークさんの力でもビクともしないなんて……)


「フィブ、何か案はある?」

「ごめん、分からない……」

「とりあえず、ここから出よう」

「そうね。いつマサオさんが来るか分からないし」


 ヒューズの提案で一同は再び走り出す。


「もしかしたら……」


 走っている際にフィブが何やら呟く。


「何か思い付いたのか?」


 フィブと一緒に後方を走っていたパークが聞く。


「うん。依り代はその人に関係在る物であるから、依り代を壊すのもその人に関係在るものじゃ無いとダメなのかも……」


 フィブの説明に全員が、その物が何か考える。


「多分アレだな」


 オカの言葉に一人を除いて他の者も頷く。


「え? なんだよ?」


 パークだけはどうやら何の事が分かっていない様だ。


「ハサミですよ」

「ハサミ?」

「はい。マサオさん人を殺す時絶対ハサミを使用していましたし、恐らく間違えて無いかと」


 オカの説明に一同が頷く。


「や、ヤベェ……」

「ん? パークどうしたんだ?」


 ヒューズの視線から逃れる様にパークは顔をソッポ向く。


「そういえば、さっきマサオさんに刺されたハサミどうしたの……?」


 次はフィブの視線から逃れる様に顔を背ける。


「パーク君、あなたまさか……」


 トドメだったのだろう。プルの視線に耐えきれずパークは話し出す。


「皆んな悪い! そのハサミあの野郎に投げ返しちまった」


 どうやら、フィブと逃げる際にパークは肩に突き刺さっていたハサミをマサオさんに向けて投げ返した様だ。


「筋肉……」

「おい! その言葉、悪口じゃ無いのに悪口に聞こえるぞ!?」

「無い物はしょうがない。これからどうやってマサオさんからハサミを奪うか考えよう」

「お、おう! ヒューズに賛成だぜ」


(パークさんが怪我した状態で、あのマサオさんからハサミなんて奪えるのか?)


 オカが心配している事は全員考えているはずだろう。しかしそれを言葉として発音してしまったら余計に無理だと感じてしまう為、敢えて皆は話さない様だ。


「み、みんな! 玄関だ」


 先頭を走っていたダルマは息も切れ切れで玄関を見つけた。


「一旦外に出て体制を整えよう」

「そうね。この家自体マサオさんのテリトリーだし」


 そしてダルマが玄関を開けて外に出る。


「よし、あの野郎は居ないようだな」

「森に逃げ込もう」


 オカ達は外に出て森に隠れるように奥まで入っていく。

 大分進んだ後に休憩に適した場所を見てけて座り込む。


「ふぅ……これで一休み出来る」

「はは、オカ君お疲れ。写真持ちながらだから疲れたでしょ?」

「いえいえ、ヒューズさんこそ一緒に持ってたし同じですよ」


 六人は疲れた身体を休める為に地面に座り込む。


「さて、どうすれば良いやら」

「パークさん、もう一度マサオさんを力で抑え込む事は可能ですか?」


 オカの問いに、パークは自身の肩に一度手を置き答える。


「分からねぇ……。だが確実に言える事は正気じゃ無いあの野郎は止められねぇーな」

「今のマサオさんの状態が正気なのかも分からないわよね」


 それぞれが案を出しては難しいと結論が出て、また別の案を出す。その繰り返しで何とか策が決まった様だ。


「よし……これでいこう」

「オカ君、いいのかい? 一番危険な役だけど」

「はい。カリンの敵討ちをすると決めたんです……」

「そうか……」


 どうやら、作戦の中で一番危険な役目をオカが担当するらしい。


「写真を壊すのはオカがやると良い……」

「そうね、カリンちゃんの為にも」

「オ、オカ。頑張れ」

「何かあったら俺が助けてやるからな!」


 皆がオカにエールを送る。


「俺は絶対に生きて帰ってやる!」


 そして各自作戦の為に配置に着く様移動を始める……

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