第25話

 そこにはオカ、フィブ、プルの三人が居る。

 オカはカリンが殺された事にショックを受けて、どうやら泣いているらしい。


(俺のせいだ……俺がこんな所に誘ったから……)


 悔やんでも悔やみきれない程の想いがオカの心を包み込む。


(こんな場所来るんじゃ無かった……)


 参加者全員が思っている事であろうが、今更遅い。


(ごめん……カリン……)


 カリンとの仲は、そこまで長い訳では無く、期間として言うと三ヶ月程前に出会ったばかりである。

 だが、その間にカリンと会話した回数はかなり多く、このオフ会に参加するまでの一か月間は殆どカリンと一緒に行動していた。


「オカ……大丈夫……?」


 オカの様子を心配してフィブが声を掛ける。


「あぁ……今は悲しんでいる暇さえ無いよな……」

「オカ君……」


 感情の方はまだ折り合いがついていない様だが、マサオさんに追い掛けられているこの状況をオカはしっかりと理解してはいる為、悲しむのは全てが終わってからと心に決めた様だ。


「フィブ、プルさん、マサオさんを絶対に……」


 嗚咽の混じった声で静かに呟く。しかし二人はしっかりと聴き取ったらしい。


「オカの気持ちは分かる。私も同じ気持ち……」

「カリンちゃんの敵討ちの為にもね」


 三人は決意を新たに、どうするか話し合う。


「空も大分暗いし、この暗さに乗じて村に向かおう」

「そうね、ただ依り代がありそうな場所に検討をつけないと、小さい村だからと言っても探している間にマサオさんに見つかってしまうわ」


 マサオさんの村は小さいと言っても家は20棟以上あるので、一軒ずつ探していたらキリが無いだろう。その間にもマサオさんにいつ見つかるか分からない為三人はまず、どの家を探すか決める事にした。


「やっぱり……マサオさんの家しか無いと思う……」


 フィブの声に二人も頷く。


「そうだよな。マサオさんの家の何処かに依り代があると、俺も思う。むしろそれしか考え付かない」

「そうよね。それ以外は都市伝説の話で出て来てないわよね……?」


 三人はマサオさんの都市伝説である話を必死に思い出しながら相談をしていたが、やはりマサオさん家に忍び込む事にした様だ。


「そういえば、あの村にマサオさん家ってあるのか?」


 オカは村に到着した初日に見学していたが、その際にマサオさん家など見つける事が出来なかった。


(そもそも、あの時はこんな事になるなんて思っていなかったから、楽しむ事ばかり考えて、そこまで注意深く観察していなかったな……)


「大丈夫、私が知っている……」

「さすがね」

「どの辺にあった家だ?」


 フィブから話を聞きオカ達は村に戻る為歩き出そうとするが、奥で草木が揺れる音が聞こえた。


 三人は咄嗟に身構える。カリンのお陰で振り切れたマサオさんに、また見つかってしまったかと、三人の心の中で警告音が鳴るが、どうやらマサオさんでは無かったらしい。


「ダルマ君、息は整ったかい?」

「は、はい」


 音の正体はどうやら、ヒューズとダルマだった様だ。


「ん? あれってヒューズさんとダルマじゃないか?」

「生きていたのね」

「無事で良かった……」


 オカは二人が気づく様に声は出さず、大きな手振りでサインを送った。


「オ、オカ君達かい?」

「え、え?」

「ダルマ君、どうやら僕達以外も生きている人が居たよ」


 こうして、オカ達は二人と合流する。


「ヒューズさん、ダルマ、無事でしたか!」

「あぁ。君達も無事で安心したよ」


 合流した事を喜び合う。


「ヒューズさん、怪我などは?」

「俺もダルマ君も何ともないさ」


 一通り怪我など無いかを確認し、キングが殺されてからの事を二人は話し合った。


「そうか……カリンちゃんが……」

「はい……俺の所為です」


 カリンが死んだ事を知ったヒューズは悲しい顔をした後にオカ達が無事な事を喜んだ。


「いや、オカ君の所為じゃ無いよ、マサオさんの所為だ」

「……ありがとうございます」


 それからは、オカ達が持っている情報をヒューズ達に伝えたら一緒にマサオさん宅に同行すると言った。


「依り代か……それを壊せばマサオさんを消滅させる事が出来るって事かい?」

「えぇ。私が調べた限りではそう……、これで違ったらお手上げ……」


 フィブは降参のポーズなのか両手を挙げるジェスチャーをした。


「でも、フィブちゃんが一年間掛けて調べたんだ、他に手を思い付かないしやってみる価値はあるね」


 ヒューズの言葉にダルマが同意する。


「ヒュ、ヒューズさんに賛成。マサオさんをどうにかしないとココから抜け出せない」


 二人はマサオさんが姫を追い掛けている間に再度下山を試みたが、やはり前と同じく結局は同じ所をグルグルと回るだけであった。

 そして二人も一旦村に戻ろうとしていた所にオカ達と偶然出会ったのだ。


「十人以上居たのに、今は五人しかいないのね……」


 プルの言葉に他の者は何も言う事が出来なかった……。

 

 そして、オカは小さい声だが、緊張感をもって呟く。


「よし、皆んなで村に戻ろう……」


 オカの掛け声に四人は頷くと、静かに村に向かって歩き出した……。


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