第17話
「な、なんだよこれ……」
オカは無意識に声を出してしまう。
「ク、クイーン……?」
姫が死体を見て呟く、そしてその惨たらしい死体を見て吐き気が催したのか汚物を口から吐き出す。
クイーンは、口からハサミが突き立てられ、後ろの方まで貫通していた……。
「クイーン……なんて事だ……」
キングも姫同様知り合いの無残な姿を見て吐き出す。
(この殺され方……まさに……)
オカの考えている事は、ここにいる全員が気が付いている敢えて言葉には出していない。
「一体誰がこんな事を……」
姫の背中をさすっていたヒューズも、衝撃的な映像だったのか、言葉を詰まらせている。
ここに居る全員がしばらくその場から動けずにいた。
そして、悲鳴を聞きつけたカリン達も集まって来た。
「オカ、どうしたの?!」
「凄い悲鳴が聞こえたけど?」
「カリン、プルさん、これ以上は近付かない方がいい……」
オカはカリン達に死体を見せないように止めて、事情を話すとカリンとプルは尻餅を突く。
「そ、そんな……」
「本当なの? オカくん……」
「はい……。この先でクイーンが……」
プルはオカを優しく推し退いて死体を確認し戻ってくる。
「あれじゃ、まるで……」
とうやらプルも気付いた様だ。
(口にハサミを突き立てられて殺された……。あれではまるで都市伝説のマサオさんが村人を殺し回ったやり方と一緒だ……)
他にも正男やフィブも到着し全員が死体を確認し、ひとまず広場に集まった。
「皆さん、このまま下山しましょう……」
正男の意見に反対する者は誰一人居なかった……。
無線機を繋がらず、文明の利器と隔絶された、この場所から少しでも早く離れたいと思うのはしょうがないだろう。
「姫ちゃん、歩けるかい?」
泣いていた姫はコクリと頷きながらヒューズに支えられながらも立ち上がり下山する為に歩き出す。
「お、俺も、て、手伝う……」
ダルマはヒューズの逆に周り、姫に肩を貸すために触れようとした瞬間であった……。
「や、やめて! あんた、キモいのよ!!」
「え……?」
姫はダルマが触れる寸前に避ける様にヒューズに抱き着く。
そして拒絶されたダルマは何が起きたかわからない様な表情をして固まる。
(酷すぎる……)
ダルマを置いてヒューズと姫は歩き出す。去り際にヒューズが一言だけダルマに呟いた。
「すまない……」
ヒューズはダルマが姫の事を気に入っているのを気付いていたし、協力出来る機会があれば手を貸す気でいたが、この状況では難しいだろう……。
正男を先頭にオカ達は下山する為に歩き出した。
「オ、オカ……私達大丈夫かな……?」
とても不安そうにカリンが聞く。
「大丈夫だよ。後は山を降りるだけだし」
勤めて優しく言うオカだが、カリンは不安なのか自分を抱きしめる様に両手で肩を抱きしめながら歩いている。
近くを一緒に歩いているプルは、ここは手でも握ってあげたら良いんだけどねと言いたげに二人を見ていた。
正男の隣にはフィブが一緒に歩いており、その後ろをヒューズと姫、キングが静かに歩いている。
「姫さんとキング、大丈夫かな……?」
オカの心配する様な声にプルが応える。
「お友達のあんな姿見たらショックよね……」
「私はオカが止めてくれたから死体そのものは見てないけど、姫ちゃんは……」
姫とキングを心配する三人であったが、オカはもう一人心配している者が居た。
その者は一番後ろを地面を見ながら歩いている。
(ダルマも大丈夫かな? 好きな人にあんな事言われたらショックだよな……)
正男とフィブの表情は読み取れないが、全員がこの状況に頭が付いていかない様で、黙々と山を降りていく……。
だが、問題は死体だけでは無かった……。
しばらく山を降りて来た際にフィブが突然止まる。
「おかしい……」
急に止まった為、後ろにいる全員が一度止まり、何事かフィブを見る。
「どうされました?」
隣を歩いていた正男も一度止まりフィブに聞く。
「この道さっきも通ったと思う」
その一言に他の者は周りを見て確認するが、誰一人景色を見ながら下山をしていなかった為フィブの言う事が正しいのか分からない。
「フィブさん、どういう事でしょうか?」
「恐らく、同じ所をグルグル回っていると思う」
こんな状況で聞きたくない言葉が耳に入ってきたせいか姫が叫ぶながら耳を塞ぐ。
「もう、イヤ! 」
「姫様、落ち着いて下さい」
「うっさいわね! アンタまだ役を演じているのかもしれないけど、こんな状況なのにキモいんだよ!!」
ダルマの時といい今といい姫の自はこちらなのかもしれない。
姫は再びヒューズの胸に顔を埋め泣き始めた。
(姫さん、こ、こぇー……)
オカは姫に対して完全にビビったのか、当初は気に入っていたが今は恐怖でしかない様だ。
姫の機嫌をなんとかヒューズが取り再び歩き出す事にした。
「次は皆んなで周りを確認しながら歩きましょう」
正男の話を聞き各自で意識しながら歩いて行く。
そして数時間歩き続けた結果フィブの話が正しい事が証明されてしまった……。
(本当に同じ所をグルグル回っている……)
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