第14話

 オカはテント内に入ってくる朝日の光で目を覚ます。

 同じテント内に居た正男とパークは既に起きたのか寝袋は空であった。


「二人とも朝早いな……」


 眠い目を擦り、オカはテントから出る。外に出ると、まだ早朝なのか肌寒いくらいである。


「なんだ、殆どの人が起きているのか」


 すると、カリンとプルが近付いて来た。


「オカおはよー」

「オカ君おはよう」


 二人も起き抜けなのか眠そうな顔付きで挨拶してくる。


「おはようございます」


 三人で顔を洗いに井戸まで行くと何やら姫達が話しているのが聞こえる。


「キング、二人はどこにいったの?」

「ハッ、探した所見つかりませんでした。恐らく二人でそこらを歩き回っているのかと」


 どうやら、クイーンとジャックが居ないらしい。


「二人ともおはようございます」

「あら? オカ君だっけー?」

「は、はい!」


 姫に名前を覚えて貰ったのが嬉しいのかオカは顔を赤くして返事をする。


「クイーンとジャックを見なかったー?」

「い、いえ。俺は今起きたばかりなので」

「私達も見てないですね」

「二人がどうかしたの?」


 プルの質問に姫はクイーンとジャックの二人が朝から居ないことを説明している。

 それを聞いて特に焦る事もなく直ぐ見つかるとその場の全員が思った。


「三騎士としての自覚が足らんな……」

「まぁ、二人は付き合っているんだし大目に見てあげよーよ」

「姫様がそう言うのであれば」


 それから全員でご飯の準備をして食べ終わった頃になっても二人は戻って来なかった……。


 流石におかしいと言う事で全員で探す事になった。


「ふふ、二人は付き合っているって事だし色々しっぽりとしているんじゃないかい?」


 ヒューズの言葉にパークは頭を傾げる。


「しっぽり? どう言う意味だ?」

「はは、改めて質問されると困るんだけど……」


 また、姫の周りには三騎士がいない為現在はキングが側にいるのみである。そして少し後方にダルマが追従している。


「クソ……、キングとかいう奴のせいでまだ一度も話してねぇーぞ!」

「……」

「な、なんだよ!」


 近くに居たフィブに威圧する様に言うダルマだがフィブは直ぐにダルマから離れる。

 どうやらダルマに関しては二人を探す気は無いらしい。


「オカー、私達はどこ探そうか?」

「うーん、少し奥の方でも見て回ろうか」

「オカ君、私も行くわ」


 こうして、クイーンとジャックを探したが結局二人を見つける事が出来なかった……。


「うーん、参りましたね」


 正男が腕を組み頭を悩ませている。


「もう二人で先に帰ったんじゃないか?」

「確かにありえる話だが何の連絡もせずに帰るかい?」

「ヒューズさんの言う通り二人共私に黙って帰る事なんてあり得ないわ」


 悩んでも分からないとの事で、取り敢えずもう一泊して様子を見る事が決まった。

 昨日と全く同じ村内に居るはずなのだが、オカは何故か背筋に寒気を覚える。


「ま、まぁ二人共付き合っていたらしいし、先に帰っただけだよね」


 自分に言い聞かせる様に独り言を漏らすオカだが頭の隅では書き置きや無断で帰るなんて普通あり得ないよな? と考えている様だ……。


 それから日も暮れ、夜ご飯も食べ終わった頃にオカは正男と焚き火を囲んでいた。


「二人共見つかりませんでしたね」

「オカ君は二人が先に帰ったと思いますか?」


 正男はいつもの笑顔では無く、昨日プルが言った様な雰囲気を纏い表情も作り物の様に無表情であった……。


「い、いえそれは考え辛いかと……」

「ほう。それは何故ですか?」

「流石に何も言わず帰るとは考え辛くて」

「そうですね」

「正男さんは、どう思うんですか?」


 オカは早くこの場から離れたいと思っているが、流石に今立ち上がり移動するのは失礼かと思い正男に質問を投げ返した。


「私はね……だと思っているんですよ」

「え?」


 正男の言葉を聞き取れなかったオカは聞き返そうと思ったが正男の表情を見て固まる。


 その表情は先程までの無表情から次は醜悪な笑みに切り替わっていたのだ……。


 それを見てオカは言葉を失う。


「これは始まったかもしれませんね」


 ギロリと正男の目線はオカを捉えた。

 その瞬間オカは蛇に睨まれたかの様に息をする事が出来なかった……。


「……何が始まったのでしょうか?」

「ふふふははは」


 いきなりの笑いにオカは正男に対する不気味さがより一層深まり、今すぐにでも立ち上がりこの場を離れたかった。


「何がおかしいのでしょうか?」

「あぁ。ごめん、何でもないよ」


 醜悪な笑みから、また表情が変わりやっと元の正男に戻った事にオカは安堵する。

 そして先程までの不気味な雰囲気も無くなりオカは直ぐに立ち上がる。


「おや? どうされましたか?」

「す、すみませんトイレに行ってきます」

「……」


 正男は探る様にオカを見回すと、ニッコリと笑う。


「我慢していたのですね、気が回らなくてすみません」

「い、いえいえ」


 オカは後ろを一切振り向かず正男から一歩でも距離を離したいのか早々とその場から立ち去った……。


 そして正男はその後ろ姿を睨みつける様に見ている。





 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る