第35話 最終試験 ナイミアVSオリア 決着


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竜の魔導士――詳しい理由はわかっていないものの竜の力、魔術を扱うことができる特異な魔導士のことを指す。竜魔導士とも言われる。


数こそは少ないが並みの魔導士では勝つことは難しく、かつては竜の魔導士が魔導士社会で上位を占めていた。しかし、対竜魔法等の竜の魔導士に対する対抗策が発展していくと、魔導士社会で影響力は失われていった。


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ナイミアは頭が真っ白になる。

「まっまさか貴方は......」



「『ドラゴンスケイル』!」

オリアは魔力を装甲のように纏う。


「私は竜の力を持つ魔導士だ」

ナイミアは試合中にも関わらず顔を青くさせ頭を抱える。

「あぁぁぁうっうそだぁ!そんなぁ......」

思わず杖を落としてしまう。


「そうか、君がそういう反応するということは持っていないのだな?」

オリアはニヤリと笑う。

「――対竜魔法を」




魔導士試験は様々な魔導士が集まる、竜の魔導士がいることは当然頭に入れておくべきだった、だが失念していた。


「わかってた!わかってたはずなのにぃ!」


クラトスは竜の魔導士であることも知っていたのに、なぜそれを考慮していなかったのか、ナイミアは激しい後悔をしていた。


「ナイミア......といったか、どうした攻撃をしないなら、私から動くぞ?」

「っっっ!『アクア・ランス』」


ナイミアは急いで杖を拾い水の槍をオリアに撃つ。


しかし


オリアは両手を合わせ

「『ドラゴン・ストーム』」

赤い竜巻は激しい音とともにナイミアの『アクア・ランス』を飲み込みナイミアに迫る。


「ひゃっ!」

ナイミアは竜巻に巻き込まれまいと直前に避けたことでかすり傷で済んだ。


「......この力は苦手だ......」


オリアはよけられたことを意外とは思っていない様子で次の魔法の準備をしていた。





エルマはネレイアイと試合の状況を関心がないようにしながらも見ていた。


「最後まで見るまでもないね、あの男が勝つ」


つまらなそうに言うエルマに向けてネレイアイは話す。


「あら......エルマ様は未来予知ができるのかしら?」

「経験でさ、竜魔導士を相手するのに並みの魔導士ではまず無理だ、対竜魔法もなさそうだし、女の方はあの様子からして戦闘慣れすらしてないだろう。......逆に聞きたい、ネレイアイ、君はあの女が勝てると思うのかい?」

「わたくしは......」


ネレイアイは少しもったいぶって


「ふふふ......難しいかしら」

「なんだ君だって、同じじゃないか」

「わたくしが言っていたのは、勝負は最後までわからない......ということですもの......」

「......信じられないがね」



観客席ではクラトスが考えこみながら試合を見ていた。


「まずい......対竜魔導士なんて考えたことなかった......」


クラトスは自身が竜の魔導士であること深く自覚してはおらず、将来的に戦う可能性があることを完全に失念していた。


「クラトスの責任ではないだろう、現代の竜魔導士は大体が中堅どまりの扱いだ、際立った存在ではない」

「......癪だが、その通り、あの状態だと攻撃すら当たらないだろうな......」

「であろうな、完全に押されている、可能性があるとすれば、ナイミアの隠し種がまだあるか......」

「テュナート......か」



「『竜石の拳』」


オリアは両手を黒い石を纏う。


「次からは猛烈な痛みが伴う打撃を行う、覚悟はいいな?」


オリアは必要のない宣言をする、それはオリアなりのやさしさである。遠まわしに負けを認めることをすすめているのだ。


だが


ナイミアは目をつむり叫ぶように

「拒否ぃ!『アクア・レイン』」

空に向かって両手を掲げ魔法を発動する、それは会場を包むほどの大雨を降らせた。


だがオリアはお構いなくナイミアに向かう。

「――君には勝ち目はない!」


「ッッ!」

ナイミアは避けようとするが

「はあぁ!!」

「ぐぶっ!」

間に合わずナイミアの腹を殴られ勢いのまま壁に復帰飛ばされる。


「うっ......!」


ナイミアはボロボロの状態で吐血しどうにか立ち上がる、思い出すのは父の記憶、苦しい修行の記憶、とてもとても嫌だった苦々しい記憶。




―――

――




おさげ姿の女はびくびくしながら老人の前に立つ。


「さて、昨日言ったとおり、ロッククラブは倒せましたかな?」


老人の言葉に杖を抱きながら答える。


「いっいえ師匠......森でゴブリン一匹をどうにか......」


その返答に老人は目を見開きナイミアに大きな声で怒鳴る。


「そんなスピードでは到底、命は守りきれんぞ!」

「っすっすみません!」


女はペコペコしながら、謝り続けると老人は「やれやれ」と口に出す。


「......おぬしは近く魔導士を受ける、わし約束した、お前を強くする、死なせないと、そのためにもおぬしには頑張ってもらわないといかん!」

「はっはいぃ......」

「遅れを取り戻すためにもっと厳しく行くぞ!今日の課題は――」




ナイミア=ピリスは魔導士になりたくなかった。命を懸けるという行為を彼女は嫌っていた。




父親も母親も魔導協会の魔導士であった、しかし魔導協会内での激しい抗争に巻き込まれ母親を亡くした。

ナイミアは寂しそうな顔をしてベッドに横になる同じく寂しげな男と話す。

「ナイミア......すまんなぁ」

「パパ、だっ大丈夫だから、私が借金も全部返して見せる、薬だって」

「子供に迷惑をかけるだなんて父親失格だな」

「そっそんな――」


ナイミアにとって父親は唯一の家族だ。ナイミアの父親は護衛任務を主に行っていたが病に倒れてしまい、ベッドの上での生活を余儀なくさえていた。

医療費、食費何もかもをナイミアにのしかかる、お金が必要だ、お金が

ナイミアにはお金が必要だ。



ドアを叩くと男が開けた。

「またか」

お金をせがむ

「わっ悪いとは思っているんです!お願いします、お金を――」

「――お金を貸してくれ......だろう?」

ナイミアの言葉をとぎって男が話す。

「あんたのところにはもう十分貸しただろうがっ!」

「ひっ!」


ドアを思いきり閉じられた拍子に後ろへ転んでしまう。


「あぁ、どうすれば......」


そんな時だった。


「ナイミアちゃん?」

赤いスカーフをまいたおばあさんが心配そうにのぞく。

「......ポンさん?」


ポンは魔導士であり、ピリス家とは家族のように親交があったがだいぶ前に引っ越してしまい会えずじまいであった。今日は偶然仕事で通ったらしかった。

ナイミアはすがるような気持ちで自分の状態を説明した。


「そんなことが......」


ポンは少し考え、言うべきか迷う様子を見せた後

「お金が必要なのよね?簡単......ではないけど得る方法ならあるわ」

「っ!おっ教えてくださいぃ!」

「それは――」


魔導協会の魔導士になること――


「ナイミアちゃんに言うのは少し気が引けるわ、お母様の事もあったし、でも選択肢を減らす必要もないじゃない、どう?私の友人を師匠にして魔法修行すれば魔導協会の試験に挑めるくらい強くなれるかもよ?」

「そっそれは......」


協会で活躍できれば、大金は手に入る。そうすればお金の面で心配をすることはなくなる。


「魔導士......」


命を懸けて公認されて、それでも依頼中に死ぬことがある。夢のために命を捨てる覚悟、ナイミアにとって、それは理解できないことだった、なぜ見ず知らずのために命がけで働けるのか、死ぬのは怖い、死ねば何も残らない、死んでしまえば残された人はその後どうなるのか。


「考え......させてください......」


ナイミアは一度保留にして家に帰る、ボロボロな家、家具は最低限の物しかなく、ほとんどは売り払ってしまった。


「うぅぅ、どうすれば......」


椅子に座りながら頭を抱え、悩む魔導士になること、そして魔導協会への複雑な感情が彼女の心を悩ませていると



ドゴォン!!



突然の轟音にナイミアは飛び上がる。

「なっなにぃぃぃ!?」



激しい轟音が町中に響く、みなその音に驚いたのか、それぞれが窓を開けたりして外を見る。その中で誰かが叫ぶ。


「魔物だぁ!西方部に魔物」

「(まっ魔物!?なんでこんな所に......逃げないと......)」


街中での魔物は今までなかった、ナイミアは逃げる準備をする。しかし

「っ!西方部ってパパの病院!」

ナイミアは父親の入院している病院が西方部にあること思い出すと考えるより先に足が動いていた。





人々が逃げ惑う中、幾人かの魔導士が魔物のところへ向かう

「どうしてこんなところに魔物が......」

ポンは魔物除けの魔術が機能していなかった事に疑問を覚えたが、考えている暇はないと急いで現場へ向かう。

「魔物はどこに?」

ポンの質問に近くの青年が答える。

「病院のすぐ近くです!」

「病院......急ぎましょう」




病院のすぐ近くに魔物はいた。全身を真っ赤に染めた4つ足の巨大なトカゲ

「ファイアリザード......こんなところにいる魔物じゃないわね」

ポン達は何とか追いつき魔物に応戦するもダメージを与えられずにいた。


「ファイアリザード、D級かC級......今いる魔導士は良くてD級だ......今回は惨事に――」

「俺たちがあきらめてどうする!この町を守れるのは俺たちだけなんだぞ!」


魔導士が言い合っている隙をつくかのようにファイアリザードは炎を周囲にまき散らした。


「私ら魔導士はこの時のためにいるのよ!ぐずぐずしてないで命がけで命を守りなさい!」

ポンは他の魔導士達に叫びながら魔法で攻撃をする。

「『石の刃』」

ポンの『石の刃』はファイアリザードに当たるが気にする素振りをせず、魔物は辺りを探す。


「相性が悪いかしら......」

その時、突然雨が降り出した、ファイアリザードにとって雨は天敵であろう、明らかに動きが鈍くなる。

「これは一体?」

ポンが考えていると

「ポンさん!頭、下げて!」

「っ!」


後ろから聞き覚えのある声が聞こえすかさず頭を下げる、『アクア・ランス』の声と共に水の槍がファイアリザード目掛けて突き刺さる。


「グァアァ!!」


ファイアリザードはナイミアを認識したのかナイミア目掛けて体当たりをしていく。


「ひゃ!?次、どっどうすれば......」


ナイミア勢いのままに行動したためこのあとどうするかを考えてはいなかった。


ナイミアは目を瞑り我を忘れて

「『水流打』!」

杖に水色の魔力を込める。


バギッ!



思考は追いつかず、ファイアリザードが目の前に来たとき手の杖に魔力を込め杖でファイアリザードを右に思いきりたたきつけていた。


魔物は建物にたたきつけられ、事切れているようだった。




その光景を他の魔導士は茫然と眺めている。


「なっナイミアちゃん!あんたすごいじゃないかい!」


ポンは思わずナイミアに駆け寄り抱き着く。


「あんたは魔導士になるべきよ!才能があるわ!」

「へっ?一体どういう――」


ポンの突然の言葉にナイミアは困惑しながら反応する。


「そっそんなぁ、それに私がいなくなったらパパは――」

「お父様の事は心配しないで!私がどうにかしてお金を工面するわ!若い才を目の前で潰すなんて私にはできないもの!」

「お金を工面ってそれじゃ私が魔導士になる理由が――」

「あるわよ!あなたのその魔法をさらなる高みに伸ばすこと!」


畳みかけるようにポンに迫られ、ナイミアはおどおどしながらなんとか反論する。


「ぽっポンさんにお金を工面させもらうなんて、そんな悪いこと」

「なら、あなたが正規も魔導士になって返してくれればいいじゃない!?」

「それにわっ私は見ず知らずの人のために命を懸けるなんて.......そっそんな勇気、ありません」


その言葉を聞いたポンはゆっくりとナイミアを見る。


「ナイミアちゃんあなたは命がけで助けてくれたわ」

「パパがいたからです、いなかったら惨めに逃げてました」

「でもあなたのように動ける人はほとんどいない、大体がナイミアちゃんみたいに強いわけではないから」

「わっ私は強くありません、魔法の力もないです」


「ほっほっほ、謙遜しすぎじゃないかね」


ナイミアが話ている途中から言葉をはさんできた、ナイミアは振り返ると後ろからおじいさんが緑色のワイバーンから降りてきた、杖を持ち腰を曲げている。


「?」

「トンネさん!」

ナイミアは不思議そうにみるとポンは驚きながらナイミアに紹介する。


「この方はトンネ=ティアン、魔導協会Bランクの魔導士様よ」

「これ、やめんかB級でそんな扱いされても虚しいだけじゃ」


ポンはトンネと言う老人にナイミアを紹介した。

「ふーむ、ナイミアよ、おぬしの力は並みの人よりは強い、力で負ける、というがおぬしは物事を悲観する体質が魔法にまで影響しておるわ」

「うっうぅ......」

「ナイミア、わしの元で修行してみないか?」


ナイミアは迷う、命を懸けていいのだろうか


「わっ私は、強くなれますか?」

「わしが補償する、おぬしは強い、強くなる、これくらいわかるんじゃ」


ナイミアは決心した。

「わっわかりました、トンネさん、私修行します」




その日からナイミアはトンネの元で修行した、父親はポンのおかげで当面は問題はなくなったが、ナイミアは先を見越してお金をより集めるため魔導協会で成り上がりたいと心に決めることとなる。



―――

――



ナイミアは過去を思い出す中、苦々しい記憶でも無駄ではなかったとも思いなおす、そして形勢逆転のチャンスはまだかすかに残っていることも思い出す。


オリアはボロボロのナイミアに追撃を加えようとする。

「これで終わりだぁ!」

ナイミアは相手を見る、隙をつく、この技が成功すれば勝てるもしれない、しかし一度だけ、外せばもう相手は接近戦をしなくなる、なら遠距離の火力でも勝てていないナイミアの敗北は確定する。


歯ぎしりをする、杖を持つ手は汗がでる、早すぎてもだめ、遅すぎたら痛い目にあう。


「(ナイミア......集中集中)」

相手に怪しまれないように平然を装う。

オリアの両手の巨石には威圧感を覚えるが冷静に相手が近づいてきてギリギリを狙う。


来る


―来る


――来る


来た!!


「おらぁ!」オリアの渾身の一撃がオリアの右腕から放たれる瞬間――

「『水流打』」ナイミアは杖の先に魔力を込め――

「おりゃゃぁ!!死ねぇ!!」それをオリアの顔面に――


バギギイ!!


恐ろしい轟音が会場に響く。


「カハッ!」

オリアは一瞬白目をむき仰け反るが

「っ!」ガシッ

体制を両足でしっかりと抑え立て直し崩れかけた岩の右拳に力を込めてもう一度ナイミアに殴りかかる。

「っっ!『水流打』」

ナイミアはさらなる攻撃で今度はオリアの右腕に杖をたたきつける。


バリ!


「ひゃぁ!」


オリアはの右腕は鈍い音をしたものの力負けしたナイミアは大きく左側へ吹き飛ばさえてしまう。


「まさかっこんなっ!」


オリアは動揺する、これは誰から見てもナイミアの今の一連の攻撃は致命傷にであった。オリア自身も竜の力を開放したにも関わらずここまでダメージを受けるとは思ってもみなかった。


「なっなぜだ......」


ナイミアの降らせた大雨の中オリアは思考する。




エルマは今の一覧の出来事を食いつくようにみていた


「女の杖攻撃は対竜魔法か」


エルマはナイミアの事を感心したと同時にオリアの行動は浅はかであったことも同時に思った。


「ふふふ......すごいあの娘、いよいよ勝負はわからなくなってきたわ......」

「悔しいけど、ネレイアイの通りになったね、男も女の魔導士も体力は残りわずかだ」


「次ですべて決まるだろう」



オリアは接近戦は危険と判断して遠距離での攻略にうつる。

「近づかなければいいことだ『ドラゴンストーム』」

竜巻はナイミアに向かって突っ込んでいく。


「『アクア・ランス』『アクア・ランス』『アクア・ランス』」


いくつもの水の槍がオリアの元に飛んでいく。


「そんな攻撃、避けて――」


オリアは避けようとするが、『水流打』のダメージ、そして

「地面がぬかるんでいる......だと!?」

バシャン!


足元をつかまれたことで転んでしまう。


「くそ舐めるなぁ!『ドラゴンスケイル』」

オリアは地面から立ち上がる隙をなくすため『ドラゴンスケイル』で魔力の装甲を作りナイミアの魔法防ぐ。




「いっ行きますよぉ!」

ナイミアは転んだオリアに走っていく、ナイミアは確信している、次の攻撃が決まれば勝てると、そしてその攻撃は今、この瞬間しかないことも。

「師匠、パパ、お願い!」

今のナイミアには悲観的なところはない、勝利への確信を胸にオリアの元へ走る。




「まずい、まずい!」

オリアは魔力の装甲では『水流打』には抵抗できないことはなんとなくだが理解できていた、だが近接攻撃である、最後の最後絶対的なチャンスがオリアには生まれる。

「だが、この反撃で勝利は確定する」



そしてナイミアはオリアの前に到着、ナイミアは警戒しながら杖に魔力を込める。

「『水流打』」杖でオリアに殴りかかろうとした瞬間――

「『相殺の土煙』」

「っ!?」

オリアの辺りを風が包み始める、ナイミアは吹き飛ばされそうになる。

その隙にオリアは立ち上がり。

「さぁ、これで終わりだ!『ロック・ブラスト』」

隙をつく形でオリアの魔法が打たれる。

「『水流打』」

「遅い!」

『水流打』を叩きこむ。




バアァアアン!!




激しい爆風と共に立っていたのは――




「ぐばばあぁ......」

オリアは吐血しそのまま倒れこむ。



「ひぃ......ひぃ」

ナイミアは杖を抱きながらフラフラな状態である。



しかし



立っていた。




エルマは会場の中央に駆けてゆく――



そして――




「Bの7の試合の勝者はナイミア=ピリスだ!」

「うおぉぉぉぉ」



観客は歓声を上げる中ナイミアはいまだに理解が追い付いていない様子で茫然と立ち尽くしていた。


「私......勝ったんです?」


ナイミアは実感してくると徐々に頭が真っ白になっていき。



バタン


ナイミアは倒れこんでしまい、そのままオリアと共に医務室へ運ばれることとなった。





クラトスは当事者でもないにも関わらず、ぐだっと椅子の背もたれに倒れこんでいた。

「心臓に悪い」

「我もだ......」


そんな中アリスはニコニコとしながら、

「すごかったわねナイミア!あんなに強いなんて知らなかった」

とクラトスに問いかける。


「そうだな」

「ねぇクラトス」

アリスはまた何かを聞きたそうににっこりしながら聞いてくる。


「なんだ?」

「そういえば、グラデルってどこにいるの?」


その言葉を聞いた瞬間クラトスはじっとして動かず、何も言わなかった。


「......ガルフ」

「我に振るな、知らん」

「まさか、誰も知らないのか?」

「グラデルは子供ではないからな、いちいち気にはせんだろう」

「そらそうか、ナイミアの見舞いしたら一応探してみるか?」

「はぁい、賛成!」


こうしてクラトスはグラデルの行方を捜してみることしたのだった。






◆◇◆◇


???


「おーい、誰か、開けていただけないか!?」

銀色の鎧に金の髪、金の髭の男が叫ぶ。

「誰かいなのかぁ!?」

にこやかにしながらどうしたものかと困った様子である。

「はっはっはっ、いやぁーまいった、まいった。ドネイやナイミアの試合、楽しみにしていたのにこれではな!!ご丁寧に魔封じの鎖もつないでなぁ!」

グラデル=トロンダである。

「誰か、聞こえているか!私の名はグラデル=トロンダ!グラデル=トロンダ!もう一度言うぞ!グラデル=トロンダ。もう一回言うぞ!グラデ――」

「うるせぇ!黙ってろ!」

「黙ってろとはまた手厳しいな!はっはっはっはっ!」



続く――

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