第24話 対戦相手の取り決め
某所
水色の妖精ネレイアイと茶色の紳士服の男がテーブルで向き合いながら話をしているようであった、男にはちょび髭が生やしてあった。
「私にお願いとはね、なんだかわいいじゃないか」
「ふふふ......お願い?......いいえ」
「?」
ネレイアイは男に顔を近づける。
「これは命令よ?」
「......」
ネレイアイに対して怪しげにほほ笑む男。
「ふふふ......どうする?」
「どうしようかなぁ」
男はにこやかに対応する。
「......冗談」
「んもぉ、勘弁してチョーダイ!心臓に悪い!」
その言葉を聞いた瞬間にさっきまでの雰囲気は嘘のように大きく笑う。
「まだそんなお年でもないのに?」
「いやいや、私は人間だからね、に・ん・げ・ん、60を過ぎれば不安もある」
「ふふふ、そんな70過ぎても怪物な人間なんて沢山いるわ......寂しくなるようなこと言わないで欲しいのに......」
ネレイアイは少し悲し気な顔をするが男は構わずに話す。
「いや残念だが時は残酷なり、ネレイアイは流れた過去よりこれから来る未来を見るべきだヨ~」
「そうね......時は残酷......ふふふ、じゃ老いぼれおじい様にお願いがあるの......」
「ひどい言い方!」
「お願いはね......オネロ家について......」
オネロという名前を聞いた瞬間、男はにこやかで和やかな空気から一変して固い表情となる。
「君からオネロなんて名前が出るとはね、知っているとは思うがオネロ家はかつて20年前までポデュンノ家と対を成していた名家だ、イオブ戦争後に没落の一途を辿っていったけど」
「アリス=オネロという方は?」
「いや、知らないね、そもそもあそこの家に子供がいるということが初耳だ」
どうやらその男はオネロ家の現状には詳しくないようであった、ネレイアイは少し残念そうな顔をする。
「そう......実は今年の試験にそのアリス=オネロという方がいるの......」
「なぜ君が興味を?」
「アリスという方、第1次試験で魔導師達を殺しまくったらしいわ......、それにわたくしが調べた限り御兄弟は少なくとも5人はいる......、そんなにいれば一人くらいは現在の身元の把握はできるはずなのに......」
その男は考え込むとネレイアイに聞く。
「......アリスという者には何かあると?」
「そう......」
「それは......個人的な感情ではないね?」
「ふふふ......」
男はネレイアイに個人的な感情はあるのかと聞くとネレイアイはそれをはぐらかすかのように怪しく微笑んだ、そして黄色い羽を大きく広げようとすると――
「あぁ、ナシナシ!それはナシ!ネレイアイったら昔と変わらない!」
「ふふふ、貴方も変わらないわ......ゲライト様......」
紳士服の男はゲライトと呼ばれた、ゲライトはネレイアイが行動に移す前にどうにか押し止めた
「とりあえずオネロ家を探ればいいのかね?」
「えぇ、ふふふ......それにね、ゲライト様......」
「ん?」
「この件は個人的な感情では済まないわよ?......私の勘が外れていなければだけど......」
ネレイアイの言葉にゲライトは苦笑いする。
「なんか厄介ごと頼まれてる気がするナー」
「あら......いつもの事ね」
先ほどまでの固い空気はいつの間にか消えていた。
「そもそも試験会場に行かなくてよかったのかな?私に依頼なんていつでもできただろうに、こんなおじさんと一緒で......あっわかった私にいち早く会いたくなっちゃったとか......いやぁモテ男はつらいナァ」
「まぁ、わたくしが目立つの嫌う事は知っているはずなのに......いじわるはメッ、よ?」
「いじわるっ!?」
「ふふふ......」
ネレイアイとゲライトが会話を楽しんでいるのと同じころ――
◆◇◆◇
アーシア試験会場では
クラトスとゼオスの過去に何があったのかをガルフは聞こうとしたものの心当たりはないというクラトスにガルフは聞きだすのを諦める。
ゼオスが観客席で暴れそうになっているところをナシアーデ達魔導師が抑え込んでいる間エルマは最終試験の説明を続けていた。
「何やら観客席の魔導師達が揉めていた様だが......大丈夫なようだね......では続きの話をさせていただくよ、今回の試験の順番についてだ」
エルマは上空に光の玉を浮かべるとそれぞれの魔導師の頭の中にその光の玉を飛ばした。
ガルフとグラデルの頭の中に光の玉が入る
「ぬっ、これは?」
「おおお!なんか不思議だ面白い!」
続いてラナとドネイ、ナイミアに光の玉が入る。
「ッ!映像が......」
「おっおお、すげぇや」
「ひいいい、怖そうな人!」
次にクラトスとアリスの頭に光の玉が入る。
「(......なんだこれは......頭に人......アリスの顔が......)」
「わぁ、頭の中にクラトスが見えるわ!」
頭の中に入り込んだ光の玉は魔導師達の頭に映像を浮かばせていた。
「いきなりで驚いているだろうがね、その頭の中の魔導師が君達が戦う対戦相手だよ」
「っ!?」
その言葉にクラトスは驚く。
「え?......」
アリスはまだ理解をしていないようであった。
「なっクラトスが見たのはアリスなのか!?」
「ひいい、じゃっじゃあ、クラトスさんはアリスさんと......」
「ああ、そういうことになるな......」
「まじかよ、そんなこと......」
ガルフとナイミア、ドネイはクラトスに本当にアリスであったか聞いてみるが間違いないとのことだ、
「アリスちゃん......クラトスさんが見えたの......?」
「......そう、クラトスが見えたわ」
「......まさか仲間同士で戦い合うとはな、可能性としてはないとは言えなかったとはいえ、こんな......」
ラナとグラデルはアリスに聞くがクラトスであったらしい。
クラトス達が困惑をしている中でもエルマは話を続ける。
「さぁて、何も見えなかったという魔導師がいたら挙手を......うんいないようだ、では戦う順番だが、それも映像で流れただろう?、1が明日2が明後日で3が3日後という流れだ、第1戦は10時から一度の戦闘時間は1時間、戦闘の合間に少し休憩を挟みまた1時間というのを繰り返す予定だ、何か質問は?」
エルマは辺りを見渡すと......。
「質問だ!」
「ん?ああ君はクラトスだね」
クラトスはアリスとなぜ戦うのかが疑問であった。
「俺とアリスが同格とは思えない!」
「しかしだね、確かにアリスと君は
「そんな......」
「あきらめなさい、なぁに敗者復活戦もある、気にするな、他に質問はあるかい?」
エルマは淡々と進める。
「うん、なさそうだね、それと日付の後は戦う順番なんだが、それは当日に戦う者だけで決めることにするよ」
エルマは満足げに笑う。
「ふぅでは、僕は休ませてもらう、何か質問があれば此処アーシア試験会場に来てくれ、仮に僕が出なくても他の試験官が対処してくれるだろう、それでは君達の健闘を祈る」
そう言ってエルマはそそくさとこの場から離れて行った。
その場に残された魔導師達もぞろぞろと帰っていく。
「そういえば皆はいつ戦うんだ?」
クラトスは他の皆がいつ戦うのかを聞いた。
「私は明日よ」
「私も明日だ!」
ラナとグラデルは明日の様だ
「俺は明後日だぜ!」
「私も明後日でしたぁ」
ドネイとナイミアは明後日そして
「我は3日後だ」
ガルフは3日後
「俺......アリスも3日後だな」
クラトスはアリスの方を見るが、アリスはうつむいたままであった。
「よし!みんなとりあえずここから離れよう!疲れただろう、特に何もしてはいないが!」
「あっあわ、そうですね!休みましょう!明日なんてラナさんとグラデルさんですよ!疲れて負けるとかお話になりませんものねぇ!」
「負けるとか縁起でもねぇこというなナイミア!」
グラデルとナイミア、ドネイが率先するようしてに会場を後にする。
最終試験の日付と対戦相手は決まり、それぞれの魔導師は様々な思いを抱きながら己が戦う日までを気長に時を終えるのだろう。
クラトスはアリスと戦う事になってしまった、せっかく仲良くなれたのに......そんな感情が渦巻く、この先どうなっていくのだろうか――
続く
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最終試験 日付
明日 ラナ グラデル
明後日 ドネイ ナイミア
三日後 ガルフ アリス クラトス
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