魔導師クラトスは最高な魔導師を志す!

村日星成

序章

第1話 ある運命的な出会い  

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魔導師――それは魔力を操りあらゆる困難に挑み解決する者。


一級の魔導師ともなれば小国の国家予算は容易く稼ぐ――

ある者は富、ある者は名声、ある者は浪漫――

夢を現実のものとするために魔導師を目指す者はいつの世も現れる――


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スタルの森


森の中で剣を鞘にしまいながら移動する男が一人いる。



「......」


俺は森で大型の魔物を探していたなぜなら依頼主に頼まれたためだ。

魔物が作物を荒らしどうにもならないとのこと。


「ガルフがいれば探知範囲も広いんだがなぁ」


ガルフは魔力の探知が得意だが、今回は急用ということでいけなくなり。

俺一人で依頼をこなす羽目になった。


「イノシシ型の魔物らしいが――」


ザザッ


ッ!


森の茂みから音が聞こえ後ろに飛ぶ、もしかしたら対象の魔物かもしれない。


剣を出して構えていると――


「あれっ?」


茂みからひょっこりと現れたのは杏子色をしたミディアムヘアー後ろ髪が大きめにはねた少女。


俺の知り合いだった。


「なっナシア?」


ナシアーデ=パナケ、昔はよく一緒につるんだり魔法の修行をしていたが最近は会えていなかった。


「あっクラトスじゃない!」

「久しぶりだな」


......ナシアがこんなところにいるということは。


「仕事か?」

「そうよここで魔物の被害があるらしいから」


ナシアは魔導協会公認の魔導師として現在働いている。

基本的に魔導師協会から公認された魔導師が正規の魔導師として扱われる。


「ねぇクラトス、あなたもまさか依頼で......」

「まっまぁ.....」

ついつい横目を向いてしまう。

「どこかギルドには?」

「......個人だ」

その瞬間口を大きく開け、大声で怒鳴ってきた。

「だめよ!あんた正規じゃないんだからやばい依頼頼まれちゃったらどうするの!」

「そんなに怒るなって!」

「怒るに決まってるでしょ!!」


ナシアが注意してくるのも久しぶりだな。そしてこうやって注意してくるのも当然だ、非公認の魔導師はギルドへの所属も難しいし個人でやっていくにも依頼主には信用されにく依頼されることは少ない。故に魔導師は金を稼ぐために違法薬物の配達や殺し等々裏社会にどっぷりつかって最終的には闇ギルドに入っているか死んでいるか......。ナシアは俺を心配してここまで言ってくれている。


「だけど俺は非正規として実力つけて信用もされてきてるんだぜ?依頼もぼちぼち頼まれてるしな」

「信用されてなかったから私たち正規の魔導師が此処にいるんでしょうが......」

「あー......そうか」


あの依頼主め......だったら最初から協会に頼んでおけ。ん?私


「私たちってナシア以外にも?」

「そうよ?今魔物を探し――」


バァァァン!!


激しい光と共に大きな爆発と共に爆風は木々を大きく揺らしながら衝撃波が飛んでくる、ナシアは衝撃波と共に俺の方へと吹き飛ばされてくる。


「きゃああ」

「おっと」


ナシアが吹き飛ばされていきそうになったナシアの服をつかみ、爆風がやむとそっと放した。


「......ありがとう」

「今のは......魔法か」

「きっとエセルさんの魔法ね」

「エセル......」


爆風を起こしたのがそいつの魔法か......相当魔力をもってるな。


「折角だから、行きましょクラトス」

「そうだな、どんな奴か見てみたい」


幸いここから遠くない場所だ、俺たちはさっきの爆発の場所に歩いて向かう。

森が開けた場所には白髪の男が大きなクレーターの近くに立っていた。


「あっエセルさん、もう終わったのですね!」


ナシアが走ってエセルと呼ばれる男に走って行く、俺はそんなナシアについて行くように歩いて向かう。


「あれがエセルか......」



白髪に青い瞳をした青年が立っていた。俺にはわかったこいつは俺よりも強いことを、近づく度に感じる強い向かい風に立ち向かうような感覚は魔力圧。魔力圧は俺を拒むように強まる。恐らく奴は俺の事が嫌いだな理由は知らんが。


だがな、俺は負けず嫌いなんだ、そうやって露骨に圧を加えられたら余計に燃え上がる。


ナシアには影響がないようだな、特定域に集中して魔力圧を飛ばすということは技量もかなりあるのか......。


一歩一歩、ナシアは本来魔力感知は得意なはずなのにな......。


何事もないように澄ました顔でナシアについて行き、エセルと向かい合う。


「お前がエセルか」

「......その男は?」

「私の友達です、偶然出会いまして」

「......名前はクラトス=ドラレウスだ」


エセルに対する何とも言えない不快感を俺は感じていた、何なのかがわからないな。


「公認されている魔導師ではないな?」

「そうだが」

「ナシアーデ=パナケ、君はこの男を見て何も思わないのか?」

「久しぶりに出会えたとは思いました......けど?」


エセルが今度はナシアに睨みつけるとナシアは少しずつ後ろに下がっていく。


「......この男は魔道協会が認めた魔導師ではないということにだ」

「そ......それはもちろん注意しました、危険な目に合う可能性がありますし」

「危険な目に合うのは......誰がだ?」


ナシア返答には気を付けろよこいつは――

「えっ?非正規の魔導師が――」


まずい。


「違う」

「へ?」

「危険な目に合うのは非正規のやつらではない、依頼主でありその家族でありその人達に関わっている人達だ、非正規な魔導師を信用した依頼主は家に魔導師を上がりこませれば最後、金目の者は奪われ、女はその尊厳を徹底的に踏みつぶされ、男は殺されるか奴隷商に売られるかだ、我々そのような屑を本来は許してはいけないはずなのだそれもこれも現在の魔道協会のトップが甘いからだ次の魔道協会会長を決める際にはこのような現状を打破する存在を選ぶべきで――」


感情的に早口で話し始めたこいつやばい奴だ。


「すっすみません!」

「ふぅ......君は優しすぎるみたいだね、魔導師としては少々問題ありかな」


こいつ......ナシアを殺す気でいやがる。


「魔導師は時に非情になるべきだ、そしてね......」

「エセルさん......どっどうして腕を私に向けて......」


エセルに勝てる可能性なんて微塵も感じないが――


「甘い優しいそんな魔導師にはね......それを教え込んで――」


お前の腕を切り落とす。

「――竜切断!」

「ッ!」


俺から注意を放してくれたおかげで剣に魔力を注ぎ込むことができた。


エセルの腕に目掛けて剣で一閃するが、エセルは寸前の所で避ける。そしてナシアに向けて放とうとしていた魔法を俺に向けて放ってきた。


「『ブラスト・レイ』」


腕から猛烈なる光が放たれ、俺は横によけて、そのままエセルに突っ込み剣で切りかかる。


「お前!ナシアを殺す気だったよなぁ!?」

エセルは剣を避けると、俺に向けて魔法の準備を始める。

「殺す気はなかった、結果どうなるかは知らないが」


エセルの魔法が俺に放たれる。

「『ブラスト・レイ』」

放たれた魔法に対し、俺も魔法を両手を地面につけて行使する。

「『ドラグーン・シールド』」

竜の紋章が描かれた壁を地面から展開させてゼルの魔法を防ぐ。


「『ドラゴン・スケイル』」

俺に身体強化魔法を付与する。


「......竜の力か」

エセルが少し考え込んでる隙に近づく、俺とエセルなら断然奴の方が強い。だから短期決戦でできるだけ多くダメージを与えておきたいが――


グサッ


光の剣が俺の腹を突き刺さる。


「なっ」

何が起きたのかドラゴン・スケイルを貫通しただと......。


片膝を落して腹を抑える。


「竜殺しの魔法『竜殺の剣』だ。竜の力を使うんなら対竜魔法くらい警戒してないとだめだね」


対竜魔法は確かに警戒すべきだっただろうがな、お前相手にその余裕はなかったんだよ畜生。


ナシアは大丈夫か?俺はナシアの方を見てみると。


「っ!」

ナシアは口を塞いで目を丸くして今にも泣きそうだ、だが何も口には出すな、エセルはもうお前に興味を失っているはずだ。


「まぁ、少し驚かされた、でもこの程度」


俺に近づいてくるエセル。


俺の人生、もう終わるのかこんな奴に負けて......。


光が俺の近くで輝きだす。


「さようなら『ブラスト・れ――」




「待てっ!!」




突如現れたのは黒髪の男と赤いローブにフードを深く被った少女だった、いろいろ集まって来やがったな。


「......何だ?」

「エセル......何をしようとしていた!」

「敵対者の排除だよ」


黒髪の男がエセルに対して話しかけると今度はローブの少女が強い口調で話しかける。


「エセル=ポデュンノ、お前はまた仲間に手を出したようだな、この事は協会にも伝えておく。それなりの処罰は覚悟しておけ」

エセルはナシアの方を見る。

「ナシアーデ=パナケ......僕が戦っている時に連絡していたのか」

「......」


エセルはナシアを睨みつけるが先ほどのような覇気はない。ナシアは下を向いたままでいる。


「納得いかないね、僕は常に人々の安寧を願っているのに」

「口が減らないな黙っていろ」


ローブの少女はエセルに何やら魔法をかけたことでエセルの声は何も聞こえなくなり紫色の首輪をつけられるとエセルも諦めたようで不服そうに腕を組んだ。


「クラトス!」


ナシアは走ってくると俺の腹に回復魔法をかける。


「クラトス、ごめんね私の所為で......」

「ダサい所を見せたな」


ナシアと話していると黒髪の男が近づいてきた。


「僕の名前はアネル=ハトルア。この度はご迷惑をおかけしてすみません」

「俺じゃなくてナシアに謝ってほしいな」

「わっ私のことは良いわよ」


ナシアは俺に首を振るが男はナシアの方を向ける。


「いや彼の言う通りだ、ナシア―デもごめんね。エセルと一緒に行かせる魔導師についてはもっと考えておくべきだったよ」

「わざわざ謝らなくてもいいよアネル」


ローブの少女がエセルを引っ張りながら俺たちの方へ来る


「......話は終わったか?帰るぞ。依頼は完了したようだからナシアーデも」

「うん、そうだね。では僕はこれにて」

「少し待ってください!クラトスこれ」


ナシアは何やら紙を俺に渡してきた。


「これは?」

「私今回の戦い見てて思ったけど、クラトスにはやっぱり公認魔導師になってほしいわ。だから一応試験を受けるための用紙を渡しておく、ガルフは大変だろうけど一応は誘ってあげて?」

「......考えておく」

「4年前の試験でのことが気まずくて避けてきてたのかもしれないけど。私の所為でクラトスが試験に行かないのはいやよ?......それにクラトスの夢は――」

「ナシアいつまでガキの頃を引きずってやがる」


俺はナシアが言おうとし事がわかり話を止めた。


「......わかったわ、また会おうね」

「そうだな」


ナシアは少し悲しげに微笑むとアネルとローブの少女の元まで歩いて行き、ナシア達は去っていく。



最後に森の中へ入っていく時ナシアが振り向いて手を振っててきただから俺も振り返す。



「......」


森の中には誰もいない、さっきまであんなに騒がしかったのにな。


「依頼主には......会う必要ないな」


正規の魔導師と非正規の魔導師が報酬を巡り競い合うと大体正規側が勝つ。それに今回はあっちの手柄だしな。


「帰るか......」


ナシアが言おうとしていたこと......俺は金持ちにもなりたいし女にもモテたい。

だが俺の夢......ガキの頃の夢。


「最高な魔導師になりたい......だったか」


何をもって最高なのかもなんで最強ではないのかも覚えてはいないが、よくある子供の夢、俺はいつもそう願ってたんだよな......。昔ナシアを妹分として扱ってたからな、きっとその時のことを覚えていたんだろう。


「ナシアは妹分扱いにいつも不服そうだったな」


昔を思い出して少しにやけるだが過去の思い出に浸ると虚しさが残る、だから思い出さないようにしていた。


「最高か、なんだ最高って......最強じゃないのか?」

俺は昔なんでこんな夢を願っていたのか考えていると――


「誰か助けてっ!!」

っ!

近くか!


急いで悲鳴の方角へ走る。


あぁ今日はいろいろあるな!



◆◇◆◇


友達の家から帰る近道に森を選んだのは失敗だった。


「あっあっ」


僕の2倍くらいの体格をしたイノシシの魔物が僕の目の前にいる。


「グルルル」


巨大な牙に鋭い眼光は僕を狙っている。


どうしよう殺されるのかな。


「ガァァアァ!」


すごい勢いで走ってきた。


「いっいやだ!『ファイアー・ボール』」


僕の腕から放たれた炎の玉はイノシシの右目に当たって怯む。

「グバァ」

「よっよし」


今のうちに逃げて、


「グルル」


もう立ち上がってる!やばい


「グウウ」


イノシシはうなると蒸気が溢れてきていた。そして――


「ガアアアアア!!」

「誰か助けてえぇぇぇぇぇ!!」


大声で叫ぶ。


きっと助からない、ごめん母さん父さん僕――


瞬間――


「サンダー・ブレイドぉぉ!」

雷の刃がイノシシの体に突っ込まれた。


「えっ」


目の前の男は刃を突きさしていると剣を右手に持ったまま今度は左手で――

「『ドラゴン・クロウ』!」

左手は竜の爪のような魔力を纏うとイノシシの体を引き裂く。


「すっすごい......」


あんなにでかくて強そうな魔物を一人で......


「『ドラゴンブレス』!」

赤黒いブレスを口から放射すると、イノシシは大木に吹き飛ばされ動かなくなった。


「わぁぁぁ」

初めて魔導師の戦いを見た、戦いといっても一方的だったでもでも!


「ふぅぅ、おーい大丈夫か?」


男の人は僕に近づいてくる!


「助けていただきありがとうございます!あっあの魔導師ですか!?」

「そうだな......協会から公認されていない所謂非正規の魔導師だな」

「すっすごいです!」


正規だとか非正規だとか関係ない!


「おいおい、すごい喜びようだな」

「初めて魔導師の戦い見ましたから!」

「ははは、そうかそうか」

「最高です!僕も貴方みたいな魔導師になりたいです!」

「っ!」


◆◇◆◇


「最高です、僕も貴方みたいな魔導師になりたいです!」

「っ!」


その言葉に衝撃を受け何かを思い出しそうになる。俺は誰かに憧れてたのか?

頭をグルグル回転させるが思い出せない。


「あっあの?」

「おっとすまんすまん、怪我は......なさそうだな」

「お名前を伺っても?」

「クラトス=ドラレウスだ」

「クラトスさんですね、僕はマルコ=ウィンです」


ウィン?どっかで......そういえば......あの魔物はおそらく今回の依頼の対象だったな、ナシアの依頼とは違ったってことか。


「ここからスタル市までどれくらいかかる?」

「スタル市ですか?ここから真っ直ぐ行けばすぐにです」


指で指した方角に行けばいいってことか。


「スタル市に用事が?」

「あぁ依頼の獲物は倒したからな」

「僕スタル市から来たのでついて行っても?」

「ああ、危ないから家まで送ってやる」




マルコをスタル市まで送り届けることにした。




スタル市


「父さん!魔導師のクラトスさんが助けてくれたんだ!」


まさかマルコの父親が依頼主だったとは......。


「クラトスさん、息子を助けてくれたとかで本当にありがとうございます」

「いやー本当よかったです」


ギリギリだったし良かった。


「今回は魔物退治の報酬に色を付けておきました」

「いっいいんですか?」

「息子を助けてくれたお礼です」

「ありがとうございます!」


貰うもん貰ったしそろそろ帰るか。


「ではそろそろ......」

「クラトスさん!また会いにきてね?」

「あぁ、機会があったらな」


俺は最後にお礼を言って屋敷を出る。




「家まで結構かかるな......」


今日は色々あった、ナシアに再開して、エセルには負けてそして――

マルコお前は俺に童心を思い出させてくれた。


忘れかけてた夢。


「......」


正直今も叶うかどうかわからない最高な魔導師を目指す夢。


「夢を叶えるために頑張るか......」


夢を実現するための一歩として。


「魔導師試験......受けてみるか......」




偶然......ナシアに再開し、エセルに負け、ナシアとマルコに夢を思い出さされた。

偶然だった、そして今日俺にとって運命的な出会いが連続して起きた日だった。



「......ガルフも誘うか」



俺はきっと今日という日を忘れない、この運命的な日を――。



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魔導師――それは魔力を操りあらゆる困難に挑み解決する者。


一級の魔導師ともなれば小国の国家予算は容易く稼ぐ――

ある者は富、ある者は名声、ある者は浪漫――

夢を現実のものとするために魔導師を目指す者はいつの世も現れる――



名をクラトス=ドラレウス。この者もまたそんな魔導師の一人。

かつては最高な魔導師を目指すと夢想し夢を諦めた者。


しかし夢を諦めるに諦めきれずまた目指す者――

名をクラトス=ドラレウス。夢を現実のものとするべく志す者。


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