眠れない私達の変奏曲

甘蜘蛛

プロローグ

 星々は燦燦さんさんと輝き、月光が地上を優しく照らしていた。

 世界を暗闇のベールが包み、星々の姿を鮮明せんめいに映し出す夜が到来したのだ。夜が日光の暖かさを伝え、そして星や月のあわい輝きの悲しさを物語る。その悲しみに応えるように、夜を迎えると世界はしのぶように沈黙する。静寂せいじゃくが尾を引くように駆けまわる。

 そんな悲しみに満ちた世界をうれうのではなく、意気揚々いきようようと舞う不思議なちょうが地上に姿を表していた。

 微睡まどろむような夜という舞台で、悲哀ひあいと静寂を語り部に変え無邪気に舞い踊る。その姿を見つめるのは、星々と月光————そしてふさぎ込んでいた旅人のみ。

 世界には今も神秘しんぴで満ちあふれているが、出会いもその一つとして今も人々に親しまれている。

 

 

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