自分の中にあるもの
緋那真意
第1話 発端〜停滞
自分が初めて小説を書きたいと思ったのは、小学校5年生くらいの時だったと思う。
当時から作文を書くことだけには自信があって、実際何かの読書感想文コンクールで佳作を受賞したようなこともあったし、他のことは駄目でも文章を書くことは人並みより上だと自分でも思っていたから、そうした中で最も人に読まれる文章を書いてみたいと思うのは自然なことであったかも知れない。
ただ、当時はまだ長い物語を構成するだけの思考能力がなく、より平易に創作できる短歌や俳句、詩の創作の方に力点がかかっていたので、小説を本気で書くところまでは中々行かなかった。
初めて完全に人に読んでもらうための小説作品を作ったのは、そこから時を経て大学生時代の話になる。当時はラノベ業界が盛り上がりを見せ始めた草創期に当たり、実際中学から高校の頃には今も現役で活躍している大物作家さんが次々デビューを果たしていて、そういう人達の活躍を見て自分も作家に、と妄想たくましかった当時の自分は思ったものだった。
しかし、そこで壁にぶち当たった。いざ書こうとすると、全然中身のある文章がかけないのである。設定を練ったりプロットを考えたりと基本的な工程は踏まえた上で書こうとするのだけど、書けない。要点と要点の間が繋がらない。間が持たない。キャラクターを活かせない。基本的なところが完全に崩壊していたのだ。
今から見て、当時の自分の欠陥を考えると、一番問題だと思うのはアイデアが先行しすぎていて、物語を展開させるに足るだけの「地の文章力」があまりにも不足していたのだと思う。そのキャラを自分たらしめる説明力が無く、個性や性格がいきなりポツンとあるだけでストーリーを形作れない。
いや、そもそもどういうストーリーを書きたいのか、何をその物語で語りたいのか、そこからしてからっぽだったのだと思う。自分の中にどうしても人に語りたい、そう思えるストーリーが何もなかったのだ。それでは人に読ませる小説など書けるはずもない
「面白いキャラを作れば物語も自然とできる」みたいな甘い考えを持っていた自分はそこで一度完全に行き詰まってしまった。
自分には本格的な小説は書けないのではないか。
短い読み物をいくつか書きつつも、自分の中で納得出来る作品を創り上げることが出来ず、そこから創作活動は10年以上の長きに渡り停滞することになる。
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