第124話

 酔鬼を見据えているハヤテは構えを取り、影に覆われる酔鬼の様子を伺う。その伺ってる状態のハヤテの真下では、茜が建物の階段を降りている最中だった。


 「はぁ、はぁ……」


 階段を降りた先には扉があり、茜はその扉から出て行った。するとそこには、瓦礫に埋もれた狂鬼と杏嘉、そして煙管を咥えている綾の姿があった。

 様子を見ていると、彼女たちを覆っている雰囲気は不完全燃焼のような空気感だ。茜はそんな様子を眺めている視線に気付いたのか、狂鬼は逆さまになりながら言った。


 「……茜姉さん、無事だったのか」

 「あ、えっと、狂鬼……ちゃん?だっけ」

 「ちゃん!?あぁ、茜姉さん、今人間か。……はぁ、ややこしいなぁ」


 狂鬼は面倒そうだと思いながら、溜息混じりにそう言った。その様子を見ていた杏嘉と綾は、肩を竦めながら互いに顔を見合わせる。やがて上の様子を見つつ、綾は煙管を口から離した。


 「さて、ワシを含めて全員集まったのう」

 「本当に全員か?オレの記憶じゃ、烏みてぇな奴が居た気がするんだが?」

 「烏丸は屋敷に撤退させた。お前さんが与えた傷を回復させる為じゃ。その間は、ここに居る四人で対応する」

 「へぇ、茜姉さんを戦力に加えて、か?」

 「そうじゃ」


 綾は煙管を再び咥えながらそう言った。それを聞いた狂鬼は溜息を吐き、既に妖力の小さい人間の茜に視線を向ける。茜は何も分からない状態でオドオドしているが、その様子に疑問を感じる杏嘉は胡坐で座りながら言った。


 「そもそもこいつ、使えるのか?さっきまでの妖力は感じねぇし、役に立たないんじゃねぇか?」

 「それは言わないでやって欲しいぜ、狐。こんな人でも、姉さんは姉さんだ。本気を出せば役に立つかもしれないぞ」


 杏嘉の言葉に対してそう言った狂鬼だったが、それを聞いて茜は微かにムッとした様子で言った。


 「私はやる時はやりますから、全然役に立つと思いますよっ!」

 「茜姉さん、無茶だけはしないで欲しいんだけど……」

 

 茜のそんな意気込んだ様子を見て、そう呟くように言った狂鬼。だがしかし、次の瞬間、狂鬼の視界内だけで本来の茜の面影が重なったのである。


 「大丈夫。なんとかします」

 「っ……」

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