第90話
狂鬼が空中へと行った瞬間、綾と杏嘉はチャンスと思い顔を見合わせる。大きな妖力の出所が総大将である焔である事を悟っていた彼女たちは、これを好機と見做して反撃する態勢を取った。
「杏嘉!」
「おうっ」
「――妖術、
綾は狂鬼を包み込む程の巣を作り出し、一つの球体へと変化させて狂鬼を覆った。その球体の中に捕らわれた狂鬼は、舌打ちをしながら大剣で薙ぎ払おうとした。
だがその瞬間、球体となって覆っていた糸が燃え始め、狂鬼を地獄の業火で包み込んだ。灼熱の業火に焼かれながらも、その糸を切り裂こうとする。
「きっ……煩わしい真似をしやがって。――っ!?」
やっと切り裂く事に成功した狂鬼だったが、眼前に迫った杏嘉の姿に目を見開いた。先程の自分が起こした行動で、綾が取ったような反応と重なる。
「どうじゃ?仕返しじゃ。――ぶっ放せっ、杏嘉!!」
「一族の仇、今ここで果たさせてもらうよ!!」
杏嘉はそう告げると、まず腹部に一撃放った。それから空中で打撃技の連打を叩き込み、最後にかかと落としを放って真下へと急降下させようとする。
「――妖術、
「ぐっ、オレが負ける訳ねぇだろぉぉぉがぁぁぁぁ!!」
だが狂鬼も負けじと反撃を繰り出そうとするが、先に技を繰り出している杏嘉の優位な体勢である事に気付かない狂鬼ではない。そのままかかと落としを叩き込まれ、真っ逆さまに落ちていく狂鬼へ杏嘉は言う。
「……いや、ここで負けを認めな。真下には、アタイのが嫌いで最高の相棒が待ってるからな」
「っ……!?」
杏嘉の言葉通り、それを確認する為に狂鬼は真下を見た。するとそこには、ニヤリと笑みを浮かべる綾が既に巨大な蜘蛛の巣を用意して待ち構えていた。
「妖術、
地面ではなく、狂鬼は綾の作り出した蜘蛛の巣に捕らわれた。この勝負、身動きが出来なくなった狂鬼の敗北である。それを理解した瞬間、蜘蛛の巣に引っ掛かる狂鬼の真横で杏嘉は着地する。
そして煙管を咥え始める綾に近付き、擦れ違い座間に杏嘉はハイタッチをするのであった。
「礼は言わねぇからな?」
「美味い酒で手を打ってやるぞ、杏嘉」
「うぐっ……抜け目が無ぇな、テメェは」
「当然じゃ、ワシは粘着質じゃからな。ふふふ」
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