第40話

 ハヤテと刹那が村の情報を集める為、焔の指示で共に行動をしていた。周囲を観察するハヤテに対し、刹那は何か不機嫌な様子で腕を組んでいた。


 「どうしたんスか?姐さん」

 「……別になんともありませんよ」

 「そうスか?俺はてっきり、アニキがあの子に優しくする理由が分からなくて不機嫌なのかと」

 「だ、誰が不機嫌なんですか?」


 ムスッとしている態度を誤魔化したいのだろうか。だが誤魔化す気があってにしても、傍から見れば分かりやすい刹那の状況なのである。

 ハヤテはやれやれと思いながら、刹那の様子を眺めていた。


 「ちなみに言うスけど、あの子が普通の妖怪じゃないからアニキが優しいんスよ」

 「……それはどういう意味ですか?」

 「あの子は俺らみたいな妖怪じゃないって意味だ」

 「……?」

 

 意味の分からないといった表情を浮かべる刹那に対して、ハヤテは肩を竦めながら隣を歩いた。ハヤテの言っていた意味を理解出来たのは、刹那が仲間になってから数年後の事なのであった――。


 …………………………。

 ……………………。

 ………………。

 …………。

 ……。


 「――……きれい」


 オレの前でそう呟く少女は、微かに目を輝かせている。何がそこまで視線を釘付けにする物があるのかと思いながら、オレは自分の姿が変わった事を確かめるように額にあるそれに触れた。


 「を見たのは初めてか?」

 「……うん、はじめて」

 「まぁ珍しいのはお前と一緒だ。片角ってのがその一緒の理由だ」


 オレの言葉を聞いた少女は首を傾げているが、額にある角が一つしか無いのには明確な理由がある。そしてそれは、目の前に居る少女と同じ存在だという事が分かる。


 「同じ……?」

 「あぁ、同じだ。お前、半妖はんようだろ?」

 「っ……!」


 その言葉を聞いた瞬間、驚いた表情を浮かべる少女。半妖とは、その言葉通りの意味で妖怪の血が半分混ざった存在の事だ。そしてそれは、オレも少女と同じ存在なのである。

 

 「あなたも、半妖なの?」

 「まぁな。力を制御しているから、こうやって姿を変える事が出来てるってだけだ。さっき居たオレの仲間は、妖力を使って人間の姿に似せているだけだ」

 「そうなんだ……ボクにもそれ、出来るかな?」

 「なんだったら教えてやろうか?オレがこの村に居る間だけになるがな」

 「っ、うん!教えて欲しい!」

 「分かった。じゃあ教えてやる。これから毎日特訓な?」

 「……うん!ありがとう、焔お兄ちゃんっ」


 ぱぁっと輝いた表情を浮かべる少女。そんな少女の返事を聞きながら、オレは特訓よりも違う事を考えていたのである。

 それからしばらく少女に妖力の制御を教える為、通い続けて数日後。ある騒動をキッカケにして、オレは少女に「魅夜」という名を名付けて仲間に引き入れたのであった。

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