第24話

 ――鬼組幹部会議。


 それは名前の通り、鬼組の幹部となっている者たちだけで行われる会議の事である。メンバーは……


 「遅い到着でござったなぁ。拙者たちは幹部なのだから、時間は厳守が当然であろう?」


 鬼面を被り、手の届く範囲に刀を置く侍口調の男。目元だけ鬼面で覆われており、口元しか見えない。顎部分にある切り傷と目元が見えずとも漏れ出す威圧感が特徴だろう。――名は村正ムラマサ、妖名は鬼童丸きどうまる


 「本当じゃのう。ワシも待ち草臥くたびれて眠ってしまう所じゃった。ワシを待たせるとは、お主も偉くなったものじゃな。ハヤテ殿」

 

 片目を包帯で隠し、煙管キセルを片手に持っている和服美人の姿があった。かんざしを髪に挿し、ふぅっと煙を吹く。その容姿はとても美しく、微かに肌蹴はだけている和服は彼女を妖艶ようえんだと誰もが思うだろう。

 ――名はあや、妖名は女郎蜘蛛じょろうぐも


 「……どうでも良いがよ。さっさと座ったらどうだ?お二人さん」


 頭部でピクピクと揺らされている耳、毛先までフサフサと分かる程に整った尻尾。肉串でも食べていたのか、タレの付いた串を舐めながら彼女はそう言った。鋭く輝く双眸そうぼうの光は、薄暗い部屋の中では独特の雰囲気をまとっている。

 名は杏嘉きょうか、妖名は九尾きゅうび


 「やれやれ。……皆さんの口が減る様子は御座いませんね。氷漬けに致しますよ?」


 目を細めてニヤッとする刹那。先程まで日本人特有の部屋着を着ていたにもかかわらず、周囲を寒気で包む頃には白装束しろしょうぞくに身を包んでいた。青白い帯と薄水色はくすいしょくの瞳が冷たくその場に居た者たちを威圧する。

 名は刹那、妖名は雪女。


 「これより、鬼組幹部会議を始めるっスよ。――興味無い奴は寝てな」

 『っ……』


 手刀を振るい、その場を包んでいた寒気と共に斬撃を放つ。寒気が無くなったと同時に、彼らが座っている周囲に微かな傷跡が作り出された。それにより、話していた者たちが静まり返った。


 「まだ無駄口を叩きたいなら、お相手するっスよ?」


 そう言いながら座り、ハヤテは口角を上げる。

 名はハヤテ、妖名は風伯ふうはく


 ――以上。この五名が、鬼組がほこる幹部であり精鋭せいえいである。

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