ヒューズの過去
――あなたにとっての過去とは、何ですか?
僕にとっての過去は苦い味を呼び起こさせる。
僕は昔、兄さんに連れられてとある孤児院に遊びに行っていた事があった。
その時間は嫌いではなかった。
貧乏くさいところだなとは思ったけど、同い年の子供達と遊ぶ経験にくらべれば、嫌な所だなんて事はなかった。
その孤児院で、僕達はリリスという少女と知り合って、仲良くなる事になった。
兄さんはリリスの事がお気に入りだったみたいだ。
いつも、楽しそうに話をしていた。
兄さんは第一王子としての責務に疲れていたから。
何気ない日常こそが大事だったんだと思う。
おてんばばかりだったから、あの孤児院での日常が何気ないかどうかは分からないけれど。
けれど、ある日。
僕がそんな日を終わらせてしまった。
迷っていた人を孤児院に案内したら、その人が孤児院を燃やしてしまったからだ。
「お前のせいだ」
と兄に怒鳴られた。
恨み言はそれ以来聞いた事がないけれど。
おそらく僕は、兄に恨まれているのだろう。
だから、兄の頼みを断れずに、竜騎士部隊なんてものをやっている。
僕にとっての過去は、無知から生まれた罪をまざまざと見せつけてくる。
そういう苦い物だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます