03 最初の仕事



 戦闘はタバサの竜で、その数十メートル後ろをヒューズの竜が飛んでいる。


 竜はさすがにはやくて、ぐんぐん地上の景色がすぎさっていった。


 たまに空をとんでる生き物と出会う時があるけど、みんなびっくりして離れていった。


 無理もない、竜ほどの巨大な生き物はそうそういない。


 それに竜の強さは、他の生物の何倍もある。


 この世界で最強の生命力と強さをほこると言われているのだから。









 目的地まではだいたい一時間くらいかかった。


 空の旅を終えたあたし達は、竜の巣の近くまでやってきたようだ。


「ここで待っててねー」


 タバサが竜に話しかけている。


 やや遅れてヒューズも到着。


 愛竜に待機の指示をだしていた。


 そして、あたし達に色々といってくる。


「ここから先は三人での行動になります、竜が活動しにくい場所ですからね。だから勝手な行動はとらないようにおねがいしますよ。少しの油断が命取りになりかねませんから」


 細かい。


 周囲をみまわすと、長い棒みたいな岩が各所に点々と生えている(?)。


 特殊な地形だから、竜が活動できないのだろう。


 タバサは興味深そうにそれらを見ていたが、ヒューズにたしなめられている。

 

 あらためて竜達に待つように行ってから、三人で巣の場所を探す。


 あれこれ移動しながら、それっぽい場所に目を向けていくと。


「あっ、みっけた!」


 タバサが最初に発見したようだ。


 棒状の岩の影。そこに巨大な竜の巣あった。

 しかしその中は、空っぽだった。


 竜はいないようだ。


 けれど、ガラクタがたくさん運び込まれている。


 生活用品とかもあれば、お貴族様達がつかっているような宝石類もある。

 また、武器や甲冑などもあった。


(こんなもん集めて何に使うんだ?)


 疑問に思っているとヒューズが教えてくれた。


「特に使い道はないと思います。研究者達はなにか意味があるかもしれないといっていますが。ただの習性ですね」

「そんなもんか?」

「分からない事を気にしていたって仕方がありません」


 カラスが光るものを集めるけど、そんなようなものだろうか。


 そんなヒューズとは反対にタバサは持論を披露してきた。


「あたしは、ピカピカして目立つからだと思うな。ほら、きんきらきんだと強そうに見えるでしょ。自分はこれだけ強いんだぞってアピールしてると思う」

「なるほど、なんかそれはありそうだな」


 貴族連中がやたらと金かけて身なりを整えるのと似てる、のか。


 ヒューズは「そんな適当な」って顔して、呆れていたけれど。


 そんな風に重にタバサと会話しながら、巣の中をしげしげ見つめる。


(これ、いくつか持っていっちゃだめか?)


 貧乏生活やってきた身としては、なんともいえない光景なんだよな。


 足元でけりころがしちまったこの水晶なんて、結構高そうだし。


 そう考えていると、あたしの視線に気が付いたらしい。


 ヒューズが忠告してくる。


「よした方がいいですよ。得体の知れない魔法具が混在している恐れがあります。カエルになる呪いなんてかけられたらいやでしょう?」

「うっ、まじかよ」


 それはかなり嫌だ。


 ヒューズが言うには、ここにあるものは、後日別の兵士が回収しに来るそうだ。

 街道や平原で行き倒れた人物の荷物なども、こうした竜の巣にたまに混ざっているから、そういう仕事もしっかり行うらしい。


 世の中そううまくはいかないようだった。


(うまい話はそうころがってねーよな。あたしが先日受けた依頼もあれだったし、クラン行きだったし)


 竜騎士部隊に入るきっかけになった出来事を思い出して、遠い目になってしまう。


 あちこちうろうろしてると、近くの箱がぱかっと開いた。


 そこから何か飛び出してくる。


 羽のついた小さな生物が、たくさんだ。


「うわっ」


 それはポイズンビーだ。


 近所の農場によくいた。


 駆除のために何度も駆り出された事がある、嫌な思い出だったな。


 孤児院のチビ達とそうででやっても駆除しきれなくて、大変だった。


 この箱、ハチの巣かよ。


 こいつは毒があるからやっかいなのだ。


 アタシはこの時のために持っている双剣を手にする。

 

 竜騎士部隊配属になった時に新調した武器だ。


 けれど。


「ここは僕にやらせてください。実力を見せるいい機会です」


 ヒューズが前にでて、ポイズンビーを攻撃し始めた。


 武器は、小さな筒の様なものだった。


 そこから、小さな弾がすごい勢いで出てくるらしい。


「これは銃。小さな鉛球を打ち出して、敵を倒すんですよ」


 変わった武器だ。


 見た事がない。


 ヒューズは色々説明してくれたが、破裂音のようなものがするばかりで、本当に鉛球とやらがあるのかは確認できなかった。


 けれど、ポイズンビーはばたばたと倒れていく。

 一回の音につき、かならず一体。


 撃ち漏らしがない見事な腕前だった。


 数分で、退治終了。


「すげぇな」

「これくらいは当然です。自分の身は自分で守れるようにならなければいけませんからね」


 王子って人に守られて当然って思うような、そんな連中だと思ってたけどな。

 クランの奴は剣ふりまわしてたし。

 なんかあたしの知ってる王族とぜんぜん違う。


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