THE OUTSIDERS

RALPH novels

Invasion-侵略-

第1話



5:53am



T都内



◇メトロポリタンテレビ






『おはようございます』



斉藤良子さいとうよしこはまだ目が覚めきっていない様子で、報道局に入ってきた。



しかし斉藤は今日、気合が入っていた。


夜のニュース番組”ニュース・アルファ”でT湾に浮かぶ洋上都市”九十九つくも”を特集するからである。


斉藤は”クロウ”と出会ってから九十九が直面する現状を伝えることに意欲を見せていた。



『マル、準備出来てる?』


『バッチリですよ!斉藤さん』カメラマンの丸山英明まるやまひであきは機材を抱えるとニッコリと笑ってみせた。




『斉藤、すぐにHK道に飛んでくれ』


報道局長がフロアに入ってくるなり斉藤に指示を出した。


『あの・・今日は九十九の取材で・・』


『九十九の特集は無しだ』


『ちょっと待ってください!局長!ずっと前からお願いしてた取材ですよ!』


斉藤は怒りに震えながら局長に詰め寄った。



『あれを見てもまだ九十九の方を取るのか』局長は報道フロアにあるテレビ画面を指さした。


斉藤は局長に言われるがままにテレビ画面を見た、そして驚きを隠しきれなかった。



テレビ画面にはHK道の上空に亀裂が入っており、奥に漆黒の闇が見えていた。







『な・・なんなの?・・これ』








◇6:15 am M県:陸奥市





『宗ちゃん!宗ちゃん!』


朝早くから楠木家の長女、和美かずみの声が響いていた。



『なんだよ・・今日、休みなんだからゆっくり寝かせてくれよ・・』


楠木宗介くすのきそうすけは2階の自室のベットで寝ていた。



『宗ちゃん!ちょっと来て!』尚も和美は1階から呼び出す。


『勘弁してくれよ・・』そう言うと、宗介は布団を頭までかぶり無視した。



『宗介!』和美が一括する。


すると宗介はベットから飛び出して部屋を出た。


和美が宗介のことを呼び捨てにする時は大抵、良からぬ事が起こっているからだ。


1階のリビングに行くと、窓側に和美、清美きよみ愛美まなみの3姉妹が外を見ていた。


M県陸奥市から北の方角の上空はドス黒く覆われていた。


『ちょっと何あれ? 真っ黒よ』


『不気味ね・・』


『また地震でも起こるかしら・・』




『いや・・・もっと大変な事が起こっている・・』宗介はすっかり目を覚まして真剣な表情で呟いた。




宗介はリビングにあるテレビの臨時ニュースを見ていた。



そこにはHK道の上空に亀裂が入っている映像があった。








◇同時刻 T都内:とあるマンションの一室




携帯の呼出音がけたたましく鳴り響いていた。



久能秀隆くのうひでたかはベットから起き上がると携帯をとった。



《すぐに本部に来て》電話の主は黄昏貴美子たそがれきみこだった。


『任務か?』


《そうよ》


『内容は?』


《詳細はまだ不明・・ただ・・》


『ただ・・?』




《”CODE REDコードレッド”よ》



久能の表情が険しくなった。


CODE REDコードレッド”はZACKの中で使われる任務に対する危険度を表す用語だった。



CODE REDコードレッド”はもちろん最大級の危険を表す言葉だ。







6:58am 九十九



◇鳥飼インダストリー社




鳥飼楓とりがいかえでが愛車のBMWで会社に出社した。



社の正面玄関から中に入ると、人が群がっている場所があった。


エントランスには大きなテレビが設置されており、毎日世界のニュースや株式情報などが映し出されている。



楓は群がっている方へと足を運んだ。


後ろの方の社員は楓に気づき挨拶をする。



『どうしたんだ?』


『社長、、なんか大変なことになってますよ』一人の社員が答える。



楓は群がる社員たちを押しのけてテレビの前までたどり着き、画面を見た。



そこにはHK道の上空に亀裂の入った異様な映像が映し出され、亀裂付近には街灯に群がる虫のように黒い羽を生やした怪物が群がっていた。




その時、楓の携帯に着信が入る。


着信主は佐渡健さどたけるだった。


楓は電話に出ると一言だけ呟いた。





『何が起こっているんだ』








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