第3話 三年目
三年目、中学最後の春が来た。
桜の樹が、悠々と枝を伸ばす。伸びた枝が立派に桜の花をまとっている。
ピンク色の美しい花は、無骨な枝を飾り立てる。
ぼうと、桜の木の下に立ってみる。
風が吹くと、はらはらと花が落ちる。
「あっ」
ふと、足元からそんな声がした。
下を見ると、去年も会った彼女がいた。
「お久しぶりです」
「えっと、お久しぶりです」
一年ぶりだ。いつも桜の花が咲く時期に、一年に一度だけ彼女に会う。
「……元気ですか?」
「はい、元気です」
何だろう、ちょっと会話がぎこちなくなっている。
ふっと見ると、彼女の足元には大きな荷物があった。
そういえば、いつも彼女は大きな荷物を持っていたな、そう思っていたら彼女ははっと目を丸くして走り出す。
「すみません、もうすぐ出発なので、また!」
そういうと、自動改札に飛び込むように入っていった。
見ると、僕が通学する方向とは逆の電車があと二分で発車だった。
なるほど、だから一年に一度しか会わなかったのか。そう思った。
続く
桜の下で恋をします 文屋旅人 @Tabito-Funnya
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