思い出、ぼろぼろ。
へろ。
思い出、ぼろぼろ。
「大人になると中々まとまった休みが取れなくてね、ついつい学生時代の夏休みとか思い出してしまう時あるよね」
「あるねー。特にさ、部活とかもなかった小学生の時とかね、ほんと自由だったもんなぁ。」
「あー、なんかこの手の思い出話って、あるあるみたいになっちゃうよね」
「ん? なるかな?」
「いやいや、なるでしょ。ほら例えば、家にずっといてもヒマだからさ、海水浴連れってってーとか、父親が会社休みの日にねだってしまうとか」
「え? 父親っていつも家にいるもんじゃないの?」
「なにそれ、どういうこと?在宅の仕事してたとか?」
「いや、働いてなかったから」
「え?」
「友達の家も、みんなお父さんはいつも家にいたけど」
「いやそんなことあるわけないだろ」
「そうかぁ? うーん、今思い出してみても、海水浴はなかったなー」
「海連れて行ってもらえなかったの?」
「いや、海にはよく連れて行ってもらえたよ、深夜に」
「深夜に!?」
「うん。友達と友達のお父さん達も一緒にね」
「いやいや、深夜に海行ってなにすんだよ?バーベキューとか?」
「貝とってた。あとウニとか。子供は一人10個取らないと怒られんだよな!」
「お前……それって……。なんかさ、お前の住んでたとこってさ……」
「なんだよ?」
「お前の住んでた地域、治安悪ない?」
「なんだよそれ!べつに悪くなかったわ!」
「……そうかぁ?」
「うん」
「じゃあ、んー、あとあれだよね!夏休みのあるあるって言ったら、自由研究とかね。朝顔の観察日記つけようと思ってたんだけど、結局水やり忘れて枯れてるし、三日くらいしか日記つけてなくて、どうしよう!って夏休みの最終日に親に泣いて相談するみたいな」
「いやそれはないよ。俺はちゃんと朝顔育ててたし」
「おー!偉いねぇ!」
「これはあるあるだと思うんだけど、朝顔の種磨り潰したのをさ、鼻から吸って、コカインごっことか友達とよくやったよね?」
「やらねぇーよッ。こぇーよッ。なんなんだよ、お前んとこッ」
「わりと本気で死にかけるんだよな!」
「なんでそんな笑顔でいられんだよッ。いやだから、お前んとこの地域、治安悪ない?」
「悪くないって!皆良い奴だったし!」
「なんで過去形なんだよッ」
「今は塀の中にいるから」
「治安悪ッ」
思い出、ぼろぼろ。 へろ。 @herookaherosuke
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