あの頃少女
つきの
第1話 梅干しとマーガリン
背は高い方でヒョロっとしている。
おカッパ頭の髪は量が多くて硬いので、櫛も通りにくいし、一度寝癖がつくとなかなか取れない。ヘルメットみたいな髪型も気に入らない。
知里は自分の髪が、あんまり好きじゃない。
「どうして、お母さんみたいに柔らかな細い髪じゃ無いのかなぁ」
ぷぅーっと膨れてそう言うと、お母さんは真面目な顔をして
「とーんでもない。知里みたいに黒くてしっかりコシがあって量が多い方が、ずーっといいよ。お母さんの方が羨ましいよ」
って、言ってくれるんだけど。
漫画のお姫様みたいになりたいのになぁっていつも思う。
それと苦手なものは冬の今だとタイツ。
寒いからって履かされてるけど、すぐに股の所がズリズリ下がってきて気持ち悪くなる。
履きたくないけど、風邪ひくからダメって言われるから仕方なく履いてる。
幼稚園での知里はいつも大人しい。
元々一人っ子で、あんまり同じくらいの子と遊ぶ機会が無かったからかもしれない。
大抵、絵本ばかり読んでる。
でも、友達がいないわけじゃないし、いつも誰かといたいわけじゃないから、気にならない。
お父さんとお母さんは働いていて、一緒に暮らしてるおばあちゃんに知里は育てられた。
おばあちゃんは、厳しい。
駄菓子屋さんにも行かせてくれないし(その代わりタンスの上の赤い丸い缶かんから、おやつを貰えるけど)お行儀にもうるさい。
よそのおばあちゃんは、孫には甘々で何でも買ってくれたりするっていうけど、そういうのは無い。
だけど、一緒にデパートに買い物に連れて行ってくれたり、地下のタコ焼き屋さんで、出来たてタコ焼きを一緒に食べたり、怒ると怖いけど、知里は色んなことを知ってて教えてくれる、おばあちゃんが大好き。
知里は食いしん坊だ。
好き嫌いも全然ない。
そして、好きになると、ハマる。
今日も今日とて、こっそりと自家製の梅干しの瓶と最近、凝ってるマーガリンを、おばあちゃんの目を盗んで台所から持ち出した。
マーガリンは棒状になっている。
銀色の紙に包まれた、それを剥がして一口。
これだけだと、そんなに美味しくない。
けど、梅干しをその後に口に入れる。
「うー! 酸っぱい!」
これが、マーガリンの後口をサッパリしてくれて……。
「こら!!! 知里! あんた何してるの?」
おばあちゃんに見つかっちゃった。
おばあちゃんは呆れ顔だ。
「あのねぇ、いくら好きだからって、そればっかり食べてると、お腹壊すんだからね!」
「それにしても、なんでマーガリンと梅干し?」
知里はこの後、盛大にお腹を壊して、おばあちゃんの言葉を身をもって知ることになる。
昭和の少女、知里の日々は、なかなかに忙しく色々あるのだ。
これは、そんな昭和の女の子のお話。
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