非モテの嬢王
弐ノ舞
第1話 高山君①
目が覚めるとそこは身に覚えのない真っ白な天井。衣類をつけていない私の体を包むのは温かい布団で、隣ではスースーと誰かが寝息をたてて夢の中楽しんでいて、頭がぼーっとしている。それが起きて間もなく分かったことだ。
気の向くままに、その真っ白な天井を見つめていると、だんだん昨日の記憶が蘇ってきた。
昨日、私は同じサークルの高山君に飲みに誘われて、居酒屋に行ったんだった。カウンターで飲んでいるから距離が近くて、お酒を飲んでいくうちに、空のコップの数か増えるごとに、気分は向上していった。自分でも酔いが回っていくのと、色欲という獣が私の中で暴れ始めていくのが分かっていった。
でも私から誘うなんてことはできない。そういう時は少しボディタッチをしてみる。ただ、機会はしっかりと見なければならない。
素面の時の彼はあまりしゃべらないのだけど、お酒が入ると途端にしゃべり出す。まるでせき止められていた水がどっと流れ出るかのように。そしていい感じに酔いが回ってくると、私の身体をちらちらと見始める。あー、気持ちが悪い。それでわからないように見てるのかしら。どうせ見るなら堂々と見てほしい。でも、彼の体に触れるのは今。今が一番いいタイミングで、事が運びやすい状況が作れる。
彼がお会計を済ませている間、私はお手洗いに行く。
お手洗いまでの道で、何人もの男性の視線を浴びる。きっと頬が赤く染まっているのだろう。そして、身体から色気を出しているのだろう。お手洗いのドアを開けて鏡を見る。そして鏡に映った自分を見ると、目が離せなくなる。なんてかわいいのだろう。
頭の先から、男性から人気が高い、入念に手入れされた黒髪のショートカットをなびかせている。そして少し下に視線を向けると、整った顔に控えめながらも肌を白く化粧でまとわせて、対照的にふっくらとした唇に少し強めの真っ赤な口紅を施してある。さらに下に視線を落とすと、これまた男性ウケする華奢だが豊満な胸に、清楚な白いワンピースを身に着けている。
完璧だ。それ以上の言葉が出てこない。
しばらくすると、彼から「大丈夫?」とメッセージ。あはは、あせらないでよ。逃げないから大丈夫。
非モテの嬢王 弐ノ舞 @KuMagawa3
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