世界でいちばん愛した君へ

じかはつ

プロローグ

秋風が立つ、紺碧の空。

 「早いものだな。もう七年か、、、」

 儚くも美しく、柔らかい笑みを浮かべる彼女はあの頃と変わっていないように見えた。

 だが、彼女の外見や空気などから彼女が本当の意味の「大人」だと感じさせる。


 彼女だけではない。出席者全員が道は違えど、「大人」だと感じる。

しかし、それに妙な居心地の良さを感じている自分もまた、その一員と言っていいのかもしれない。


 「おう、どうした風馬ふうま。辛気臭ぇ顔してぇ?宇波うなみさんに見惚れてたのかぁ?」

 ニヤニヤしながら聞いてくるすでにだいぶ出来上がっているこの男は山田拓人やまだたくと

このの主催者である。

当時の俺ら、県立鳩山高校 元二年二組の学級委員でもあった。


彼は気配りができ常に周りのことを考えていた。

顔も美形、スポーツ万能、学業優秀。

しかしそんな面影も今は微塵もなく。


「お前は自重しろや。何があったらあんな全高校生の憧れだったお前がこんなことになるんだよ・・」


彼は力の入らない体を引きずりながら

「そんなことよりきいてくへよぉ!うちの糞部長がさぁ!ーーー」


俺は情けない酔っ払いをおいて立ち上がる。

「小便行ってくる。」


別にトイレに行きたいわけではないが愚痴に付き合わされるのはゴメンだ。


途中で後ろに「待ってくれよぉ〜」と寝転がりながら手を伸ばす元学級委員が見えた気がしたが無視。



へ向かう。





そこには女性が十数人。

全員見覚えはあるが雰囲気が変わっているので少し身構える。

その中から彼女の方へ。

少し呼吸を整えてからまっすぐに歩き出す。


集団の中心にいる彼女に声をかける。

少し声を張って。


「よお、悠美ゆみちょっといいか?」

俺に気づくと今日のいちばんの目的の彼女ーー木崎悠美きざきゆみは周りに「ごめん、ちょっと出るね。」と微笑んで座敷から出る。


「ちょっと外に出よっか。」


俺がうなずくと悠美は店の外へ。

  

「久しぶり。だいぶ雰囲気変わったね?風馬はIT関係だっけ?」


「そうだな。悠美は広告代理店か、大出世だな。」


悠美は「ふふっ」と笑う。


「合うのは高2以来かな?」


「だな。悠美が引っ越す前だから・・丁度高2の終わりくらいか。。」


「そうだね。いろいろあったもんね。」


「ああ。いまでも時々鮮明に思い出す。俺の宝物だ。」


「ふふっ やっぱ変わってなかったね風馬は。」


笑っているものの、何処か寂しい目。

これを僕はどれだけ見ただろう。

そして僕は知っている。




彼女の心の傷の原因も。

それを癒やす方法も。

全部。














ーーー「覚えててくれたんだ。 」ーーー













忘れるわけがない。


これは、あの夏においてきた俺と悠美の「初恋」の話。 

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