紅葉に溺れて

子供の頃の、あのお祭りの名前は何て言うものだったのか、もう覚えてない。

でも、夏が終わり、朝晩に寒さを感じるようになる頃、神社の周辺には人が集まる。掃除から始まり、焚き火にするための木材が集められ、御輿を磨き、酒盛りをするための準備が始まる。子供も手伝いに集まり、友達と薪を運んだことを覚えている。


山際にある普段は物寂しい雰囲気の神社が少しの間賑やかになるのは、幼心にワクワクした。


五穀豊穣を感謝する神事を行う。なれない厳粛な雰囲気に緊張をするが、隙を見つけては遊び、周りの大人に叱られる。御輿を担いで家々を練り歩き、ご褒美におやつをもらう。神社に帰るともう酒盛りの準備が出来上がっている。賑やかになりつつある大人たちをよそに、男の子たちは相撲をとり、女の子たちはおしゃべりをしつつ、焚き火を絶やさないように薪をくべる。

日が傾いたと思えばすぐに暗くなる。神社の中や周囲には明かりが灯される中の、ポツリポツリと帰り始める人もいたが、まだまだ神社は賑やかだ。

寒い寒いと言いつつ焚き火のそばに集まり、豚汁をもらい芋を焼く。見上げるとすっかり暗くなった空には月が上がり、暗闇の中の木々が風に揺らされ音をたてる。なれない神社の夜でも、周囲にいる仲の良い友人たちの姿にほっとする。


夜も更けると元気なのは子供たちばかりで、酔いつぶれているおじさんたちを順に起こし家へ帰るように促す。人も減れば酒豪たちも勢いをなくし酒盛りの席は徐々に小さくなる。

片付けを手伝い、燃やせるものは焚き火にくべてしまう。

朝が近づく頃には大半の人が帰っている。境内は酒盛りの後で汚いが、それは後で先に帰っていた奥様方が昼過ぎに片付けに来るというので放っておく。心ばかし皿や空き容器をまとめておき、空が白んでくる頃に神社を出る。


薄暗い田んぼ道を通り自宅へ向かう。一晩中起きていたというのに眠気も疲労感もなく、妙な高揚感がある。ただ、友人たちといるというのに、皆言葉数が少ない。

徐々に日が上る。空は青く、道も明るくなった。正面に見える山が朝日に照らされ、紅葉がキラキラと輝く。それは一晩中起きていた目にはとても眩しかったが、立ち止まり眺めた。気がつけば町を囲うどの山も日に照らされ、明々とした紅葉は燃えるように輝きを放った。

冷たい空気を飲み、誰ともなく再び歩きだし、各々の家へと帰っていった。

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