初任給

夢美瑠瑠

初任給




         小説・『初任給』



   未来産業KK、は一度採用した社員の福利厚生が徹底していて、


給与についても、毎月その社員の健康診断やらいろいろな心理テストの結果などをもとに


仕事への意欲、何歳まで働けそうか、


会社にどれだけ貢献することが可能かという潜在的な労働力の総量などを


精密にコンピューターで計算査定して、推定生涯賃金とその月の給与を


確定するシステムになっていた。


コンピューターは非情で、すぐお払い箱になりそうな社員には、退職金レベルの給与を


算出して、引導を渡すという感じになった。なんらかの重大な疾病が判明して、


勤務の継続が不可能な見通しになった場合にはも、生涯賃金がすっかり支払われるという


至れり尽くせりという、社員にとっては理想的な賃金体系のシステムだった。


・・・ ・・・


平野凡平氏は入社して最初の給料を受け取ろうとして、


社内の銀行のATMに並んで、初任給と、その明細を受け取った。


あれも買いたい、これも買いたい、と希望で胸が躍る感じだった。


三日後には可愛い恋人に会う予定だった。


しかし、不幸にも、コンピューターが弾き出したその明細にはこうあった。


「生涯賃金・・・一億三千万円


初任給・・・一億三千万円


※特記事項::ただし、推定余命三日。」


<終>




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初任給 夢美瑠瑠 @joeyasushi

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