相手の好みに合わそうとして滑り倒すの会・会長副会長①
二年A組所属の生徒会長・
「え? 好きな異性のタイプ? う~ん……ちょっと変わった面白い子かなぁ?」
その言葉を小耳に挟んだ瞬間、彼に恋するA組所属の生徒会副会長・
オワッタ……私の初恋オワッタ……
そして、そのまま放心状態に陥った。
それは、『ちょっと変わった面白い子』、それが片井撫子とは対極の存在であったからである。
片井撫子、彼女は華道の家元の家に生まれ、古風な両親から厳しく躾けられ育ってきた。
そんな両親の期待に応えようと、日々勉強やお稽古ごとなど、真面目、真面目、真面目一本気の人生を歩んできた、才色兼備な大和撫子。それが片井撫子である。
くそ生真面目が身上で冗談一つ口にしたことがない私じゃ、会長の彼女になれない。死んだ……。
そうして絶望してしまった片井副会長であったが、しかし彼女は真面目すぎるがあまり、ある勘違いをしていた。
馬締会長は友人との軽い会話の中で、よく考えもせずその日の気分でそう答えたに過ぎなかったのだ。三日後、同じ質問に真逆の答えを口にしていた。
片井副会長は、真面目すぎるがあまり言葉を言葉面の通りに捉えすぎる悪いクセがある。
そして、そのせいで、ここから彼女の大迷走が始まる。
二年A組所属の生徒副会長・片井撫子はある日、友人との何気ない会話の中で、何気なく口にした。
「え? 好きな異性のタイプ? う~ん……ちょっと変わった面白い人かしら?」
その言葉を小耳に挟んだ瞬間、彼に恋するA組所属の生徒会長・馬締マコトは膝から崩れ落ちた。
オワッタ……俺の初恋オワッタ……
そして、そのまま放心状態に陥った。
それは、『ちょっと変わった面白い子』、それが馬締マコトとは対極の存在であったからである。
馬締マコト、彼は書家の家元の家に生まれ、古風な両親から厳しく躾けられ育ってきた。
そんな両親の期待に応えようと、日々勉強やお稽古ごとなど、真面目、真面目、真面目一本気の人生を歩んできた、才貌両全な大和男児。それが馬締マコトである。
くそ生真面目が身上で冗談一つ口にしたことがない俺じゃ、片井さんの彼氏になれない。死んだ……。
そうして絶望してしまった馬締会長であったが、しかし彼は真面目すぎるがあまり、ある勘違いをしていた。
片井副会長は友人との軽い会話の中で、よく考えもせずその日の気分でそう答えたに過ぎなかったのだ。三日後、同じ質問に真逆の答えを口にしていた。
馬締会長は、真面目すぎるがあまり言葉を言葉面の通りに捉えすぎる悪いクセがある。
そして、そのせいで、ここから彼の大迷走が始まる。
片井、馬締の両名は、真面目すぎるあまり、そこでこう考えた。
『いや、待った。努力もする前から諦めてはダメだ。それが会長(片井さん)の好みだというなら、なってみせようではないか。ちょっと変わった面白い子(人)に! それも、私(俺)本来のクールにキメるイメージも崩さずに、面白い人間に!』
あまりにもこんがらかった結論であった。
翌日の休日、二人は他の生徒会のメンバーを交え、男子3、女子3人で出かけ、まずファミレスに集合した。
そこでの一幕。片井副会長はふいにドリンクバーとカレーを店員に注文し、カレーが届くとそれを手に、おもむろに席を立った。
そして彼女はドリンクバーコーナーに行くと、カレーのルーにドバドバとメロンソーダを注ぎ、席に戻ってきた。
「か、片井さん、それは?」
なにをしているんだ!? と驚き尋ねる会長に、彼女はクールにドヤ顔で答えた。
「メロンソーダカレーよ」
これが、クソ真面目仕様の彼女の脳味噌が考えた、「ちょっと変わった面白い子」というお題に対する答えであった。
「いやいや、毒の沼地みたいになってるけど大丈夫!? なんかブクブク言ってるし色合いといい毒の沼地みたいになってるけど本当に大丈夫!?」
しかし、肝を潰した会長の疑問に、片井はフッとクールに鼻で笑って答えてスプーンを取り、優美な動作でそれを口へと運び始めた。
ふっ……まずいわ。だけどこれが会長の好みの味なの。耐えるのよ、撫子。
違う。が、考えすぎて色々と倒錯している彼女は、むせそうになりながら、クールな仮面を崩さずカレーを食べ続ける。
そんな彼女の様子を見て、馬締会長、思う。
あれ……片井さんって、こんなおかしな所がある子だったのか。……となると、まずいぞ。もしかして、こんな彼女が思う、『ちょっと変わった面白い人』って、とんでもなくブッ飛んだヤツのことなんじゃないのか!? だとすれば、どうする? どうするマコト!?
勘違いが勘違いを呼ぶ、地獄のワンダーデススパイラル。
「ふと思ったんだけどさ、パスタの名前って一体どういう意味なんだろうね。アラビアータとかペスカトーレとかさ~」
「あ~たしかに」
頭を抱える会長だったが、その時、メニューを手に口にした友人達の何気ない会話が聞こえてきた。そこで会長、これだ! と閃き、口を開いた。
「あ~あ~ぺスカトーレな。ペスカトーレのことなら俺に任せてくれよ。こう見えても俺は、前世はペスという名前の犬をしていたんだぜ。ま、ねじれたマカロニパスタみたいな性格をしていたがね」
なんか急に黒須先生みたいなスベッたこと言い出したぞ!? と周囲が面食らい言葉を失う中、会長、クールにドヤ顔で続けた。
「ペスカトーレというのは、子犬・ペスが人間になるための旅の過程で生み出されていったパスタなのさ」
ええ~、そんなわけない~と思う周囲をよそに、会長は続ける。
「ペスはまず、とりあえず形から入ろうと思って、ボーカロイドのコスプレをして立ち読みをしながら、足かめはめ波を繰り出し脚光を浴びる練習をし始めた」
いや、どこの形から入ったんだよ! 脚光浴びずに出しちゃってるよ、と思う周囲をよそに、会長は続ける。
「そんなことを繰り返しているうちに、気が付けばペスもアラフォー。だがしかし、そんなペスにも一筋の光明がマンホールの中で死んでいる時に降り注いだ。……って、いや、物理的に降り注いだだけじゃねえかよ光明! マンホールのすき間から! プッ!」
もはや一人で喋りツッコミを入れて笑っている会長。
「そんなペスの遺体にはメンマが供えられた、ということを知ってか知らずか、漁師達は魚介類をトマトソースで煮込んだパスタを完成させた。それがペスカトーレの始まりだ。……って、いや、知らないよねえ! 全く関係ないところで作られちゃったよねえパスタ! プッ!」
もはや周囲は唖然。
「ま、そこから我々が得られる教訓といったら、人は与えられた境遇に上手く適応して、細く長く生きるのが一番だってことだね。そ、まるで何に絡めても美味しくなる、パスタの麺のように、ね。って俺は細くも長くもない、ねじれたマカロニパスタか! プッ! ……お後がよろしいようで」
全然よろしくねーよ! ……大丈夫なんだろうか今年の生徒会、と急に不安に思えてきた生徒会役員達であった。
そして、彼らがそう思う一方で、片井副会長は……
あれ……会長って、こんなおかしな所がある人だったの。……となると、まずいわ。もしかして、こんな彼が思う、『ちょっと変わった面白い子』って、とんでもなくブッ飛んだ子のことなんじゃないの!? だとすれば、どうする? どうするの撫子!?
と、全く別の理由で絶望していた。
さらに、決まった! とドヤ顔でいた会長もまた、そんな片井の表情を見て、あれ、ウケなかった!? どれだけハードルが高いんだ、片井さんにとって面白いって……と、これまた一人ズレたポイントで絶望していた。
勘違いが勘違いを呼ぶ、地獄のワンダーデススパイラルは続いていく……。
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