第28話 ラブコメにあるまじき解決法2
あのリーダー格的存在の奴がそうだったのか。
狭山玖美のツイッター、フリックするごどにでてくるは写真の数々、そこに必ず毎回写っている人物に俺は見覚えがあった。校門で新薗を愚弄していた球磨商女子集団、その中でも軒並みならぬ嫌悪を新薗にぶつけてい人物だ。
にしてもこの女、凄まじいな。三十分おきに投稿しなければ死んでしまう奇病でも患ってるの? って心配になってしまうくらいの頻度なんだけど。思い出を写真に残し且つ発信するまでが一連の流れであるこのご時世だとしても限度があるでしょこれ。
画面越しからでも伝わってくる肥えに肥えた承認欲求には寒気すら感じる。装飾に専念しすぎた結果、肝心な樹が姿を隠してしまったクリスマスツリーのような誰の為でもない己が為の自己満足な自己発信。意味も中身もない。
しかし意味がないも数を合わせれば意味を見出せる。かまってちゃん特有のまめさが情報提供してくれる。
火曜と木曜は必ずバイト先での写真が投稿されてるな。
海外発祥で日本でも全国展開しているファーストフード店、〝ラクドナルド〟のロゴがプリントされた制服を着用して、バイト仲間であろう数人とウェイウェイしている写真が決まった曜日に投稿されているのを発見した。
今日は木曜……様子見の構えでいるつもりだったが、仕掛けてもいいかもしれないな。
そう思い定め、俺は余裕にふんぞり返る狭山玖美へとダイレクトメッセージを送る。
教科書で手元を隠してスマホを弄る昼休み前の四時限目。俺は狭山に対して宣戦を布告した。
***
迎えた放課後、俺は協力者三人を誘い、球磨工の近くにある〝ラクドナルド〟へと赴いていた。
「なに
「待て、何をしているんだお前ら」
先導を切って店内に入ろうとしている練馬達に俺は待ったをかけた。
「いや見ればわかるでしょ。え、なに? ドライブスルーにするとか言わないよね? 徒歩で来たのわかってるよね?」
「おどけてる場合か練馬。ここは戦場だぞ? もっと緊張感を持て」
「「「……は?」」」
全く同じ反応を示した三人は意味が分からないと口を開けたまま立ち尽くす。そんな呆然としている彼等を俺は物陰に来るよう手招く。
「いいか、今日ここに狭山玖美がバイトととして出勤している」
「まじッ⁉」
「まじだ。それで誠勝手ながら戦いの火蓋はもう切っといてあるから、ここはもう戦場と化している」
驚く練馬に頷き返し、吉田と悪戸にも視線を配りながら俺はそう口にした。
「花川、その火蓋をいつ切ったのだ? それにどうやって?」
「四時限目の時に狭山が火曜、木曜は必ずここのラクドで働いてることに気付いてな、ダイレクトメッセージを送っといた……これがそうだ」
吉田の疑問に答えるように俺はスマホを取り出し、全員に見えるよう掲げる。
『お前がデマ流したってことは裏がとれてるからよ……覚悟しとけな』
「お、おう…………これが直接きたら、ちっとビビっちまうな」
自称〝不良優等生〟の悪戸すら縮み上がるほど……いやこいつを基準に考えるのも些か不安が残るが、まあ一般的な意見だろう。何も知らなきゃ俺だって怖い……悪事に気付かれた狭山にとっては尚のことだ。
「いつどうやってはわかった。しかし踏み切るに至った契機がどうにも納得できない。バイトの日程がわかったからなんだというのだ」
「群れて増長されては鮮度に欠ける。が、はぐれて一人ならばことは簡単だからだ」
俺の言に吉田は目で続きを促してくる。
「不安感をより煽る為、狭山に『真嶋は本気だ』とほのめかす。後は勝手に恐怖を膨らませては否定、膨らませては否定と自己問答に陥るだろ。真嶋は本気で私を……いやそんなはずがない! でももしかしたら……てな具合にな」
「鋼理…………お前って奴は…………」
絶句する練馬は百年の恋が冷めたかのようなドン引きっぷり。他の二人も似た表情をしている。
「そんな顔するな。ほのめかす役は三人にかかってるんだ、自然な演技を期待してるぞ」
「サラッと言ってくれるぜ、ほんとに…………てか、そういう大事な話は事前にしてくれよ」
「先に告知して帰られても困るからな。だから物で釣って現地まで来させ、断りにくい状況にした上で切り出した。あ、それと奢るとは言ったが一人二百円までな」
「鋼理…………お前って奴は…………」
呆れをとうに通り越したのか、協力者達が俺に向けるのはかわいそうなものを見る目だった。
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