四季家の日常

@midwinter

第1話 四季春香



「うーーん…」


 暑い。季節は春、麗かな陽気に包まれてとても寝やすいはず。しかし暑い、というか重い。

 この原因に僕は一つだけ心当たりがある。予想通りではないと祈りつつ、恐る恐る眼を開ける。


「…うへへ〜、あったか〜い」



 ああ、予想通りの結果であった。


 僕… “四季夏樹” に抱きついて寝ているのは僕の双子の姉… “四季春香” である。

 今日から高校生になり、部屋を別々にしたはずなのだが、未だに春姉は昔と同じようにこうして布団に潜ってくる。


 ところで、春姉は弟である僕から見ても美少女であることは間違いない。艶があり、腰まで長い黒い髪。優しさを帯びた少し垂れた目。そして出るところは出て、引っ込むところは引っ込んでいる体つき。

 流石に性的興奮は覚えないものの、大きな胸を押し付けられていること自体が恥ずかしくなってくる。

 また、姉だけではなく、二人の妹もいる。


 え、僕?僕は春姉より少し身長が大きいくらい。春姉が大きい、というわけではなく僕が165cmと普通より小さいだけ。その上、女の子と間違われる程の女顔をしているらしい。


「ちょっと、春姉、あっついから離れて」


「うーん…あったかいからいやぁ…」


「…春姉、起きてるでしょ」


「………」


ぎゅーっ


「いはいいはい!なっちゃん、痛いっ!」


「おはよう、春姉」


「もう、いきなりお姉ちゃんのほっぺた抓るなんてひどいよ!」


「こうでもしなきゃ起きてくれないじゃん。いや、起きてはいるのか」


「起こすときはほっぺた抓るんじゃなくてキスで起こしてっていっつも言ってるでしょ?お姉ちゃんの言うことが聞かないの?」


「いや、流石にそれは…」


 今日もまた始まった。春姉はいつも僕にキスを求めてくる。

 実の弟にそんなことを求める姉がいるのか、いや、いる。ここにいるんだ。何を隠そう、この姉は重度のブラコンである。

 全裸でお風呂に入ってくる、などは日常茶飯事だ。



『なっちゃん、お姉ちゃんがお背中流してあげるね!あとシャンプーも!』


『ちょっ!春姉!?前隠して!は、恥ずかしいって!』


『なんで?もうお互いの裸なんて見慣れてるでしょ?』


『ほら、前向いて目瞑って!はい、お湯かけるよ〜』


『わっ、ちょ、当たってる!当たってるからぁ!』



 これは昨夜のお風呂での出来事。

 何が当たっていたか?それは男にはない柔らかいアレだ。

 まあ、また今日もこうなるんだろうな…


「なっちゃん、そろそろご飯食べないと遅刻しちゃうよ?」


「へ?今何時…ってもう8時前!?食べてる時間ないよ!」


「もう、なっちゃんがゆっくりしてるからでしょ!ほら早く!」


「僕のせいじゃなくて春姉がさっさと起きればよかっただけだよね!?なんで僕なの!?」



……これが四季家の日常の一部分である。


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