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私はダゴスという田舎町で、農家の三男として生まれた。
父の名はヘリング・ハーベイ、母はヒース、その長男は父と同じ名のヘリング、次男はホルスト、長女はヒルダという。
私はヘリングの三男であり、ヒルダの弟である。
私より年上の家族はみんなイニシャルがHなのに、どういう訳か私はジャコブと名付けられた。
ハーベイ家は農家としては裕福な方で、数人の小作人と女中を雇っていた。
家の財産は、当然ながら、長男のヘリングが継ぐということが私の生まれる前から決まっていた。
若き日の私にはそれがどうしても受け入れがたかった。
しかも、私の2人の兄は私が最も嫌うタイプの人間だった。
彼らは脆弱で、両親や親族に従順で、頭でっかちで、神経質で、目下の人間に対して横柄だった。
私は弟のショーンと妹のアンナが幼かった頃こそ家を手伝っていたが、反抗期真っ盛りの14歳の頃には家に寄り付かなくなった。
ダゴスから歩いて半日ほどのハリントンという繁華街で寝泊まりし(別にイニシャルがHの町を選んだのではなく、最も近くて人が多かったのがハリントンだったのである)、気が向いたときに悪ガキどもとつるんで、昼間から酒を飲んで騒いだり、他の不良少年どもと喧嘩をしたりしていた。
私は当時からそんな生活をいつまでも続ける気はなかったが、あの陰気な父や兄たちから指図を受けずに日々を過ごそうと思うと、他に選択の余地がなかった。
困ったことに、ベッドで寝るにも酒を飲むにも女を抱くにも、何かと金が必要になった。
そのため、私はハリントンに行って間もなく、不定期で酒屋の用心棒を始めた。
裏町の不良少年にはいくつかの派閥があって、そいつらは酒屋の飲み代を踏み倒したり町の娘に乱暴したりする。
そこで、途方に暮れる堅気の所へ、私と何人かの弟分が出て行って、不良どもをしつけるのである。
その代わり、私たちは酒屋のおやじ連中から寝食の援助をしてもらう。
「ギブ・アンド・テイク」でも「需要と供給」でも何でもいいが、双方に損はない関係だ。
私は同年代の少年たちの中では体の成長が早く、酒にも強かったため、早い時期から何度も喧嘩を経験して、16歳のときには小さな池のトノサマガエルになった。
酒に強いというのは、男が身に着けるべき美徳の中でも、最も有意義なものの1つだ。
相手を飲み比べと賭けに誘い込んで結果的に身ぐるみ剥いだり、自分より大柄な相手をボコボコにしたりできる。
私の強みは、飲んでも不機嫌になっても、頭の片隅に冷静さを残しておけることだった。
酔って戻したことは数回あるものの、記憶を失って問題を起こしたことは一度もない。
酒屋のおやじ連中の間での私の評判は悪くなかったはずだ。
何しろ、酔った勢いで暴れることがない上に、女との付き合いが苦手で(というより他人との付き合いがそもそも苦手で)堅気の娘に乱暴をしなかったのだから。
だが、そんな生活を始めて3年目、17歳のとき、姉のヒルダが人さらいに遭ったという報を聞き、私はすぐに実家に帰った。
ヒルダをさらったのは、1年ほど前からダゴス近辺に現れるようになったドーリス団という盗賊である。
話を聞いた限りでも、私がハリントンで喧嘩の相手にしてきた不良少年どもとは雲泥の差があった。
父と兄たちは喧嘩の類に縁がなく、ドーリス団に関わって返り討ちに遭うことを恐れるばかりで、姉のことを諦めきっていた。
それでも、私は私を気にかけてくれていた姉のため、ドーリス団を討伐しようと決意した。
細かい経緯は省くが、私は父と兄たちを叱咤し、彼らを通して地主と官吏の許可を得て自警団を強化し、何度かの小競り合いの末に、ドーリス団を壊滅に追い込んだ。
このとき、一時的に私のハリントンでの悪評は返上されたのだが、残念ながらハッピーエンドを迎えることはできなかった。
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