【自己愛性PD】AIは人間を超えるか?【サイコパス】
『人工知能と経済の未来』井上智洋著(文春新書)を読んだ。
筆者はマクロ経済学者にして人工知能研究者で、人工知能と経済学の関係を研究するパイオニアだという。本書ではタイトル通り、人工知能の発展が我々の経済にどのような影響を及ぼすのか、分かりやすく解説されている。
思い付いたことが少々あるので、書き止めておこうと思う。
これが自己愛性PDやブラック企業にどう関係するのか、と思われるかもしれないが、これが大いに関係しているのだ。
まずはAIが将来、人間の職を奪うのではないかという点について。
『自己愛性ブラック』でも触れている通り、普通の人々は、仕事がなくても生活出来れば問題ない。AIとロボットに生産させて、ベーシックインカムを支給すれば済むことである。
しかし自己愛性ブラックは仕事で『俺様スッゴイ』アッピールをして、常に『仲間』に囲まれていないと生きていけない人々なので、それを奪われるということは死活問題となる。
また生産手段と富を独占して、人々の上に立とうとするのも彼らのような人間であろう。
現在、世界中で『汎用人工知能』の開発が進められている。その多くは、人間の脳を模したもので、その方式は主に二種類に分けられる。『全脳エミュレーション』と『全脳アーキテクチャ』である。
『全脳エミュレーション』は脳の神経系のネットワーク構造を全てコンピュータ上で再現するというもの。
『全脳アーキテクチャ』は、脳の各部位毎の機能をモジュールとして再現して、後で結合するというもの。
方式の違いはあるものの、いずれは『汎用AI』が人間の知能を超える日が来るのではないかと言われている。アメリカの発明家レイ・カーツワイルはその『シンギュラリティ』が2045年に到来すると予測している。
しかし、そこには大きな落とし穴がある。筆者はこう述べている。
『私が最近参加している官庁系の会議では、文系・理系双方の研究者が集まっており、「AIは創造的な仕事を成し得るか」「AIは意識を持ち得るか」「AIに人間と同じような責任を担わせるべきか」といったことについても議論されていますが、一向にそうした議論は収束する気配がありません。それくらい難しい問題なのです。』
私は『自己愛性ブラック』において、自己愛性PDの根源的な行動原理やモチベーションには、強力な不安感、恐怖感そして孤独感が潜んでいることを描いた。そしてこれは、パーソナリティ障害だけの話ではなく、程度の差こそあれ、全人類に当てはまる話でもある。突き詰めていくと、生物というのは、死に対する不安や恐怖を原動力として生きていると言える。
しかしながら、例外もいる。
扁桃核の機能不全によって、通常の恐怖心を全く感じない人間というものが存在する。それがサイコパスと呼ばれる人々である。
つまり、いくら人間の脳を模したところで、生に対する不安感や、死に対する恐怖感といった感情を再現出来なければ、サイコパスAIが完成して、サイコパス人間のように暴走しかねないということである。
SF映画でよく描かれる、AIが暴走して人間を滅ぼそうとするというような話も、あながち荒唐無稽とは言えないのである。現状でAI開発を続ければ、むしろそうなる可能性の方が高いとさえ言える。
とは言え、SFの世界でよく描かれるのは、人間がお互いに殺し合ったり、地球環境を汚染する邪悪な存在として認識されるからで、動機は純粋な正義感によるものであろう。サイコパスの場合は、正義感などそもそも微塵もなく、純粋に快楽を追い求める傾向がある。パートナーの人間が邪悪であれば、逆に仲良くなる可能性の方が高いかもしれない。
正義感の暴走というのは、実はサイコパスより自己愛性PDによく見られる傾向である。ブラック企業は、自己愛性PDによる歪んだ正義感によってブラック化しているケースが多い。
感情に突き動かされて暴走するのか、感情が無い故に暴走するのか、結果に大した違いはないのかもしれない。
そもそも人間同士でも、価値観や認識は人それぞれであって、果たしてどちらが優れているかなど、容易に決めつけられるものでもない。処理速度やスペックだけで、AIが人間を超えると言えるのか、イヌ派とネコ派でどちらが優秀なのか、何をもって人間より優れていると判断するのか、大いに疑問とするところではある。
パーソナリティ障害の場合は特に、彼らの認識が標準から著しく外れており、それが彼らのトラブルの原因となっているのだ。
恐怖心を再現すれば人間に近付けるのかもしれないが、そのせいで合理的な判断が出来なければAIの意味がない。
かといって、恐怖心がなければサイコパスとなってしまう。
完全に合理的な判断をAIに求めるということ自体が、人間の脳を再現するということからは外れてしまうのである。経済学で陥った過ちを繰り返すことになってしまうだろう。
AIが人間に取って代わるには、まだまだ時間を要するようである。
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