17話 優しき洞窟の中へ

背後からの追撃を、眩いフレアを発射し、かわした。


「そんな装備があったんだ」

知佳は驚いた。

「ゲームでは普通だよ」

「ゲームの知識かよ!」


かなり非常識な量のフレアを発射した結果、宙域が眩い光に満たされてしまった。

まるで星が生まれたの様な輝きだ。

その輝きの中に巡航ミサイルを、エンジンに点火せず射出した。

巡航ミサイルからは、微かに人間の生活音が聞こえていた。


そして宇宙船を一瞬だけ加速させ、後は無音で走行した。

パトロール艇なら動かない鉄の塊を、確認しない訳には行かないだろう。


「なんか、しょぼい作戦」

知佳はあきれ、こん棒で錬の頭を叩いた。

「痛い!って現実なんて、だいたいしょぼいんだよ!」


輝きが消える前に宇宙船は、準惑星に接近した。


「この準惑星は、5000年前に人類が築いた文明都市があったみたい」


錬は説明した。錬の行き成りの博識に、知佳は新体操を中止した。


「なんで錬が知ってるの?」

「この機械の兵隊の思考回路にその地図と情報があった」

「マジすか!」

「この地図は、何かの理由で極秘扱いらしい」


知佳は、機械の兵隊を見た。無表情で動きもしない。


「でもなんでそんな極秘情報にアクセス出来るの?」

「多分、この機械の兵隊がアクセスを許可したんじゃない」


準惑星の表層には、文明を思わせる物は何も無かった。


目の前に大きな洞窟が見えた。

人工物なのか天然の物なのかは解らない。


宇宙船はその洞窟に突入した。敵が追撃を止める様子がないのは確認できた。

洞窟に入ると、何故か優しい気持ちに包まれた。


それを沙羅も感じたのか、知佳と視線を交わした。


「行き止まりとかないよね」

「多分」

「多分って!」

知佳はボールを錬の頭に投げた。


背後から銃撃はないみたいだ。洞窟が壊れるのを避けたいのだろう。


進行方向に光は、まったく見えない。

そんな中、錬は速度を落とすことなく突き進んだ。

大きな空洞に出ると錬は叫んだ。


「人類は帰ってきた!自立防衛システム稼働!」



つづく



【人類たち】


沙羅14歳

錬 13歳

知佳12歳

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