14話 なのに、私達は繋がっている

「残り5パーセントが、記憶図書館及び管理局の火災に拠る喪失。

4パーセントが記憶転送時のバグによる消去。

残り7%は原因不明です。

この7%が、内務省によって消された可能性があります」


参謀はソフィーに報告した。


「消された記憶の7%か、そこで見つかりそう?」

「可能性は低いですが、やってみます」

「低い?」

「はい。私の直感ですが、消された記憶がこの場所にあるとは思えません」


直感、かなり人類的な発想の単語だ。

それを参謀は、ソフィーとの共有記憶からその単語と意味を探り出したのだろう。

遠い人類時代の記憶だ。


懐かしさすら感じる。


ちょっと前まで機械の兵隊に過ぎなかった参謀が、使った事に驚き、この参謀に自身の記憶を分け与えた事を、少しだけ不安を覚えた。


アンドロイドになって変わった事は、情報と情報を組み合わせ、より論理的に考えるようになった事だ。

人類時代の様に、直感に頼る事は徐々になくなって行った。


では、この参謀の直感とは何なのか?などと考えてる場合ではない。


「そう、可能性が低いのであれば、今はとりあえず戻ってきて、君が必要なの」

「了解しました」

「ところで、君は首都の記憶図書館にいるんでしょう?」

「はい」

「私、サマルカンドにいるんだけど、サマルカンドは陸軍が情報封鎖中なのに、サマルカンドにいる私と、首都図書館にいる君との通信は繋がっている。どう言う事だと思う?」


このアローン兵達が、ソフィーの味方に着いた事も含めて、解らない事が多すぎる。


「情報封鎖中にも関わらず、通信が繋がっている。

情報封鎖は、内務省情報局管轄下のはずです。

だとすれば民間ケーブル・無線・衛星・政府専用・軍専用通信は完全に遮断しているはずです。

となれば、情報局の関知しない回線で我々は繋がっていることになります。」


違法無線通信がない事もない。

実際、反乱軍は多用しているが、しかし都市を完全に遮断されては、さすがに使用できない。


「情報局が関知しない回線なんて、この星で可能なの?」


「妨害電波等で無線通信は完全に遮断されていますので、無線での通信はデジタル・アナログどちらも不可能です。

可能性として考えられるのは、何者かが仕掛けたもぐりのケーブルの可能性が考えられますが、しかし、我々自身から中継地点まで無線を使わなければならず、中継地点からの無線が送受信された段階で、情報局に察知され中継局は潰されるはずです。

現在、私が持ちうる情報から判断しますと、情報局が関知しない回線は存在せず、よって我々の繋ぐ回線は存在しません。」


「なのに、私達は繋がっている」

「その様です」

「取り合えず、すぐに戻ってきて、それから考えましょう。」


ソフィーが言うと、参謀の思考回路に、充満していたソフィーの感触がふっと消えた。その後数分、ソフィーの余韻が参謀の思考回路に残影した。



つづく



いつも読んで頂き、ありがとうございます。O(≧∇≦)O イエイ!!



【ソフィー】

アローン兵と唯一リンクするアンドロイド 人類だった頃は女性


【青い視野レンズの参謀兵】

ソフィーに忠誠を尽くす特殊機械参謀兵(優先順位1)

機械兵には禁止されている人工知能を、獲得しつつある。


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