8話 >こんなに簡単なんだ。


『首都近郊・陸軍駐屯・地射撃訓練場』


「ん?お前、見かけない顔だな、それに機体も見た事がない」

陸軍のアンドロイド兵は、見た事がない奴に声を掛けた。


見た事がない機体のアンドロイドは、

「ここに来たのは初めてだ」

「えっ?」


見た事がない機体のアンドロイドは、陸軍のアンドロイド兵の頭部に拳銃を向けた。

「お前は・・アローン兵?」


パーン

銃声とともに、アンドロイド兵の思考回路は吹き飛んだ。


「アローン兵だ!アローン兵が基地の中に!総員迎撃せよ!」

「なんでアローン兵がこんな所に!」

「処理速度が違い過ぎる!」


パンパンパン。1つの銃声で1つの思考回路が破壊された。


>コスパの良い。


陸軍のアンドロイド兵が、1機、1機、確実に破壊していく。

アローン兵とろくに戦う事すら出来ていないと言って良い。


ソフィーはアローン兵の思考回路を通じて、その様子を眺めていた。


>こんなに簡単なんだ。


まだ普通のアンドロイドだった時のソフィーたちにとっては、陸軍は鉄壁な存在だったのに。


アローン兵でも、さすがに多数を相手にすると武器が不足し始めた。

参謀の指示に従い、アローン兵は武器庫に突入した。


武器庫には膨大な量の武器が蓄えられていた。

その量に、ソフィーと参謀はにやけた。


無表情なアローン兵が、にやけたがどうかは解らないが、アローン兵は迷わず重火器をぶっ放した。何か楽しそうなのはきっと気のせいだろう。


「こんなモノです」

と参謀はソフィーに報告した。

「悪くない」



『サマルカンド・鉱物資源企業団公社ビル』



「空軍のパトロール機の報告によりますと、アローン兵1000機がサマルカンド郊外の峡谷地帯に放置されている様です」


直通回線がハミルに伝えた。


「放置?アローン兵は動かないのか?」

「はい。スクラップ前の機械の様に、転がっていいます」


ハミルは鉱物資源企業団公社ビルの最上階から、まだ、騒乱が収まらない夕日が照らすサマルカンド市内を、見つめ考えた。


「アローン兵の故障か?電源が切れたのか?それとも罠か?」

「空軍が攻撃の許可を求めておりますが。」


馬鹿な!


アローン兵1機の価格は非公開だが、ハミル自身の機体の数百倍はするはずだ。

アローン兵の竜族撃退作戦時の処理速度の速さは、先進的な竜族の兵器を圧倒していた。我々とは規格が違う。


それは、評議会の信頼度の表れであり、そして、軍属をはじめ一般アンドロイドへの不信の表れだった。

そんな高価な機体を、無意味に破壊しては、削除処分だ。


「まて、空軍には上空で待機させろ」


ハミルは命じると、直通回線を切った。そして、副官に


「サマルカンドに展開している、装甲騎兵を集めろ」

「民兵の掃討作戦は、まだ完了しておりません」

「素人集団の民兵など何時だって掃討できる。

人工知能を搭載していないアローン兵が、なぜ脱走したのかを知る方が先だ。

装甲騎兵が集まり次第、私も峡谷地帯へ向かう」



『サマルカンド郊外・小高い丘』


デューカは、夕日に照らされた空を見上げた。


「俺達、何してんだろう。

はたから見たら玩具の兵隊が、カチャカチャと戦争ごっこをしているように、見えないだろか?誰も死なない。誰も傷つかない。

ただ、アンドロイドと呼ばれる記憶装置を積んだ、機械の玩具が壊れるだけ。

意味のない事は、もう終わりにしてぇ」




つづく




いつも読んで頂き、ありがとうございます。

毎週、土曜日更新です O(≧∇≦)O イエイ!!

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