16話 まだ生きてるみたい。わたしたちついてるね。

『首都郊外・地下鉄遺跡』



デューカは、両腕をアローン兵に捕まられながら連行された。


恐怖の極みを超えたデューカの思考回路上には、お花畑の映像が流れていた。


地下鉄遺跡の階段を降りると、整然と敷かれた石畳と天井から柔らかく差し込む駅のホールには、恐るべきアローン兵が、ずらりと並んでいた。


デューカの機体は、氷像の様に凍りついた。


黒い装甲を纏ったアローン兵の奥には、頭部はアローン兵の兜をかぶってはいるが、

スレンダーなアンドロイドが、遠い昔人類が使っていたであろうオープンカフェのテーブルの上に肘を立て、親指を口元にそっと当てて、デューカの様子を眺めていた。


「!?」


デューカとソフィーがまだ人類だった頃、5000年も前の話になるが、待ち合わせにいつも遅れてくるデューカを、ソフィーは街のオープンカフェでテーブルの上に肘を立て、親指を口元にそっと当てて待っていた。


「ソフィー?」


デューカの心に5000年の時を超えて、その時の想いが蘇ってきた。


「ソフィー!」


デューカが叫ぶと同時に、デューカを掴んでいたアローン兵の拘束が解かれ、

デューカは、そのアンドロイドの元へ駆け寄った。


「デューカくん、遅い・・・いつもの事だけど」


デューカが知っているソフィーの声そのもので言った。

デューカは、頬を緩めた。


「ごめん、5000年経ったって治ってなかったらしいよ」

「だね」

「ソフィー、生きてたんだ」

「うん、まだ生きてるみたい。わたしたちついてるね。」



『宇宙ステーション・アントン』



宇宙ステーション・アントンの管理官ケイは、空軍と人類を乗せた宇宙船の一連のいざこざを、自分の部屋の窓から眺めていた。


人類を乗せた宇宙船は、宇宙ステーション・アントンのすぐ側を、慣性でゆっくりと通過していた。


「どうする気だ?」


人類の乗せた宇宙船の姿に、ケイの心の奥が締め付けられた。

この感覚、5000年以上、感じたことが無い感覚だった。



つづく




いつも読んで頂き、ありがとうございます。

毎週、土曜日更新です O(≧∇≦)O イエイ!!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る