第11話 ジャヴェル村編 個人授業
早朝。バルフが部屋を訪ねて来た。ポルクは朝番でもう仕事に行っていたから俺しかいない。一先ずお茶?的なのを用意して差し出す。
「ありがとう。朝早くにすまない。」
「別にいいよ。どうしたの?」
「いや、その…なんか変に勘ぐったりしていて、俺自身気持ち悪いからハッキリさせに来た。」
んー言ってることが支離滅裂になって意味がわからんぞ。
「んー、ごめん。どういうこと?説明がいろいろ抜けてるから意味がわからないだけど。」
まあ予想はできてはいるけど…。
「あ!すまん。俺もいっぱいいっぱいで…。」
うん。知ってる。
「ああ!マリカのことか?」
ギョッとした顔で俺を見るバルフ。毛が立っちゃってるよ…。
「好きなんだろう?だから俺を睨んでくる。まあ、わからなくはないけど、マリカが知ったら逆に嫌われるよ。」
「な…なっな…なんでわかっ…。」
自分で自分の口押さえちゃった。何しに来たんだか…。まあ、それだけ追い詰めちゃってんのか…。
「わかるよ。あんだけ睨まれれば。」
「……すまん。一応、お前が嫌いなわけではないからな。」
「ああ。わかってるつもりだよ。俺は別にマリカは気になるが好きではないよ。そうだな……妹みたいな感じがするのがあってんのかな。記憶ないからわかんないけど。多分、俺には妹がいて、きっとマリカに似てんじゃないかな?」
「俺に聞いてもわからんぞ。…そっか。」
最後の聞こえちゃたよ。
「それはそうだね。ただ俺自身にもよくわかんないんだよ。まあ、だから安心して。一応言っておくとしたら、今のままだとこじれちゃうよ?マリカはバルフの物でも彼女でもないんだから。」
「ああ。わかってる。わかってはいるんだが…。」
「んー、俺も記憶ないからわからないけど、バルフのは恋というより執着に見えるかな。」
「しゅ…執着?そんな事は……。」
落ち込ませちゃったみたいだが…。
「相手の事を思い相手の為に何かをする。多分だけど恋って相手のことを中心に考えれないと違うんじゃないかと思う。俺はそう思えた人いないから合ってるかはわからないけど。俺は恋したらそうしたいと思う。」
「たっ確かに…。それはわかる。俺はいつの間にかに変になってたんだな。最初は俺もそう思ってやろうとしたんだが……上手くいかなくて……だからか。」
バルフは肩を落としてため息を深く吐いた。耳までションボリしてる。何それ!?なんかメッチャ可愛いいんだけど…!!
「悪かった。いろいろ。やり直すかな。やり直さないとな。」
「まあ、初まってもないんだからやり直すんじゃなくて見つめ直すが合ってんじゃないか?なんで好きになった?彼女のどんな所に惹かれた?彼女にとって自分がどうありたい?見つめ直して欲しいかな。俺も付き合いはまだ短いけど、マリカは大事な友達だから。バルフともこれからだって思ってるから。」
「ああ。ありがとう。確かにお前は変わってんな。」
「なんだよ!?急に。励ましてやってんのに。悪口かい!」
「いや、一応良い意味でだ。記憶もない、身寄りもいない、下手したら命を狙われる状況。それなのに、何で周りの奴らを気にかけられるんだ?…お前はいい奴だよ。」
「そっかな?結構自分の事でいっぱいいっぱいだけどな〜。」
「本当にそうなら、そんな明るく言えないぞ。ああーなんか、レイのおかげでスッキリした!腹減ったな。一緒に朝飯いくか?」
なんかすげーいい顔してんな。吹っ切れたんならいいか。
「おう。いいぞ。でもいいのか?バルフは朝食出んのか?」
2人で部屋を出て食堂へと向かった。
「ああ。姉上につけてもらうから大丈夫だ。」
「おい。そこは自分でしろよ。マリカに知られたら引かれちまうぞ。」
「そっ!そうなのか?なら自分で払う。」
単純だな(笑)
「自立すんのも大事だ。もう仕事してるんだから。」
「そういうもんか。姉上にも言われたがよく分からん。」
「自分の事は自分でする。それだけだ。」
「おう!とりあえずやってみる。」
「その意気だ。」
そして2人で食堂につき朝食を食べながら雑談していた。すると急にバルフが目を丸くした。
???
「おはようございます。クルト様。お茶のおかわりです。」
「ああ。おはよう。ありがとう。…え?」
聞き覚えのある声が真横から聞こえて振り向いた。
「ギャルスさん?なんでまたわざわざ気配を消して近寄ってくるんですか?心臓に悪いからやめて下さい。用がある時は普通にきて下さい。」
「失礼いたしました。今日の授業が何時がよろしいか聞きに参りました。私は何時でも大丈夫でございます。因みにさんはつけなくて結構でございます。」
「ごめんよ。バルフ、驚かして。」
「いや、お前が悪いわけじゃないし、俺の知る限りだがギャルスはいつもこんな感じだ。」
「そうなんだ。やめて下さいね。ギャルスさん。」
「かしこまりました。さん付けはしなくて大丈夫でございますよ。」
「わかった。やめてくれたのが確認できたらつけないで呼びますね。ギャルスさん!」
「そっそんな拷問のような仕打ち…耐えられません。」
ハンカチで涙を拭く仕草をするギャルス。拷問ではないだろう?それに絶対嘘泣きだ。
「はいはい、ギャルスさん。承諾して下さい。それよりも、早く狩組に入りたいんで、このあと用意ができたらお願いします。」
「かしこまりました。では、教室はB -2でお願いします。用意に1時間ほど頂きますので、合わせて来て下さいませ。」
「わかりました。よろしくお願いします。」
「では失礼いたします。と、その前にバルフ君お茶のお詫びでございます。」
一瞬でバルフの横に動き、お茶を入れてから一礼して消えていった。もうため息しか出ない。
「お前もずいぶん変な奴に気に入られたよな。」
「言わないで、バルフ。悲しくなってくる。」
俺は全力で拒否した。バルフはその後は午後まで暇だからと時間を2人で潰した後、一緒に来てくれた。
「一緒に来なくても別にいいのに。面白半分で来てんじゃないよね?」
「なくは無いが、まあレイの常識がどれほどないか知りたいしな。」
「いや、面白半分じゃん。絶対!」
俺は溜息しながらバルフを睨んだ。
「まあな。でもからかうためだけじゃないって!俺と同じ組になるんだから知っておきたいのは本当だって。」
「いや、からかう気まであんじゃん!」
「いいじゃないか!俺がマリカに話ができる良いネタなんだから。協力してよ。」
「協力は別に良いけど、俺をネタにすんなよ。」
悪ブレる様子もなく平然と笑いながら言うバルフに仕方ないと思ってしまった。
教室に着くとギャルスがすでに用意を済まし待っていた。
「バルフ君もご一緒ですか…。頭でも打って記憶喪失になったんですか?」
「んなわけないだろ。これから一緒に組むんだから知っておこうと思ってね。レイの常識無さを。」
「おい!なんか言い方が嫌なんだが。」
「気にするな。気にするな。……うっ!!」
ありゃあ、ギャルスがバルフをメッチャ怖い顔で睨んでんだけど…。
「ギャルス、大丈夫。興味本意ぢゃなくて、ちゃんとバギに報告して今後の予定を組む為に来たのはマジだから。」
「ふー、そうでしたか。失礼いたしました。てっきりマリカさんと話すためのネタの為かと…疑ってしまいました。」
ギャルスが鋭い目でバルフを見つめる。
「うっ!!…んーなわけないでしょ。なあ、レイ。レイからもなんか言ってくれよ。」
バルフは慌てちゃってモロバレだろ、それじゃあ。ギャルスはどっかで隠れて聞いてたな。
「ギャルスさん。一先ずは許可出して下さい。さっさと始めましょう。」
「レイ様がそう仰るなら我慢いたします。バルフ君、笑ったら……わかってますね?」
「あっああ。大丈夫だって。」
「では始めます。まずはレイ様。ここの名前は知っていますか?もしくはここ一帯の森の名前でも結構です。」
「いや、どちらもわからない。」
「では、知っている地名はありますか?」
「知らない。」
「ではこちらをご覧ください。この周辺の地名や国名が書かれている地図でございます。何処か聞き覚えのあるものはございますか?」
「いやー、ん?トワの国?」
「…知っているのですか?」
やべっ!つい反応しちゃった。トワって永遠かな?日本後っぽい気がする。
「いや、トワの言葉だけ聞いたことあるような気がしただけ。国の名前としてじゃないよ。」
2人がちょっと冷めた感じで俺を見たから慌てて弁解した。…嘘は言ってないから大丈夫だろ。
「そう…ですか。ならいいんですが…。ここは宿敵の勇者が作った国でございます。今はシャルグ国の属国に成り下がって酷い有り様だと聞いています。奴隷の斡旋や売買を主にしている国でございます。」
マジかー!?勇者?勇者ってやっぱ転移的な?それなのに奴隷の売買を主にって最低じゃん!!
「勇者って?」
「レイ!?まじか?勇者も、ヒト族のこともわからないのか?」
バルフは目を開いて聞いてきた。
「知らない。」
「はぁー、バルフ君。これはじかんがかかりそうですよ。しかし、狩事態には問題ないと聞いてますから1人行動さえしなければ問題無いと思います。」
「そうだね。しばらくは1人に出来ないな。」
開始そうそう2人とも遠い目をしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます