第19話 優秀な部下達
屋敷に着くなりキリカに抱きしめられた。
「え!?キ、キリカ?心配させて悪かったと思ってるが…ちょっとこれはまずい気が…。」
父様もアンドもガルトも困り顔で笑ってるし、メリッサは…めっちゃ怒ってるよ!
「ほんっとうに心配したんですよ。連れていかれて、アメリア様もすぐ戻るとおっしゃってくださったのに…。旦那様が帰ってくるまで何の連絡もなくて。今は許してぐたさいませ。説教は後でメリッサにされますから。」
そんな涙目で言われたらな〜。
「悪かったって。とりあえず生きてるからさ。」
「はい。安心しました。…その眼…大丈夫なのですか?」
キリカは離れて俺の眼をじっと見つめた。
「ああ。暴走はしないから安心してくれ。」
「そう…ですか。なら今はアメリア様ですね。」
「そうだ。何とかしないと。」
「もし、アメリア様にお会いできたなら、キリカが怒っていると、今も心配でどうにかなりそうだとお伝えください。」
「わ、わかったよ。伝えるよ。」
「そろそろいいかな?クルトは自分の部屋に用意をしに。キリカは手伝ってやってくれ。その後は特産品に関してアンドとメリッサ、ガルトも交えて出来る限り引き継ぎ等を済ませるように。私はすぐに出るからな。」
「わかりました。」
「「「かしこまりました。」」」
父様は急ぎ足で屋敷へと入っていった。
今度は3人が近づいてきて、メリッサは、
「ご無事でなによりです。とても…とても心配いたしました。」
と頭を下げながら凄んできた…。怒ってる?
アンドとガルトは少し涙目になりながら、
「「ご無事でな、なによりです。」」
ガタイのいいおっさんとほっそい兄ちゃんが鼻をすすりながら言ってくれた。
「あ、ああ。心配かけて悪かった。ありがとう。」
ちょっともらい泣きしちまった。
「では、いきましょう。」
キリカに促され2人で部屋に行き用意を済ませた。
「キリカ、今のうちにお願いしとく。来年からアメリアのこと頼むな。」
「何を言ってるの!当たり前でしょ!!もうクルトに関係なくアメリア様は大事な友達なんだから。それに将来の主人になるのもまだ可能性はあるんでしょう?」
「まあ、どうかな。それが最善ならそうなるよ。」
「どうしたの?そんな弱気で。」
キリカに怪訝な顔つきで見つめてきた。
「いや、弱気というより何かを犠牲にしてアメリアと一緒になってもダメな気がしただけだよ。もうこれ以上、大事な人が傷ついたり失ったりするのは嫌だからな。」
「でも、あの人は2人の幸せを願ってるんじゃない?」
「ああ、俺もそう思う。だから最善の道を選ぶよ。結婚だけが幸せではないと思うから。うちの両親みたいにさ。」
「ん?でもあまり上手くいってないんでしょ?」
「え?ああ。お母様は本当の母親じゃないよ。本当の母さんと父様の話ね。」
「ああ〜そういうこと。え?会えたの?本当のお母さん。」
「あー、レイチェルなんだ。母さんは。内緒だよ。」
「え!?えーーー!!!……通りで。なんか必要以上にあなたの事ばかり考えてる人だとは思ってたから、なんか納得。」
「んーそうなんだ。裏方の時の母さんを知らないからよくわかんないけど。」
「あっ!そうだ。言い忘れてたけど、ごめんなさい。アメリア様にハンドクリーム私が渡しちゃった。」
「ああ。キリカが渡してくれたんだ。ありがとう。おかげで助かったよ。」
「ん?なんで感謝されるの?」
「まあ、いろいろあったんだよ。じゃあ俺が無事に帰れたのはキリカのおかげでもあるんだね。」
「そんなに重要だったの!?渡しておいて良かったー。あの時は咄嗟にあなたなら渡してほしいと願ってるんじゃないかって思ったのよ。」
「そうか。本当に助かったよ。なんかお礼しなくちゃな。」
「い…いいわよ。別に。勝手にやって悪かったと思ってたんだし。」
なんかすごく慌て始めたな。顔…赤くなってるし。そんなに恥ずかしがる事ないのに。
「時間ないから、お土産で何か勝手に贈るね。楽しみにしてて!!」
「べっ別にいいのにぃー。って一年後じゃない。覚えてるか怪しいわよ。」
「まあ、俺が覚えておくから大丈夫だよ。」
「あ!?もうこんな時間。急いでみんなの所行くわよ!!」
急いで2人は食堂へと向かった。ついた頃には3人仲良くお茶をしていた。
「待たせたね。まずは進捗具合を教えて。」
「はい。その前にアメリア様がいるのですからキリカとイチャイチャするのは早すぎです。妾は結婚後にお考えくださいませ。」
「メリッサさん!!!イ……イ…イチャついてなんかいません!!」
「そうだよ。別にそんな関係でもないし。確かにキリカは可愛いとは思うけど、アメリアに惚れてるからな。そういう目で見れないし。」
「そうですか。ならいいんですが、やたら遅かったので。」
「そこまで言わなくても……。」
メリッサはわかってくれたみたいで良かった。今、何かキリカが言ったような気がするが声が小さくて聞き取れなかった。
「何?キリカ。何か言った?」
「いっ、いえ何も。」
キリカは赤いままだ。
「メリッサさん。そのへんにしといてあげましょう。話を進めますと、未だ王城から機械が返ってきてません。それに今製造中2台の方は後、2、3ヶ月は見てほしいそうです。」
ガルト!ナイスフォロー!!なぜかキリカ落ち込んでるし、メリッサさんなんかまだ疑ってるの目してるし助かったよ!!
「では改めてはじめようか。他の状況を教えてくれ。」
メリッサが真剣な顔に変わり、挙手をして立ち上がった。
「はい。そちらは私から報告させて頂きます。現在では、新しくアプルの苗木を50本買いました。ただ今魔法での成長させる木と自然に育てる物を6:4の割合で進行中です。現在すでにある分はそのまま自然に育てていく予定で、合わせた数ですと4:6になるかと。後は機械待ちと魔法使用ようの人材確保、育成がまだ数に達していないのが現状です。アビスの巣は機械の試作を作り調整中でまだまだこれからですね。材料の確保はもともと生産地ですし、敷地を拡大して生産を増やす計画がもともとあったので資金を増やして早めに取り組めるようにしましたので問題ないかと。」
「了解だ。まだまだかかりそうだな。魔法使用の人材確保、育成とアビスの方の機械製作完成を優先してくれ。後は少しなら遅らせても問題ないだろう。」
「「「かしこまりました。」」」
「後、私からすでに見ていただいたかと思いましたが寮完備の工場は建物自体はほぼ完成しています。後は機械等の物の設置だけとなります。」
「まあそれはでき次第、設置していくのと寮に必要な物の搬入のタイミングをかんがえなくちゃならないなぁー。それは資料含めての計画表を渡すからガルトお前に任せる。悩んだら父親のルースやレイチェル、メリッサに相談するように。」
「はっはい!!わかりました。おまかせください!!!」
ガルトは勢いよく立ち上がりお辞儀をしてやる気を見せてくれた。頼もしい限りだ。
「それでアンド。先生になるのは無理かな?そろそろ返事が欲しい。もちろん僕がいない間だけで、帰ってきたら料理番に戻ってもらうよ。」
「はい。すでに新しい料理人代行を雇いましたのでいつでも大丈夫です。一応、他に2人雇いましたが、この2人は領地の工場の食堂担当兼機械作動員として訓練中です。どちらも魔力もちです。俺は補助として入って3人で食堂はまわす予定です。」
「そうか。そこまで動いて決めてくれてたんだな。これから新しく入る魔力持ちの人材育成はアンドを中心で頼む。抜けないといけない時レイチェルとメリッサに補助を頼むように。抱えすぎず助けてもらうのも大事な事だ。事前に相談を心がけて。直前に慌てる状況をつくらないように。」
「「はい。お任せください。」」
「みんなそれぞれいない間にやれる事をしっかり進めておいてくれて感謝する。」
頼もしい部下で助かるよ…本当に。
「キリカは実際の準備を任すのは難しいからみんなの動き方や働き方を見て参考にしてくれ。まあすでにそんな感じで動いてるんだろうがよろしく頼む。後は一応時間内で、ハンドクリームの香り付の選抜も引き続き頼む。最初は何もしない普通のと2種類の香り入りを売り出すつもりで選抜して、後は売り上げ次第で決めるから順位付を忘れないように。」
「かしこまりました。」
「後は進めていくだけだな。みなよろしく頼む。」
「「「「かしこまりました」」」」
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