第6話 お許しをもらう為の準備
それにしても今日1日だけで上手くことが運びすぎてないか?なんか怖い。とはいっても、気に入られたことは良かった。
さて、そろそろ取りかかろうかな。俺はレイチェルに視線を合わせる。すぐにレイチェルがメリッサを呼んだ。
「アメリア、君との時間を削られるのは嫌なんだが、少しだけ席を外しても構わないかい?すぐに戻ってくるから。」
「一言余計です!‥かまいません。」
意図を汲んでか、すぐ了解をもらえた。余計かな?まあ、怒った顔も愛らしい。俺マヂだな。自分でもイタいのはわかってんだけどなー。
「それでは一度失礼します。メリッサ少しの間、頼んだよ。」
「かしこまりました。」
なぜか、メリッサまで、顔が赤い。何故だ?まあ、聞こえてはいたんだろうが、そんなに恥ずかしいこと言ってたっけな?
俺とレイチェルはすぐさま、手紙の用意を始めた。したかったんだが、何故かレイチェルから注意をされた。
「いいですか!まず、一人称は僕でお願いします。俺だと平民みたいに思われます。それと、婚約者なのでキツくはいえないですが、何度アメリア様を赤くさせているのですか?あれほど赤くさせたら、何を言えばそうなるか察してあげて下さい。どうせなら、笑顔にさせた方が喜ばれますよ。」
「んーわかった。善処します。それよりも、待たせているんだから、手紙書かないと。」
「そうでしたね。先ずは何を書いたら良いと思われますか?」
「そうだな。先ず、今回の婚約は俺からの申し出からという形だよね。どちらにせよ、顔合わせ前に行くべきだとおもうんだけど‥‥。」
「はい。その通りでございます。本来は、今日旦那様からお話されるはずだったのですが、どうやらアメリア様を王族の誰かと結婚させるという噂がございます。あくまで、噂ですが。御当主様とアメリア様はよく思ってないらしく、急いでおられるとか。逆に奥様を筆頭に賛成派が噂でしかないのに、なにやら動こうとしている様なのです。」
「そういうことか。それなら、顔合わせも、本当にすぐなんだね。それなら、顔合わせの日の前に時間が作れればという点と、御当主、僕、アメリア3人で話をしたい旨を伝えたいな。」
「かしこまりまりました。」
その後、レイチェルにチェックしてもらいながら、直して手紙を書きあげた。終えるとすぐに使いをだし、俺は急いでアメリアの元に戻った。
どうやら待たせた間、メリッサはちゃんと仕事をしてくれたらしい。戻ると、ゼハルも含めて3人で笑顔で会話を楽しんでいた。この光景は間違いなく他の家じゃあり得ないだろう。使用人2人が貴族と一緒に席につき、お茶を楽しみながら談笑しているのだ。ありえない。ありえないが、その光景が嬉しくて、しばらくその光景を遠くから眺めた。
「クルト様?どうかなさいましたか?」
レイチェルはすぐに行かない俺に声をかけてくる。わかってんだろうに。
「いやな。あの光景が微笑ましくて、嬉しいんだ。あの子はいい子だと思わないか?」
「はい。御立派で、とても心の広い優しい方と思います。あの光景が微笑ましく思うクルト様に、この世で唯一相応しいお相手かと。」
「そうだろな。お‥僕もそう思うよ。本当に王族が動いたらどうするかなー。」
「この後、旦那様との食事が予定されています。今のうちに打てる手はうつべく相談されてはいかがでしょうか?」
「ああ、そうしよう。この幸せは誰にも譲れそうにない。」
迎えの馬車がついたとメリッサが俺たちの所に知らせに来た。もう日が暮れていた。今日はずいぶんと時間が経つのが早い。
父様はいつの間にか帰ってきたらしい。母様と一緒に玄関にいた。実の母親でなくとも、名目上母なのだが、久しぶりに会った。4年ぶりだろうか?正直最初誰かわからなかった。それだけ会ってなかったのだから仕方ない。久しぶりの再会がこのタイミングなのはどうかと思う。一切目を向けてこない母を気にししつも、アメリアを両親の前まで連れて行く。
「ヴィッシャー伯爵。ヴィッシャー伯爵夫人。お久しぶりでございます。アメリアでございます。今日の急な訪問をご許可頂きありがとうございました。それに加え、ご挨拶にも出向けず申し訳ありませんでした。」
「また、一段と美しくなられたな。アメリア嬢!私達の予定が合わず挨拶ができなかったのだ。仕方ない。気になさらないで頂きたい。
愚息と楽しんで頂けただろうか?」
アメリアは顔を赤くして、慌てながら、
「愚息だなんて、私にはもったいない素敵な方ですわ。今日は時間を忘れてしまったくらい楽しく過ごさせていただきました。ありがとうございました。」
「そう言って頂けると親として、嬉しい限りだ。本来であれば夕食を誘いたいが、お互いにいろいろ準備がある。惜しいが次回にでも是非よろしく頼むよ。」
「はい。是非!喜んでお受けいたします。」
「父様。そろそろ。後で報告もあるので、お時間を頂いてもよろしいですか?」
「ああ。かまわん。自室で待っている。いつでも来なさい。」
「わかりました。では、アメリア嬢をお送りしてきます。」
俺はアメリアを馬車の前まで案内した。アメリアの両手を掴みながら、
「アメリア。これで次に会うまで、どれだけ空くのだろう?この手を離すのが惜しいよ。」
「また‥‥。私もとても寂しいですわ。でも、すぐに来てくださるのでしょう?」
「ああ。もちろん。君との婚約の許可を頂かないといけないからね。本当なら直ぐにでも結婚したいくらいだ。」
「そ、それはいろいろと飛ばしすぎですわ。」
「ああ。わかってるよ。それくらい君が魅力的なんだ。」
アメリアは赤くなって下を向いてしまった。
あ!?やべ。やっちった。レイチェルからの痛い視線を感じる。
「それでは、後日。次はアメリアがカーティス家を案内してよ。楽しみにしてるよ。」
俺はそっと近づきオデコにキスをした。我慢したんだよ。これでも。
「は、は、、は。はい。おまちしています。それでは失礼します。」
ものすごい早口で顔を真っ赤にしながら、馬車に乗り込んでしまった。ザハルが、すかさずドアを閉める。そして、俺に近づき手紙を渡しながら、
「旦那様からです。微笑ましくも思います。が、やり過ぎは良くありません。私の可愛いお嬢様で遊ばないで頂きたい。旦那様なら大変なことになりますよ。」
最初の二言以外は周りには聞こえない声で和かな笑顔で言ってきた。俺が読唇術できなかったらわからないぞ。
「は、はい。自重します。こんなに早く返事をいただいたことへの感謝を伝えて下さい。よろしくお願いします。では、無事に帰還される様お気をつけください。私の大事な婚約者でもあるので。」
俺は最初の二言と、最後の一言を口パクで言って別れの挨拶をした。ザハルは笑顔を壊すことなく、一礼して馬車を出させた。
俺は見えなくなるまで馬車の姿を見届けた。一度後ろのカーテンが開いたので、周りに見えない様に手を振った。アメリアも返してくれて、その姿が見えなくなると、直ぐ様手紙を開いた。急な顔合わせになったことへの謝罪と、出来る限り要望に応えたいとつづられていた。懐にしまい、父様の部屋へと向かった。
「父様。クルトです。」
「ああ。入れ。」
俺は緊張しながらもドアを開け父様の仕事部屋に入った。
「なかなかおもしろいものが見れたぞ。クルト。まあ、座りなさい。」
父様はイヤーなニヤケ顔で椅子を指した。わかってた。わかってたけど腹が立つー。言われた通りに座らずに椅子の前に立ち頭を下げた。
「僕は正式にアメリア嬢を婚約者にしようと思います。父様の手を借りずに自分の力でさせて下さい。」
「おーそうか。それほどまでにアメリアに惚れたか!!それはいい事だが、お前はまだ9歳だ。できることも限られてくる。私の力を使わずには無理だろう。できる限りは任せるが報告、相談は欠かさないように。でなければ私が、勝手に進める。」
せっかく真面目な顔に戻ったのに最後にまたニターと笑った。
「わ‥わかりました。できる限りはさせて下さい。ではよろしくお願いします。それで、勝手ながらカーティス公爵には手紙を書き会う約束をとりつけました。許可なくすみませんが了解して下さい。」
「ああ。聞いている。どちらにせよしなければならないことだから問題ない。逆によくやった。タイミングも大変良い。」
なぜか褒められた‥‥。
「それにしても、何度かアメリアとは会ったがあんなアメリアを見たのは初めてだ。完全に落としたな。よくやった!!!」
父様は上機嫌に笑った。
「父様。その言い方はやめて下さい。」
俺は我慢できずにジト目で父様を見た。
「ああ。それもそうだな。悪かった。嬉しかったものでね。いや、しかし最近のお前は随分成長したな。社交場さえ出来ればどこへだしてもへいきそうだ。まあ、まだ無理だが。とにかく了解だ。それでいつに会うんだ?」
「そこで相談なのですが、明後日にはカーティス家へ行こうと思います。」
「おい!それはまた早すぎないか?」
父様が驚いた顔で俺を見つめてくる。なんか新鮮だ。こんな父様なかなか見れない。
「はい。そこで近くの宿屋に泊まり会える機会にすぐ行けるようにしたいと思います。ですので、父様に手配をお願いしたいのです。1週間ほどだと見ています。」
「…なるほど。それは名案だな。よし、わかった。許そう。ただ婚約する上でうちでお前がいないと出来ない用意もある。今日明日で終わらせるからそのつもりで。」
「はい。ありがとうございます。」
「さて、かたっ苦しいのは終わったな。クルト。来なさい。」
父様が立ち、俺を近くまでよびよせた。???
「はい。」
訳もわからず近くに行った。
!!?
父様に抱きつかれた。
「本当に大きくなったな。だがまだ子供だ。私のな。お前は普通の子ではない。いられないだろう。理解すべきところであり理解されなければならない。私がいる。頼るべき時には必ず頼りなさい。アメリアに惚れたのならしっかりアメリアの手をつかんでなさい。離してはいけない。」
「は…はい。わかりました。」
最後の言葉にはなぜか力がこもっていたような気がした。
「よし!!」
そう言って俺から離れて自分の席に戻り仕事を始めてしまった。俺は少し呆然としていたが母さんに促されて部屋を出た。
そしてすぐにカーティス家当主にも手紙をだした。用事で近くまで行くこと。いつでも許可が出れば出向く旨と、宿屋の住所は着き次第手紙を出すことを書いて送った。手見上げは、日持ちがいいものを用意したから行くのにも準備万端だ。できたら待つ間、魔法を教わりたいが、我が儘を言える立場ではない。
それから1日半が本当に大変だった。衣装選びから、当日の流れ、俺がすること。俺が言うこと。他諸々を説明されて、覚えて………マヂでづかれた。
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