第28話 クラスメイトとの勉強会も、青春っぽくていいかもしれない。(2)

     ◇◇◇



「二学期制ってさ、前期と後期の中間期末の四回しかテストないじゃん? 三学期制のとこと比べてラッキーじゃね?」



 勉強会も始まって二時間半といったところ。


 そろそろ皆の集中力も切れてくるかと思っていたタイミングで、高木が大きく伸びをしながらそう切り出した。


「なに言ってんのよ。その分一回当たりの範囲は広くなるじゃない」

「それでも回数が少ない方が良いだろ。今回の中間が終われば夏休み明けまでテストないんだぜ?」

「あんたはいつもそうやって夏休みに遊び放題だからテストの点が上がらないんでしょ」

「お前だってそんなに点数よくねぇだろ」


 それに答えたのは田中。お互いにつんけんしているようで、意外にお似合いの二人なのかもしれない。


 高木も言っていたが、我らが桐川高校は二学期制を採用している。とは言っても実際には夏休みと冬休みがしっかりあって、実質的には三学期制と何ら変わらないのだが、試験だけは九月と十月の間を切れ目にして一年を二つに分け、その中でそれぞれ中間試験と期末試験が行われているのだ。


 つまり、この中間試験さえ終われば次に来るのは夏休み。そういうことだ。



「まあまあ二人とも、勉強疲れでストレスが溜まったんだろ? そんなにいがみ合うなって」



 二人でぶつぶつと言い合っている高木と田中に、委員長がそっと注意する。


「あんまり根を詰めても良くないだろうし、そろそろ終わりにしてもいいんじゃない?」

「あんまり遅くなってもよくないしな」


 咲と瑛太は委員長をフォローするようにそう言って立ち上がり、腕を大きく上に伸ばした。


「そうだな。特に女子は親御さんも心配するだろうしね。そっちの二人はまあいいとして、確か高木の家は田中の家と近かったよな?」

「まあそうだけど、それがどうしたんだよ」


 高木は委員長からすっと目を逸らすが、委員長は気にせず続ける。


「じゃあ田中を送ってってやってくれ。何かあったら大変だからな。それなら田中も安心だろ」

「そ、そうね。もし襲われても高木を身代わりにして逃げられるし、安心だわ」


 ふんっと鼻を鳴らした田中を横目に、高木はあからさまに嫌そうな顔をする。


「まあまあ。俺は咲を送ってくし、祐斗は琴葉ちゃんを送ってくんだ。高木だって同じように田中さんを送ってってやれよ」

「立花たちはともかくとして、真島は彼女を送ってくだけだろ? 一緒にすんなよ……」


 やたらとため息を吐き続けている高木は放っておいて、皆会計を済ませて外へ出る。


「……瑛太、お前たちって付き合ってることになってんのか?」

「ん? あぁ、まあな。そういうことになってる」


 頬をポリポリと掻きながら、瑛太はそっぽを向く。まあ、きっと色々あるんだろう。



「皆が集まれるときにでも、また勉強会しよう。じゃあ、今日はこれで。高木はちゃんと田中を送ってくんだぞー」



 これから用事でもあるのか、それだけ言って一足先に自転車をこぎ始める委員長。


「うん。また呼んでくれ」

「また明日ー」

「じゃあねー」

「……俺たちも行くか」


 瑛太がそう呟いたのをきっかけに、皆それぞれの家路につき始める。佐々木だけ男一人なのには少し心が痛むがどうしようもない。



「俺たちはゆっくり帰るから、二人とも先に帰ってていいぞ」



 俺は自転車を引く咲たちとしばらく一緒に歩いて、なんだか急に琴葉と二人で帰りたい気分になり、口を開いた。


「そう? ならお言葉に甘えるわ。二人とも気を付けてね」

「咲たちもな。何かあったら瑛太を囮にして逃げるんだぞ」

「俺の扱いひでぇよ! 琴葉ちゃんもいざとなったら佑斗を盾にするんだぞ!」


 俺の気持ちを察してくれたらしい咲たちと笑いながら別れて、琴葉と二人でまた歩き出す。


「琴葉、疲れた?」

「ちょっとね。でもまだ全然大丈夫だよ。帰ったらもうひと頑張りしないと!」

「じゃあ飯食って風呂入ったら、部屋に来る?」

「うん。行く!」


 嬉しそうに笑った琴葉の横顔を見て、俺も彼女をしっかり家まで送り届けねばと、そう思わされた。 




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