真砂の娘

黒猫亭

真蛇

良いのです私など

良いのです私なんぞ


人の世離れたとて

誰が気にすると言うのでしょう


私を好んだ

私が好んだ貴方に


愛を乞えば

愛を請うて


良いのです私など

良いのです私なんぞ


人の身辞めたとて

その生に未練などありはせぬ


曖昧な春は何処行った

薄闇の春は何処行った


微温い壁に

温い壁


上に向かって墜ちる様に

貴方の背中を掴まえる術は

不可逆的で


薄陽に射されて

薄陽は身を刺す


消えた春は何処行った

霞む春は何処行った


あの山越えて何処行った

あの山越えたら見付かるか


梳かした髪に絡むのなんぞ

梳かした髪に絡むは情念


かごめで廻る

子等のお守りは何処へ行った


かごめで廻る

私の正面だあれ


生成りなって野を駆けりゃ

愛しい貴方の面影揺れる


中成りなって智恵を見りゃ

愛しい貴方に近付くか


本成りなって山を駆けりゃ

愛しい貴方を捕まえれるか


鶴亀滑って

貴方は居ない


鶴亀滑った

私は蛇に成る


貴方の正面は?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

真砂の娘 黒猫亭 @kuronekotonocturne

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る