異端審問

星野響

冬戦争

のらりくらりと降る雪に

僕らいつからなれたのさ

クラリクラリと踊る景色に

僕らいつ頃なれるのさ

永久凍土

草の生えない明度

そこはサンドも

三度の飯もないんだろ

空に舞い交差する雷鳴は

今日も極光と混じり 吐いて

有象無象の墓標を照らし出す


さあさ 並んだ 並んだ

隊列を 組め

武器を 構えろ

撃ち 倒せ

前塞ぐもの どけてゆけ

理想がこの地の 上に立ち

血の上には 勝者が立つ

はっきり 言おうか

判らずや

俺は お前が ほしいのさ


赤い 赤いな

逆立ちしても

まだまだなおも

眩しいままだ

僕らのなかにはない色だ

そんなまやかしの彩色で

ここらの氷は溶けそうもない

教えてやろうか

わからずや

森には怪物がつきものだ


イエスと叫べば

そこにケーキ《理解》はあるが

僕らフォークを剣に持ち替えた

イエイと叫ぼう

さあさ当面凍結

互いの瞳を見て 語ろう

心の底より歓迎申す

試しに問おうか

わからずや

お前はこの城を拝めるか

返事はくれない

それがお前らの紅

そんじゃバイバイ

次会うときには

心ゆくまで 壊しあえるわけ


進め 奴らが辿り着く前に


払っても払っても

降り積もる雪すら

僕らをへだてた峡谷を

埋めてくれることはないわけだ

メルトダウン

故にあっさりとした無味に

マンダウン

憎しみと憎悪

めぐる輪廻に

タンゴーダウン

焦らすくらいなら 手を振って

未練はないさ

そんじゃ乾杯

白いフードに包み隠して

あとは心臓いのちを撃ち抜くまで


次遭うときは 仲良く地獄だ


イエスと叫べば

そこにケーキ《平和》はあるが

僕らフォークを銃に持ち替えた

イエイと叫ぼう

さあさ正面衝突

互いの瞳を見て 語ろう

心の底より歓迎申す

試しに問おうか

わからずや

お前はこの城に敬礼できるか

返事はくれない

それがお前らの紅

そんじゃ

次会うときには

心ゆくまで 壊しあえるわけ


イエスと叫べば

そこに雪が積もり

我ら血塗られた手で白を穢す

イエイと叫ぼう

さあさ正面突破

互いの額に狙いを 定めろ

心の底よりお怨み申す

試しに聞こうか

わからずや

お前はこの墓を拝めるか

返事はくれない

それがお前らの紅

そんじゃバイバイ


次遭うときには

地獄の炎で焼いてやる




――――解説という名の歴史の授業――――

 冬戦争。第二次世界大戦の勃発から3ヶ月目にあたる1939年11月30日に、ソビエト連邦がフィンランドに侵攻した戦争である。フィンランドはこの侵略に抵抗し、多くの犠牲を出しながらも、独立を守った。(Wikipediaより抜粋)


 第一連のフィンランド側の独白じみたソ連への軽蔑に始まり、第二連はソ連のフィンランド侵攻。第三連でフィンランド側は屈服することなく断固として侵略者に対し抵抗に出て、第四連では双方が攻撃と退却を繰り返す激戦が繰り広げられる。歴史まんまである。

 こんな誰も興味のない第二次世界大戦期のマイナーな戦争を引き合いに出し、何を述べたいのかといえば、ズバリ、同調圧力への反抗や多様性への賛美になる。共産主義とはつまり究極の平等だ。経済活動、生産活動、思想の自由はすべて奪われ、集団のために尽くすことになる。別にそれが悪だとか、そういう議論を展開するわけではないが、そういった同調的な活動に現代日本における狂気じみた利他主義を重ねた。皆が一斉に利他行動をとれば支え合っていることになるかもしれない。それが共産主義の理念でもあるが、日本における大抵の場合、過度なまでに利他行動をする、と言うよりも強いられる人間は全体の一部だ。それは、もはやただの犠牲、多くへの生贄ではないだろうか。そんな人間の悪習とも言えるものに対する反抗の意をここに込める。


作成人格: 星野響

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