尾を掃く星の民と、幼い御伽噺。

文乃 雛

星降る国の御伽噺

それは、生まれたころから根強く耳に残る。

子供の頃からの洗脳。

何度も耳に馴染むように紡がれた御伽噺。

読んでくれたのは誰だっただろうか。

父だったかもしれないし、母かもしれない。

もしくは、嗅いだことのない懐かしい香りを身に纏った祖父母だったかもしれない。

自分の手の中にある、ページの端が小さく三角形を作るように折れた絵本。

恐らく全員から愛とともに音声をもらった絵本。

空から降ってきた流れ星から現れたとか、だとか。

人に恋い焦がれた星が肉体を得た、だとか。

記録はなく、記憶を持つものは全て事切れた。

文献は国中の本屋にある幼い絵本のみ。

大人達の過剰で過分で肥えた資料より、子供用の御伽噺が優遇されるような。

そんな拙い拙い物語。

「星のなまえをもつ子にはなしかけちゃいけません。」

「なぜならその子はかみさまだからです。」

公園の隅で音読する幼い子らはそれらを喜んで読むように躾けられている。

無意識の中でその物語を敬うように洗脳が施される。

そして月に一度の“お披露目”を恋しいと獣のように鳴くのだ。

獣のように鳴くのだ。

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