テイムするモンスターが全てスライムになってしまう悪夢のような指輪を手に入れました

7ふぐ神

第1話 スライムになる

 部屋に入ったとたん溢れ出た大量のゴブリンを倒し終えた時には、死にそうなくらいに疲れはて、ぜえぜえと肩で息をしていた。隣では相棒のチビドラが俺と同じように荒い呼吸を繰り返している。


「はあ‥‥‥‥疲れた」


 まさかモンスター部屋に当たるとは運が悪い。俺一人だと確実に死んでいただろう。

 俺はよろよろとした足取りで出現した宝箱の方へ歩いて行く。


「装備品だったらいいな」


 貴重な装備品がでますようにと淡い期待を抱きながら、鑑定で罠のないのを確認してから宝箱を開ける。中には親指くらいの宝石が三個はいっていた。

 装備品でなかったのは残念だが宝石なら金になるから良しとするかと宝石を鞄に入れて帰ろうとした。

 そのとき何気なく視界に入った壁の一部がおかしいことに気づいた。隠匿の魔法がかけられていて、パッと見ただけでは分からないが微かに魔法の痕跡が残っている。慎重に壁を調べると、やはり何かあるようだ。

 壁にかけられている隠匿の魔法を解くと、壁の一部分だけ色が違っていて、中に古びた宝箱がある。


「おお!」


 鑑定して罠がないのを確認してから宝箱を開けると、中には指輪が一つだけ入っている。青、緑、赤、白などの小粒の宝石が散りばめられたプラチナの指輪を手に取って鑑定する。


『マジックアイテム、変化の指輪……テイムしたモンスターが全て同じになる指輪』


「……」


 頭の中に?マークが飛び交い、モンスターとの戦闘で疲れていた俺は考えるのを止めて、指輪を鞄にしまって転移魔方陣に乗って脱出した。






 馴染みの酒場のカウンターに座って食事をしながら、指輪を手の上で転がし、もう一度鑑定してみる。


 『マジックアイテム、変化の指輪……テイムしたモンスターが全て同じになる指輪』とでるが、呪いの指輪というわけでもないようだ。


「うーん、こんな指輪は聞いたことないぞ?」


 ぶつぶつと呟いていると隣の酔っ払いに指輪を摘まんで取られた。


「この指輪、今日の戦利品か?」

「こら、返せよ」


 同じ冒険者で顔見知りの男サジンは、遠慮なく指輪を鑑定すると「ぶっ」と吹き出し大笑いする。サジンから指輪を取り返し鞄にしまう。


「おま、何なんだよ、その指輪」

「知らねえよ‥‥‥‥宝箱からでてきたんだよ」

「その指輪、俺にちょうだい」

「誰がやるか!」


 そう言うと、俺は笑いの止まらないサジンから逃げるように店から出て宿屋に向かった。宿屋に帰ると指輪をまじまじとみるが、見た目は綺麗な洒落たデザインをしている。売っぱらおうかという考えが浮かぶが、こんな面白そうなもの売るなんて勿体ないと即座に否定した。


「テイムしたモンスターが全て一緒ってことは、チビドラになるってことなのかな?」


 チビドラはドラゴンほど強くはないが、個体によって動きが俊敏なもの、物理攻撃が得意なもの、魔法が得意なもの、バランス良く使えるものといて、簡単に言えばミニドラゴンのようなものだ。


 ちなみに俺のチビドラは俊敏な動きで物理攻撃を得意としている。


 チビドラの大きさは小型犬くらいで太めのコロコロとした体型に背中に羽が生えている。大きなクリっとしたつぶらな瞳が可愛いが、知能が高く人になつきにくいので、テイムするには卵から孵化させるしかない。その卵も数が少なく滅多に手に入らないというレアものだ。


 俺も運良く卵を手に入れて孵化させることが出来たから、テイムすることが出来た。


「テイムしたモンスターがチビドラになるんだったらいいなぁ」


 そんな夢みたいなことないよな、と指輪を鞄になおして眠りについた。





 翌朝町から出た俺は好奇心に勝てず、『鑑定で呪いのアイテムってでたわけでもないし‥‥‥‥まあ、なんかあったら外せばいいか』と軽い気持ちで指輪を嵌めた。

 そして、とりあえずモンスターをテイムしてみるかと顔をあげると目の前にはスライムがいた。

 そのスライムが俺のチビドラだということが、心では否定したいのにテイムしたモンスターとの絆のお陰で自然とわかる。

 俺は目の前でポヨンポヨンと揺れている相棒のスライム(チビドラ)の横で頭を抱えて蹲った。


「はあああああああ!? おかしいだろ、何なんだよ!」


 俺の絶叫が草原に響きわたった。



 




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