第2話:小魚、倒す

「うぉぉおおお!!!」


 敏捷にステータスを振り、さっきよりも高く飛び上がる。

 空中でピチピチと無様に跳ね、再び水面に落ちる。



 跳ねろ、コイキン◯かな?


 -空中での7ピチピチにより経験値7獲得。空中横回転ボーナスで経験値10獲得しました。レベルアップしました-


 今回はさっきよりも頑張ったが、空ピチに技ボーナスが加算されていた。高く、技を決めれば決めるほど経験値が加算されていくらしい。



 モンスターと戦う必要もなく経験値を稼げそうなので、ちょっと頑張ってみるとしよう。


 ◆


 あれから2時間跳ね続けた。

 跳ねて、モンスターが来ても跳ねて。

 何度か鳥型のモンスターに殺されそうになったがそれも避けて頑張った。


 こうして、俺のレベルはようやく10になった。

 すでに空中3回転ジャンプを決められるぐらいには跳ねる力も上がっている。



 いまだに覚えられるスキルはひとつもないが、よくもまぁここまで頑張ったものだ。

 全てのステータスを敏捷に振りまくったおかげでかなりのものになった。


 まぁ、他のステータスに関しては変わらず1だが問題ないのだ。

 移動速度もかなりはやくなったので、うまく立ち回れば戦闘でも勝てるかもしれない。


「あれ、何かおかしくないか?」


 そんなことを思っていたが、俺のレベルが10になったところで身体に変化が生じていた。



 身体が光り、姿が変わっていく。

 身体が少し大きくなった。



「こ、これはっ!!」


 進化、だろうか。

 今までよりも多少頑丈そうな見た目になっている。



 少し、ステータスがどうなっているのか確認してみよう。



 名前:『ウィズ』

 種族:小魚 Ver2

 レベル:10

 HP 100/100

 MP 100/100

 筋力:11

 知性:11

 敏捷:38

 器用:11

 幸運:11


 スキル:


 残ステータスポイント0

 残スキルポイント9


「すげぇ、強くなった!!」


 1だったステータスが11になっているので、全ステータス10上昇したらしい。

 今までのステータスが尋常ではなく低かったので、進化によるステータスの上昇幅が尋常ではない。


 元々の総ステータスポイントから3倍近い数字になっている。

 うむ、これなら何とかなるかもしれない。


 サイズが大きくなったことで近くにいる魚型のモンスターとも戦えるようなサイズになったし、少し試してみるとするか。



 おそらく俺も今のサイズは50センチ程度のものになったので、次進化すれば小魚の種族からは抜けられるはずだ。


 希望も見えてきたので、まずは跳ねるから先の段階へ進むとしよう。

 目の前にいる魚型のモンスターを倒すところからだ。


 奴らはさっきまで俺のことを見向きもしなかったが、俺が進化してからは警戒したようにちらちらと俺の様子を窺っている。敵として認識できるレベルにまでは成長しているようだ。


 やれることは体当たりのみと変わらないが、ちょっと見た目の変化はかなり影響を与えたようだ。



 どうせモンスターなんて頭ポンコツな仕様で出来ているんだし、うまく立ち回って討伐してやる。


『デビルフィッシュ』Lv10


 俺のことをじっとみていた魚の一匹に狙いを定める。

 真っ黒で鋭い牙を持った魚だ。



 レベルとしても同格だ。ただ、俺は装備を何一つしていないし基本的なステータスは低い。



 同格と言って良いのか微妙なところではあるが、こいつを相手にする。



 大きさは俺と同じく50センチ程度で、1尾で行動していたので初めての戦闘にはちょうど良いだろう。


「こいやぁぁぁ!!!」


 盛大に気合を入れて声を出すと、デビルフィッシュが動き出す。


 見た目に反して動きは遅いようで、のっそりと動きながら俺に噛みつこうとしてきた。


「Brrrrr!!」


「きくかぁぁ!!」


 これまで敏捷を上げ続けてきたのは伊達じゃない。

 悲しいことに魚としての動き方にも慣れてきたので、デビルフィッシュの噛みつき攻撃を簡単にかわす。


 横を通り過ぎる瞬間に二回体当たりをして、下から潜りこんでお腹に一撃を入れる。


「Brr!!?」


 一瞬で三発の攻撃を入れられたデビルフィッシュが驚いているのが分かった。



 ダメージもそこそこ入っているのもあるが、1回攻撃しただけでこんなに反撃を受けるとは思ってもいなかったんだろう。


「このまま畳みかける!!」


 デビルフィッシュより、俺の方が早く動けるのは分かった。

 なら、速攻で落としてやる!!


 まだ低レベルなこともあってか、デビルフィッシュがスキルを使っての攻撃は出来ないようだ。

 突っ込んでくるだけなら対処は簡単だ。


 攻撃をかわしては体当たりを決め、かわしては体当たりを繰り返していると、デビルフィッシュのHPがついになくなり、消滅した。


「勝ったぁぁぁぁ!!!」


 初戦闘、初勝利だ。

 ピチピチと空へ向けて跳ねるのを数時間やるという苦行の末、ついにモンスターを倒す力を手に入れたのだ。


 -経験値を156獲得しました。レベルがアップしました-


 これならいける。


 レベルを上げて進化すればかなり形態も変わりそうな雰囲気になってきたし、進化したことでスキルも少しは獲得できるようになった。


 このまま近くにいるモンスターを狩っていけばかなり話は展開していきそうだ。


「お? 獲得できるスキルが解放された」


 レベルが11になったことで、獲得できるスキルが出現した。

 どうやらレベルアップによってスキルが解放されていくらしい。


 これでいままでの体当たりしか出来ない戦い方から進歩出来る。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る